【完結】ルーレットは二度と回らない

野村にれ

文字の大きさ
20 / 28

二十回

「ユラリ嬢は虐待にあっていたと思いますか?」
「思うではありません。あっていました」
「スミリー嬢!」
「何ですか!エリルお姉様とトアイお兄様とは残念ですけど、伯父様と血が繋がっていないことだけが救いだと思っておりますわ!」

 スミリーはエリルとトアイのことも嫌いだったが、一番嫌っていたのはジスルオであった。しかも、姪とはいえ侯爵令嬢ということもあり、ジスルオも強く言えない立場であった。

「亡くなられた日に婚約解消を告げられていたのです」
「婚約解消……じゃあ、ユラリは……」

 スミリーは口元を強く押さえて、マセリーノ侯爵には洩れ出そうな思いを押さえているようにも見えた。

「何か聞いていますか?」
「はい!ユラリは婚約破棄、婚約解消になったら、ジスルオ伯父様に死ぬように言われておりました」
「スミリー嬢!何を言っているのだ!」
「伯父様は冗談だったのかもしれませんけど、言ったでしょう?信じられないと思ったわ!でも、ユラリもそんなことにならないようにしないといけないってことよねって……信じていないと思っていたのに、どうして……」

 ついにスミリーは顔を両手で覆って肩を震わせた。鼻を啜る音も聞こえ、騎士団側もようやくユラリの死を悲しむ存在だと見守ることにした。

「申し訳ありません……」
「いいえ、スミリー嬢の姿が家族だと私は思います。お聞きするのは心苦しいのですが、自害したと思いますか?」
「婚約解消はあの日ですか?」
「はい。婚約者が親に話すと学園で伝えておりました。そして、ユラリ嬢にも伝えておくようにとも」
「そんな……」

 スミリーはその日のユラリの様子を自分なりに想像してみたが、途中で苦しくなってしまった。

「それで教会へ……そうですか、逃げてきてくれれば……自分が無力であることを実感します」
「スミリー嬢のせいではありません」
「いいえ、もし追い詰められて、疲れ果てていたら選んだかもしれません……」
「そうですか、チュベラの毒は何か意味がありますか?」
「意味はないと思いますが、伯母様が大事に育てていたくらいでしょうか」

 何か意味があるのかと思っていたが、やはり手に入れられるのはチュベラの毒しかなかっただけでもあるが、フロノア伯爵家に繋がることも考えたのかもしれない。

「虐待については誰かに話していましたか?」
「はい、家族にも祖父母にも証言をしたと言っていましたが?」
「っな」

 証言のことを言われて、フロノア伯爵は思わず声を上げたが、スミリーに睨みつけられた。

「当然でしょう?いくら注意をしても、伯父様が躾だと、エリルお姉様とトアイお兄様にはしていないのに。伯父様にも注意してもらったはずです。まさかそのことで怒ったの?それで……あああああ!人殺しが!」

 スミリーは立ち上がって三人に言い放った。

「スミリー嬢、気持ちは分かりますが落ち着いてください」
「ユラリの手紙には無事に過ごしていると書いてあったんです。もう言えなかったのでしょう?酷くなるから……ああ、やっぱり引き離してもらうべきだったわ!反省した振りなんてして!この人、裁かれないんですか!この人たちが殺したも同然ではないですか!」

 マセリーノ侯爵も同じ気持ちだったが、フロノア伯爵を殺した証拠は実際にはない。あの日も邸にいたことも分かっている。

「フロノア伯爵が殺したとは思わないのですか?」
「そんな度胸はないですよ!」
「っな」
「伯父様は小心者だと有名ですから、それなのにユラリが大人しいことをいいことに最低よ!エリルお姉様とトアイお兄様もね!」

 だからこそ脅すようなことはするが、大怪我をさせたり、体に傷が残るようなことまでははしない。それでも許されることではない。だが、そのせいでユラリとフロノア伯爵家から引き離すこともできなかった。

あなたにおすすめの小説

婚約者の母に疎まれ続けたので、結婚直前ですが先に別の公爵家へ嫁ぎます~今さら惜しまれてももう戻りません~

なつめ
恋愛
侯爵令嬢ネフェリナ・ヴァルケインは、幼い頃から決められていた婚約を守るため、十年近くローディアス・フェルゼンの母に耐え続けてきた。 作法を否定され、贈り物を笑われ、亡き母の思い出まで踏みにじられても、婚約者がいつか自分を守ってくれると信じていたからだ。 けれど結婚式を目前にしても、ローディアスは一度として母を止めなかった。 そのうえ最後には、ネフェリナの我慢を当然のように求める。 もう十分です。 そうして彼女は婚約を解消し、以前から打診のあった北方の名門公爵家へ嫁ぐことを選ぶ。 冷徹と噂される若き公爵セヴェリオ・アルスレイン。 だが彼は、誰よりも静かで、誰よりも確実にネフェリナの尊厳を守る男だった。 去られて初めて焦る元婚約者一家。 けれどその頃にはもう、ネフェリナには新しい居場所ができていた。 これは、長く耐えた令嬢が自分で自分を救い、静かな溺愛の中で本当の幸福を選び直す物語。

