病める時も、健やかではない時も

野村にれ

文字の大きさ
61 / 233

ゴース準男爵家6

しおりを挟む
「謝って済むような立場ではない。相手は本来、会うこともできない方なのよ?」
「そうですよ、どうやって会うんです?私は公爵令嬢様にも、ましてや王女殿下になど、会う方法すら分かりませんけど」

 ソーラは驚いたように言うと、レベンナも目を泳がせた。

「それは……公爵家に行けば」
「平民が?」
「公爵家で問題を起こした女など、警備隊に引き渡されて、終わりだろうな。捕まりたいか?」
「そんな……」
「あなたはそのような相手に、喧嘩を売ったの!いい加減、理解しなさい!」

 エルソンがいなければ、会うこともできない相手だったことを理解した。しかも、エルソンは辞めさせられているのなら、恨まれている可能性も高い。

 嫌だけど、もう払うしかないと思ったが、借金などしたくない。

「分かったわ、払うわ。でも借金は嫌よ」
「だったら今すぐ、王女殿下に200万、公爵令嬢に100万払える?」

 レイジーはレベンナがお金を持っていないわけではないが、貯めているとは思えなかった。

 平民の慰謝料の最高額が300万と言われており、ソーラが判断したのは二人でトータル300万ということであった。

 レイジーとルイクが思った準男爵を授与時の報奨金よりも高額にはなったが、相手が相手であるために、当然だと言われて納得した。

「は?そんな大金は無理よ……」
「だったら、借りて払うしかないわ!王女殿下や公爵令嬢に分割でなんて、許されないわよ」
「えっ、でもちょっと言っただけなのよ」
「相手が悪かったわね、でも知らなかったわけでもなく、知っていてあなたは言ったのでしょう?」

 相手を知らなかったというのなら、まだ目こぼしがあったかもしれないが、レベンナはモリーを公爵令嬢だと分かっており、王女殿下も言わずもがなである。

「それは……」

 自分の王家の方に良いところを見せようという思いと、一瞬の快感が絶縁と借金になった。

「父さんも爵位を返還するのよ!」
「っえ」

 レイジーの言葉に、レベンナは大きく目を見開いた。

「父さんの誇りを奪って、楽しい?」
「そんなつもりは……父さん!違うの!でも、爵位まで返さなくても、父さんは関係ないじゃない!」

 流石のレベンナもエッジの爵位を授与された時、努力が形になったとエッジが男泣きし、家族で喜んだことは誇りであった。

 レベンナは恐る恐るエッジを見たが、すぐに目を逸らされた。

「ごめんなさい、ごめんなさい……」

 泣いてはいなかったが、レベンナも頭を下げて、謝罪した。

「早くサインしろ。そして、すぐに向かってくれ」
「そんな……すぐなんて」
「お前が遊んでいる間、ずっと王妃陛下をお待たせしているんだ!」
「っへ」

 その言葉にレベンナはソーラが出した書類を読んで、サインした。契約自体はおかしくない。給料は全てではないが、借金で概ね奪われることになるだけである。

「説明と謝罪と慰謝料を払わなくてはならないのを待っていたんだよ!すぐに荷物を纏めて来なさい」

 レベンナはそそくさと部屋に行き、念のためにレイジーとルイクが見張った。

「お姉ちゃん、爵位を返すって……本当なの?」
「それほどのことをしたのよ」
「……そんな、どうにかならないの?父さんは関係ないじゃない」
「その言葉が出るだけ、良かったわ」

 レイジーに一番効果があったのは爵位の返上だったかと、呆れはしたが、反省しているようで、多少溜飲が下がった。

「悪かったと思っているわ」
「謝罪と慰謝料で、もしかしたらということはあるかもしれないわ」
「本当?」
「だから、あなたはいくら辛くてもしっかり働きなさい」
「分かったわ」

 それから荷物を纏めて、レベンナは絶縁状にサインし、エリー王女殿下とモリー公爵令嬢へ謝罪の手紙を書き、エッジに渡した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

