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エルソン・ツーラン11
「信じられないという顔だな」
「い、いえ」
当然という表情ではないとしても、動揺しているのは明らかで、エルソンもしまったと思ったのか、オーリンから目を逸らした。それがオーリンにはエルソンがモリーを軽視していた証拠に思えた。
「勉強ができないから、王子殿下の婚約者なんてと思ったのではないか?」
「いえ」
レルスが王太子にならないことはエルソンも知っており、モリーがあまり勉強ができないせいではないかと頭を過ったことはあった。
「私にはそのように見えた」
「本当にそのようなことは今は思っておりません。ですが、恐れ多いことですが、大丈夫だろうかとは思いました」
「そう言った部分が、出ていたのだろうな」
「申し訳ございません……」
勉強ができないことも、治癒術があれば馬鹿にされるようなことはないだろうと思っていたが、それでも大丈夫だろうかとは感じていた。
だが、それもオブレオサジュール公爵家から離れたからこそ思えることであった。
「目立ちたくないからと隠してらした。高等部の三年になられてから、ずっと一桁の順位でいらっしゃる」
「っ、わざとだったのですか?」
「いや、わざとという表現は相応しくないだろう。試験勉強をしなかったそうだ。本気を出していなかったということだな」
モリーは少なからず順位が上がり過ぎないようにしていたとは思うが、そこを指摘するような真似はオーリンはしない。
「試験勉強を……?」
「モリー様は試験勉強をしなくても、最低限の点数が取れていたということだ」
オーリンもモリーから聞かされた時は驚いた。確かに魔術のことを隠している状態で、成績が優秀であったら目立つことになる。そうすれば、魔術ももっと早い段階で誰かに気付かれたかもしれないと思った。
あまりに酷い成績が公になれば目立ったかもしれないが、成績上位者以外は発表されるわけではない。
ブレフォスも注意をすることはあったが、しばらくすると苦手なことはあるものだとボソリと言っていたことがあった。
「そうだったのですか……」
モリーのしたことは褒められたことではないが、それでもブレフォスに指摘されることはいいとして、エルソンに軽視されることではない。
もっともモリーはブレフォスに言われることも、二回目のことがあるために成績が良い時は何も言って来なかったのにという思いを抱えていた。
様々なことがあって、三年生くらいは本気を出したが、それまで強く叱られたとしても、試験勉強をすることはなかった。
「お前は入ったこともない成績上位者だ。そのような方を馬鹿にしていた。恥ずかしい気持ちではないか?」
「はい、その通りです」
エルソンは不出来ということはなかったが、それでも高位貴族と本当に頭の良い方がひしめき合っている成績上位者に入れたことはなかった。
それゆえに高位貴族なのに、どうして成績が良くないのだとという思いがあった。
「私もお前の話を聞いて同じ気持ちであった」
「本当に申し訳ありません」
オーリンは自分がどう感じたかはどうでもいいと思っていたが、エルソンは泣きそうな顔をしており、効果的だったようであった。
「お前がよく思っていなかったドレスも別の王女殿下にもお作りになって、素晴らしいと言われている。芸術祭でもモリー様のドレスを楽しみにされている方も多い」
「はい……」
「ケリー王妃陛下にも評価を得ており、ある意味でドレスでも繋がった縁も、ドレスがきっかけになったこともあった」
「はい……私は何も分かっていませんでした」
「ああ」
モリーは既にパークスラ王国と強い縁を繋いでおり、王太子妃にも相応しい立場ではある。だが、貴重な治癒師と働くためにと言われれば誰も異論はない。
モリーは自分の力でこれからの人生を掴んだ。オブレオサジュール公爵家はそれを後押しするだけである。
「い、いえ」
当然という表情ではないとしても、動揺しているのは明らかで、エルソンもしまったと思ったのか、オーリンから目を逸らした。それがオーリンにはエルソンがモリーを軽視していた証拠に思えた。
「勉強ができないから、王子殿下の婚約者なんてと思ったのではないか?」
「いえ」
レルスが王太子にならないことはエルソンも知っており、モリーがあまり勉強ができないせいではないかと頭を過ったことはあった。
「私にはそのように見えた」
「本当にそのようなことは今は思っておりません。ですが、恐れ多いことですが、大丈夫だろうかとは思いました」
「そう言った部分が、出ていたのだろうな」
「申し訳ございません……」
勉強ができないことも、治癒術があれば馬鹿にされるようなことはないだろうと思っていたが、それでも大丈夫だろうかとは感じていた。
だが、それもオブレオサジュール公爵家から離れたからこそ思えることであった。
「目立ちたくないからと隠してらした。高等部の三年になられてから、ずっと一桁の順位でいらっしゃる」
「っ、わざとだったのですか?」
「いや、わざとという表現は相応しくないだろう。試験勉強をしなかったそうだ。本気を出していなかったということだな」
モリーは少なからず順位が上がり過ぎないようにしていたとは思うが、そこを指摘するような真似はオーリンはしない。
「試験勉強を……?」
「モリー様は試験勉強をしなくても、最低限の点数が取れていたということだ」
オーリンもモリーから聞かされた時は驚いた。確かに魔術のことを隠している状態で、成績が優秀であったら目立つことになる。そうすれば、魔術ももっと早い段階で誰かに気付かれたかもしれないと思った。
あまりに酷い成績が公になれば目立ったかもしれないが、成績上位者以外は発表されるわけではない。
ブレフォスも注意をすることはあったが、しばらくすると苦手なことはあるものだとボソリと言っていたことがあった。
「そうだったのですか……」
モリーのしたことは褒められたことではないが、それでもブレフォスに指摘されることはいいとして、エルソンに軽視されることではない。
もっともモリーはブレフォスに言われることも、二回目のことがあるために成績が良い時は何も言って来なかったのにという思いを抱えていた。
様々なことがあって、三年生くらいは本気を出したが、それまで強く叱られたとしても、試験勉強をすることはなかった。
「お前は入ったこともない成績上位者だ。そのような方を馬鹿にしていた。恥ずかしい気持ちではないか?」
「はい、その通りです」
エルソンは不出来ということはなかったが、それでも高位貴族と本当に頭の良い方がひしめき合っている成績上位者に入れたことはなかった。
それゆえに高位貴族なのに、どうして成績が良くないのだとという思いがあった。
「私もお前の話を聞いて同じ気持ちであった」
「本当に申し訳ありません」
オーリンは自分がどう感じたかはどうでもいいと思っていたが、エルソンは泣きそうな顔をしており、効果的だったようであった。
「お前がよく思っていなかったドレスも別の王女殿下にもお作りになって、素晴らしいと言われている。芸術祭でもモリー様のドレスを楽しみにされている方も多い」
「はい……」
「ケリー王妃陛下にも評価を得ており、ある意味でドレスでも繋がった縁も、ドレスがきっかけになったこともあった」
「はい……私は何も分かっていませんでした」
「ああ」
モリーは既にパークスラ王国と強い縁を繋いでおり、王太子妃にも相応しい立場ではある。だが、貴重な治癒師と働くためにと言われれば誰も異論はない。
モリーは自分の力でこれからの人生を掴んだ。オブレオサジュール公爵家はそれを後押しするだけである。
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