(完結)元お義姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれど・・・・・・(5話完結)

青空一夏
恋愛
私(エメリーン・リトラー侯爵令嬢)は義理のお姉様、マルガレータ様が大好きだった。彼女は4歳年上でお兄様とは同じ歳。二人はとても仲のいい夫婦だった。 けれどお兄様が病気であっけなく他界し、結婚期間わずか半年で子供もいなかったマルガレータ様は、実家ノット公爵家に戻られる。 マルガレータ様は実家に帰られる際、 「エメリーン、あなたを本当の妹のように思っているわ。この思いはずっと変わらない。あなたの幸せをずっと願っていましょう」と、おっしゃった。 信頼していたし、とても可愛がってくれた。私はマルガレータが本当に大好きだったの!! でも、それは見事に裏切られて・・・・・・ ヒロインは、マルガレータ。シリアス。ざまぁはないかも。バッドエンド。バッドエンドはもやっとくる結末です。異世界ヨーロッパ風。現代的表現。ゆるふわ設定ご都合主義。時代考証ほとんどありません。 エメリーンの回も書いてダブルヒロインのはずでしたが、別作品として書いていきます。申し訳ありません。 元お姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれどーエメリーン編に続きます。

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。 キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。 その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。 ※ざまあの回には★がついています。

姉は不要と判断された~奪うことしか知らない妹は、最後に何も残らなかった~

ゆめ@マンドラゴラ
恋愛
妹にすべてを奪われ続けてきた姉。 ついには婚約者まで狙われ、「不要とされた」。 それは、誰にとっての「不要」だったのか。 「不要とされた」シリーズ第二弾。

白い結婚十年目、ようやく離縁できると思ったのに 〜冷酷公爵は今さら私を手放さない〜

なつめ
恋愛
十年前、家のために嫁いだ公爵家で、イゼルディナは結婚初夜に告げられた。 「この結婚は白い結婚だ。十年後、お前を離縁する」 愛されない妻として、公爵家のためだけに尽くした十年。 社交、屋敷、領地経営、赤字整理、人脈づくり。夫の隣には立てなくても、公爵家を支えたのは間違いなく彼女だった。 だからこそ、約束通りの離縁状に署名した時、彼女はようやく自由になれると思った。 けれど、冷酷なはずの夫セヴェリオンは、その離縁を認めない。 しかも今さら執着するように、優しく、激しく、取り戻すように迫ってくる。 遅すぎる。 そう突き放すイゼルディナだったが、やがて公爵家に巣食っていた悪意と、セヴェリオンが十年間ひた隠しにしていた真実が明らかになる。 これは、失った十年を「なかったこと」にはせず、 それでも自分の尊厳を取り戻した女が、最後は自分の意志で幸福を選び直す物語。

断罪された公爵令嬢に手を差し伸べたのは、私の婚約者でした

カレイ
恋愛
 子爵令嬢に陥れられ第二王子から婚約破棄を告げられたアンジェリカ公爵令嬢。第二王子が断罪しようとするも、証拠を突きつけて見事彼女の冤罪を晴らす男が現れた。男は公爵令嬢に跪き…… 「この機会絶対に逃しません。ずっと前から貴方をお慕いしていましたんです。私と婚約して下さい!」     ええっ!あなた私の婚約者ですよね!?

我慢しないことにした結果

宝月 蓮
恋愛
メアリー、ワイアット、クレアは幼馴染。いつも三人で過ごすことが多い。しかしクレアがわがままを言うせいで、いつもメアリーは我慢を強いられていた。更に、メアリーはワイアットに好意を寄せていたが色々なことが重なりワイアットはわがままなクレアと婚約することになってしまう。失意の中、欲望に忠実なクレアの更なるわがままで追い詰められていくメアリー。そんなメアリーを救ったのは、兄達の友人であるアレクサンダー。アレクサンダーはメアリーに、もう我慢しなくて良い、思いの全てを吐き出してごらんと優しく包み込んでくれた。メアリーはそんなアレクサンダーに惹かれていく。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と私を嫌う夫に言われましたので、素直に従った結果……

ぽんた
恋愛
「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」 この日、リン・オリヴィエは夫であるバロワン王国の第一王子マリユス・ノディエに告げられた。 選択肢のないリンは、「ひきこもり王子」と名高いクロード・ノディエのいる辺境の地へ向かう。 そこで彼女が会ったのは、噂の「ひきこもり王子」とはまったく違う気性が荒く傲慢な将軍だった。 クロードは、幼少の頃から自分や弟を守る為に「ひきこもり王子」を演じていたのである。その彼は、以前リンの姉ディアーヌに手痛い目にあったことがあった。その為、人間不信、とくに女性を敵視している。彼は、ディアーヌの妹であるリンを憎み、侍女扱いする。 しかし、あることがきっかけで二人の距離が急激に狭まる。が、それも束の間、王都が隣国のスパイの工作により、壊滅状態になっているいう報が入る。しかも、そのスパイの正体は、リンの知る人だった。 ※全三十九話。ハッピーエンドっぽく完結します。ゆるゆる設定です。ご容赦ください。