病める時も、健やかではない時も

野村にれ

文字の大きさ
58 / 241

ゴース準男爵家3

しおりを挟む
 レベンナは我儘なところやプライドの高いところはあったが、末っ子はやはり可愛く、良いように解釈して、平民なのだから、そこまでうるさく言う気もなかった。

 だが、貴族と関わる仕事を選んだのなら、厳しく礼儀を教えるべきだっただろう。

「なら、父さんが払うの?払えるの?」
「それは……」

 貴族には大した金額ではないが、平民にしてみたら、大金であった。

「夫が紹介してくれるって言っているわ、お針子の仕事もあるから、それならあの子にもできるでしょう?」
「それなら……」
「ちゃんと働けば、そんなに長い間は掛からないはずよ。自由もないけど、いくら平民でも、もうこの国にはいない方がいいでしょう?」
「そこまでなのか?」

 エッジは頭では理解していたが、そんなことにまでなるのかと、背筋が冷えた。

「どこから洩れるか分からないわ。特にあの子がデザインなどの仕事に就きたいのなら、こういったことがあったと、噂になる可能性もあるでしょう?王妃陛下が言いふらすことはなくとも、見ていた人が話すかもしれないわ」
「そうだな……あの子のためにもと言えば、納得するかもしれないな」
「そうね、戻って来たら紹介をするわ、一体いつ帰って来るのよ」

 逃げたと考えないのは、レベンナにはよくこういったことがあり、友人はいるのかもしれないが、実家以外に居場所はない。

 レベンナの処遇は、借金労働に決まった。

 後はレベンナが帰って来て、契約をさせて、そのまま連れて行かせることになった。その後で、王妃陛下に謝罪と説明の手紙を聞こうと決まった。

 貴族ではなくとも、いや、貴族ではないからこそ、あり得ないことなのである。

 レベンナはどこにいるかまでは分からず、先に王妃陛下に出掛けて、帰ってこないと連絡して置こうかと考えていた矢先、ようやくレベンナが帰って来た。

「ただいま!」

 エッジとスミラは普通におかえりと言いながら、すぐにレイジーに連絡をして、借金労働の方を呼ぶことにした。

 レベンナは遊びに行っていただけのようで、何か話してくる様子もない。

 両親は変わりないように話を聞いたりして、レイジーが来るのを待った。

 すると、そろそろではないかと思っていたレイジーは、夫であるルイクと、借金労働の男性の方がやって来た。

「お姉ちゃん、どうしたの?お土産ならないわよ」

 レベンナは家の中の中心だと思っており、レイジーも旅行のことを当然、知っているだろうと思っての言葉である。

「レベンナ、お前は私たちに何か話すべきことはないのか?」
「は?」
「ないのか?」
「ああ、もしかしてオブレオサジュール公爵家から雇用に関して連絡があった?ああ、やっぱりちゃんとしてから、遊びに行った方が良かったわね」
「どういうことだ?」
「だから、私、オブレオサジュール公爵家で雇ってもらえるの!嘘じゃないわよ、公爵様が言ったんだから」

 何も知らなければ、多少信じたかもしれないが、この場に信じる者はいない。

 どう考えても、オブレオサジュール公爵家が、レベンナを雇うはずがない。

「そんなはずがないだろう!」
「もしかして、誰かに文句を言われた?でも、まあ言い過ぎたって、思っているから。ちょっと、可哀想なことしたしね!でも、今度会ったらちゃんと謝るわ」
「王妃陛下に謝ると言うのか?どうやって?」

 レベンナはモリーのことだと思っており、エッジは王妃陛下へだと思っていた。

「は?何で王妃陛下なんて出てくるのよ」
「お前にケリー王妃陛下から苦情が届いている!」
「……は?嘘でしょ……」
「嘘じゃない!」

 エッジは王家の特別仕様で、王妃陛下の印の入った封筒を置いた。

「嘘でしょ……」

 さすがに王家の紋章は知っていたレベンナは、キョロキョロと辺りを見渡したが、皆、冷たい瞳をしており、冗談ではないことは分かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

うまくいかない婚約

ありがとうございました。さようなら
恋愛
エーデルワイスは、長年いがみ合っていた家門のと結婚が王命として決まっていた。 そのため、愛情をかけるだけ無駄と家族から愛されずに育てられた。 婚約者のトリスタンとの関係も悪かった。 トリスタンには、恋人でもある第三王女ビビアンがいた。 それでも、心の中で悪態をつきながら日々を過ごしていた。

番(つがい)はいりません

にいるず
恋愛
 私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。 本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。  

殿下が私を愛していないことは知っていますから。

木山楽斗
恋愛
エリーフェ→エリーファ・アーカンス公爵令嬢は、王国の第一王子であるナーゼル・フォルヴァインに妻として迎え入れられた。 しかし、結婚してからというもの彼女は王城の一室に軟禁されていた。 夫であるナーゼル殿下は、私のことを愛していない。 危険な存在である竜を宿した私のことを彼は軟禁しており、会いに来ることもなかった。 「……いつも会いに来られなくてすまないな」 そのためそんな彼が初めて部屋を訪ねてきた時の発言に耳を疑うことになった。 彼はまるで私に会いに来るつもりがあったようなことを言ってきたからだ。 「いいえ、殿下が私を愛していないことは知っていますから」 そんなナーゼル様に対して私は思わず嫌味のような言葉を返してしまった。 すると彼は、何故か悲しそうな表情をしてくる。 その反応によって、私は益々訳がわからなくなっていた。彼は確かに私を軟禁して会いに来なかった。それなのにどうしてそんな反応をするのだろうか。

素顔を知らない

基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。 聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。 ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。 王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。 王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。 国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。

処理中です...