リリー・フラレンシア男爵令嬢について

碧井 汐桜香
恋愛
王太子と出会ったピンク髪の男爵令嬢のお話

【完結済】25年目の厄災

恋愛
生まれてこの方、ずっと陽もささない地下牢に繋がれて、魔力を吸い出されている。どうやら生まれながらの罪人らしいが、自分に罪の記憶はない。 だが、明日……25歳の誕生日の朝には斬首されるのだそうだ。もう何もかもに疲れ果てた彼女に届いたのは…… 25周年記念に、サクッと思い付きで書いた短編なので、これまで以上に拙いものですが、お暇潰しにでも読んで頂けたら嬉しいです。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

執着のなさそうだった男と別れて、よりを戻すだけの話。

椎茸
恋愛
伯爵ユリアナは、学園イチ人気の侯爵令息レオポルドとお付き合いをしていた。しかし、次第に、レオポルドが周囲に平等に優しいところに思うことができて、別れを決断する。 ユリアナはあっさりと別れが成立するものと思っていたが、どうやらレオポルドの様子が変で…?

王宮勤めにも色々ありまして

あとさん♪
恋愛
スカーレット・フォン・ファルケは王太子の婚約者の専属護衛の近衛騎士だ。 そんな彼女の元婚約者が、園遊会で見知らぬ女性に絡んでる·····? おいおい、と思っていたら彼女の護衛対象である公爵令嬢が自らあの馬鹿野郎に近づいて····· 危険です!私の後ろに! ·····あ、あれぇ? ※シャティエル王国シリーズ2作目! ※拙作『相互理解は難しい(略)』の2人が出ます。 ※小説家になろうにも投稿しております。

お城で愛玩動物を飼う方法

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約を解消してほしい、ですか? まあ! まあ! ああ、いえ、驚いただけですわ。申し訳ありません。理由をお伺いしても宜しいでしょうか? まあ! 愛する方が? いえいえ、とても素晴らしいことだと思いますわ。 それで、わたくしへ婚約解消ですのね。 ええ。宜しいですわ。わたくしは。 ですが……少しだけ、わたくしの雑談に付き合ってくださると嬉しく思いますわ。 いいえ? 説得などするつもりはなど、ございませんわ。……もう、無駄なことですので。 では、そうですね。殿下は、『ペット』を飼ったことがお有りでしょうか? 『生き物を飼う』のですから。『命を預かる』のですよ? 適当なことは、赦されません。 設定はふわっと。 ※読む人に拠っては胸くそ。

冷たい婚約者が「愛されたい」と言ってから優しい。

狼狼3
恋愛
「愛されたい。」 誰も居ない自室で、そう私は呟いた。

犠牲になるのは、妹である私

木山楽斗
恋愛
男爵家の令嬢であるソフィーナは、父親から冷遇されていた。彼女は溺愛されている双子の姉の陰とみなされており、個人として認められていなかったのだ。 ソフィーナはある時、姉に代わって悪名高きボルガン公爵の元に嫁ぐことになった。 好色家として有名な彼は、離婚を繰り返しており隠し子もいる。そんな彼の元に嫁げば幸せなどないとわかっていつつも、彼女は家のために犠牲になると決めたのだった。 婚約者となってボルガン公爵家の屋敷に赴いたソフィーナだったが、彼女はそこでとある騒ぎに巻き込まれることになった。 ボルガン公爵の子供達は、彼の横暴な振る舞いに耐えかねて、公爵家の改革に取り掛かっていたのである。 結果として、ボルガン公爵はその力を失った。ソフィーナは彼に弄ばれることなく、彼の子供達と良好な関係を築くことに成功したのである。 さらにソフィーナの実家でも、同じように改革が起こっていた。彼女を冷遇する父親が、その力を失っていたのである。

公爵令嬢は結婚前日に親友を捨てた男を許せない

有川カナデ
恋愛
シェーラ国公爵令嬢であるエルヴィーラは、隣国の親友であるフェリシアナの結婚式にやってきた。だけれどエルヴィーラが見たのは、恋人に捨てられ酷く傷ついた友の姿で。彼女を捨てたという恋人の話を聞き、エルヴィーラの脳裏にある出来事の思い出が浮かぶ。 魅了魔法は、かけた側だけでなくかけられた側にも責任があった。 「お兄様がお義姉様との婚約を破棄しようとしたのでぶっ飛ばそうとしたらそもそもお兄様はお義姉様にべた惚れでした。」に出てくるエルヴィーラのお話。

処理中です...