病める時も、健やかではない時も

野村にれ

文字の大きさ
81 / 252

疲労2

しおりを挟む
「ダンサム公爵令嬢は呼ばれていたのだろう?」
「今、御呼ばれしたら、変な噂を立てられるからですわ」
「噂?」
「お兄様、ご存知ではありませんの?私のドレスのことをマレア様の息の掛かった者が聞くために」
「息の掛かった者って……」

 随分、王女に相応しくない物騒な言い方だが、エリーの読んでいる恋愛小説の言い回しなのだろうと思った。

「ミチリーア・カジルス伯爵令嬢です。サリリーナ・カジルス伯爵令嬢の妹」
「ああ……」

 サリリーナはマレアの取り巻きで、それでもマレアがいない場所では、見計らってレルスに声を掛けて来ることもある。

「学園でも噂になってしまったのですわ!私も責任を感じたのよ?」
「言ってしまえばいいのではないか?」
「そんなこと言ったら、モリー様は爵位が高いから、邪推する人がいるでしょうと言っているの!」

 同級生でもないのに、エリーと親しくしているとなれば、邪推する者はいるだろう。だが、邪推とはエリーは難しい言葉を知っているなと妹の成長を感じていた。

「しかも、その息の掛かった者が、モリー様を茶会に誘おうとしたりして」
「そうだったのか」
「でも、公爵が断ったそうよ。すると、妹の方を誘ったそうですの」
「妹?」
「モリー様の異母妹よ」

 念のためにモリーはマレアたちのこと、マキュレアリリージュのこと、リークレアのことを、こちらは大丈夫ですのでという意味も含めて、ケリーに報告していた。

 それをエリーも聞いており、ガーデンパーティーには誘わないというのも理解していた。

「えっ?彼女は平民だろう?」
「ええ」
「誰が誘ったんだ?カジルス伯爵令嬢か?」
「マレア・ゼアンラーク侯爵令嬢ですわ!」
「彼女が?貴賤差別をするような者が?」

 レルスはマレアがマキュレアリリージュと親しくするどころか、話をすることも想像ができなかった。

「そうなの?」
「ああ、前に平民の生徒が彼女のハンカチを拾ったんだ。それを、笑顔で受け取って、その後で捨てていたよ」
「っな」
「まあ、そういった者も多いからね。でも、いい気持ちはしないよね」

 公爵令嬢でも男爵令嬢でも、貴賤差別をする者はする。しない者はしないと考えており、平民を馬鹿にしている者も多い。

「それで、目的は?」
「ドレスのこと、モリー様のことを聞くために、そこで異母妹を質問責めにしたそうですの。でも、モリー様と異母妹は交流がないから、何も知らないのに」
「じゃあ、無駄だったわけか?」
「ええ、マレア様にとっては無駄だったでしょうね」

 もしも、モリーのことを知り得る立場だったら、またマキュレアリリージュは呼ばれたかもしれない。

「でも、口にはしたくもないですけど、異母妹は『地味なお姉様にお針子なんてお似合いですけど、間違いですよ』『もしかしたら、着る物がなくてドレスを作ったのかもしれませんけど』『私はお父様に愛されていますけど、姉は公爵家の嫌われ者ですよ?皆に無視されている存在ですよ?』『そんな人に、王女殿下のドレスなんて作るはずないじゃないですか』などと言っていたそうですわ。関わる気もなかったですけど、絶対に関わりたくないと思いましたわ」

 モリー目線になっていることは分かっていたエリーだったが、その話を聞いて、マキュレアリリージュが嫌いになった。

「誰に聞いたんだ?」
「メイドが参加したって人に聞いてくれたの」
「異母妹はモリー嬢に敵意を持っているのだろうな」
「ええ」
「だが、公爵はモリー嬢のことは断り、異母妹は許可したのか?」
「確かにそうね、どうしてなのかしら」

 マレアが誘えば、モリーのことを聞くつもりなのではないかと思うはずだ。

 それなのに、どうして行かせたのか。あのような物言いをする者が、上手くかわせるとも思えない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】馬車の行く先【短編】

青波鳩子
恋愛
王命による婚約を、破棄すると告げられたフェリーネ。 婚約者ヴェッセルから呼び出された学園の予備室で、フェリーネはしばらく動けずにいた。 同級生でありフェリーネの侍女でもあるアマリアと、胸の苦しさが落ち着くまで静かに話をする。 一方、ヴェッセルは連れてきた恋の相手スザンナと、予備室のドアの外で中の様子を伺っている。 フェリーネとアマリアの話を聞いている、ヴェッセルとスザンナは……。 *ハッピーエンドではありません *荒唐無稽の世界観で書いた話ですので、そのようにお読みいただければと思います。 *他サイトでも公開しています

愛を語れない関係【完結】

迷い人
恋愛
 婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。  そして、時が戻った。  だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。

王女と男爵令嬢

青の雀
恋愛
赤ん坊の時に、取り違いにあってしまった王女アクエリアスは、5歳の時に乙女ゲームのt悪役令嬢に転生してきたことを知り、「人生詰んだ」とガッカリしていた。 前世は、アラサーのキャリアウーマンとして活躍していた村崎紫子 もう一人の王女に婚約者も、王女としての地位もすべて奪われ、断罪され父の手により処刑される運命をなんとしても変えたい。 奮闘していくうちに、乙女ゲームの原作とまったく違う展開になっていく。

賭けで付き合った2人の結末は…

しあ
恋愛
遊び人な先輩に告白されて、3ヶ月お付き合いすることになったけど、最終日に初めて私からデートに誘ったのに先輩はいつも通りドタキャン。 それどころか、可愛い女の子と腕を組んで幸せそうにデートしている所を発見してしまう。 どうせ3ヶ月って期間付き関係だったもんね。 仕方ない…仕方ないのはわかっているけど涙が止まらない。 涙を拭いたティッシュを芽生え始めた恋心と共にゴミ箱に捨てる。 捨てたはずなのに、どうして先輩とよく遭遇しそうになるんですか…?とりあえず、全力で避けます。 ※魔法が使える世界ですが、文明はとても進んでとても現代的な設定です。スマホとか出てきます。

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

ヒロインは辞退したいと思います。

三谷朱花
恋愛
リヴィアはソニエール男爵の庶子だった。15歳からファルギエール学園に入学し、第二王子のマクシム様との交流が始まり、そして、マクシム様の婚約者であるアンリエット様からいじめを受けるようになった……。 「あれ?アンリエット様の言ってることってまともじゃない?あれ?……どうして私、『ファルギエール学園の恋と魔法の花』のヒロインに転生してるんだっけ?」 前世の記憶を取り戻したリヴィアが、脱ヒロインを目指して四苦八苦する物語。 ※アルファポリスのみの公開です。

[完結]アタンなんなのって私は私ですが?

シマ
恋愛
私は、ルルーシュ・アーデン男爵令嬢です。底辺の貴族の上、天災で主要産業である農業に大打撃を受けて貧乏な我が家。 我が家は建て直しに家族全員、奔走していたのですが、やっと領地が落ちついて半年振りに学園に登校すると、いきなり婚約破棄だと叫ばれました。 ……嫌がらせ?嫉妬?私が貴女に? さっきから叫ばれておりますが、そもそも貴女の隣の男性は、婚約者じゃありませんけど? 私の婚約者は…… 完結保証 本編7話+その後1話

【完結】すり替えられた公爵令嬢

鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。 しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。 妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。 本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。 完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。 視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。 お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。 ロイズ王国 エレイン・フルール男爵令嬢 15歳 ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳 アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳 マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳 マルゲリーターの母 アマンダ・オルターナ エレインたちの父親 シルベス・オルターナ  パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト アルフレッドの側近 カシュー・イーシヤ 18歳 ダニエル・ウイロー 16歳 マシュー・イーシヤ 15歳 帝国 エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(前皇帝の姪) キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹) 隣国ルタオー王国 バーバラ王女

処理中です...