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二十回
「ユラリ嬢は虐待にあっていたと思いますか?」
「思うではありません。あっていました」
「スミリー嬢!」
「何ですか!エリルお姉様とトアイお兄様とは残念ですけど、伯父様と血が繋がっていないことだけが救いだと思っておりますわ!」
スミリーはエリルとトアイのことも嫌いだったが、一番嫌っていたのはジスルオであった。しかも、姪とはいえ侯爵令嬢ということもあり、ジスルオも強く言えない立場であった。
「亡くなられた日に婚約解消を告げられていたのです」
「婚約解消……じゃあ、ユラリは……」
スミリーは口元を強く押さえて、マセリーノ侯爵には洩れ出そうな思いを押さえているようにも見えた。
「何か聞いていますか?」
「はい!ユラリは婚約破棄、婚約解消になったら、ジスルオ伯父様に死ぬように言われておりました」
「スミリー嬢!何を言っているのだ!」
「伯父様は冗談だったのかもしれませんけど、言ったでしょう?信じられないと思ったわ!でも、ユラリもそんなことにならないようにしないといけないってことよねって……信じていないと思っていたのに、どうして……」
ついにスミリーは顔を両手で覆って肩を震わせた。鼻を啜る音も聞こえ、騎士団側もようやくユラリの死を悲しむ存在だと見守ることにした。
「申し訳ありません……」
「いいえ、スミリー嬢の姿が家族だと私は思います。お聞きするのは心苦しいのですが、自害したと思いますか?」
「婚約解消はあの日ですか?」
「はい。婚約者が親に話すと学園で伝えておりました。そして、ユラリ嬢にも伝えておくようにとも」
「そんな……」
スミリーはその日のユラリの様子を自分なりに想像してみたが、途中で苦しくなってしまった。
「それで教会へ……そうですか、逃げてきてくれれば……自分が無力であることを実感します」
「スミリー嬢のせいではありません」
「いいえ、もし追い詰められて、疲れ果てていたら選んだかもしれません……」
「そうですか、チュベラの毒は何か意味がありますか?」
「意味はないと思いますが、伯母様が大事に育てていたくらいでしょうか」
何か意味があるのかと思っていたが、やはり手に入れられるのはチュベラの毒しかなかっただけでもあるが、フロノア伯爵家に繋がることも考えたのかもしれない。
「虐待については誰かに話していましたか?」
「はい、家族にも祖父母にも証言をしたと言っていましたが?」
「っな」
証言のことを言われて、フロノア伯爵は思わず声を上げたが、スミリーに睨みつけられた。
「当然でしょう?いくら注意をしても、伯父様が躾だと、エリルお姉様とトアイお兄様にはしていないのに。伯父様にも注意してもらったはずです。まさかそのことで怒ったの?それで……あああああ!人殺しが!」
スミリーは立ち上がって三人に言い放った。
「スミリー嬢、気持ちは分かりますが落ち着いてください」
「ユラリの手紙には無事に過ごしていると書いてあったんです。もう言えなかったのでしょう?酷くなるから……ああ、やっぱり引き離してもらうべきだったわ!反省した振りなんてして!この人、裁かれないんですか!この人たちが殺したも同然ではないですか!」
マセリーノ侯爵も同じ気持ちだったが、フロノア伯爵を殺した証拠は実際にはない。あの日も邸にいたことも分かっている。
「フロノア伯爵が殺したとは思わないのですか?」
「そんな度胸はないですよ!」
「っな」
「伯父様は小心者だと有名ですから、それなのにユラリが大人しいことをいいことに最低よ!エリルお姉様とトアイお兄様もね!」
だからこそ脅すようなことはするが、大怪我をさせたり、体に傷が残るようなことまでははしない。それでも許されることではない。だが、そのせいでユラリとフロノア伯爵家から引き離すこともできなかった。
「思うではありません。あっていました」
「スミリー嬢!」
「何ですか!エリルお姉様とトアイお兄様とは残念ですけど、伯父様と血が繋がっていないことだけが救いだと思っておりますわ!」
スミリーはエリルとトアイのことも嫌いだったが、一番嫌っていたのはジスルオであった。しかも、姪とはいえ侯爵令嬢ということもあり、ジスルオも強く言えない立場であった。
「亡くなられた日に婚約解消を告げられていたのです」
「婚約解消……じゃあ、ユラリは……」
スミリーは口元を強く押さえて、マセリーノ侯爵には洩れ出そうな思いを押さえているようにも見えた。
「何か聞いていますか?」
「はい!ユラリは婚約破棄、婚約解消になったら、ジスルオ伯父様に死ぬように言われておりました」
「スミリー嬢!何を言っているのだ!」
「伯父様は冗談だったのかもしれませんけど、言ったでしょう?信じられないと思ったわ!でも、ユラリもそんなことにならないようにしないといけないってことよねって……信じていないと思っていたのに、どうして……」
ついにスミリーは顔を両手で覆って肩を震わせた。鼻を啜る音も聞こえ、騎士団側もようやくユラリの死を悲しむ存在だと見守ることにした。
「申し訳ありません……」
「いいえ、スミリー嬢の姿が家族だと私は思います。お聞きするのは心苦しいのですが、自害したと思いますか?」
「婚約解消はあの日ですか?」
「はい。婚約者が親に話すと学園で伝えておりました。そして、ユラリ嬢にも伝えておくようにとも」
「そんな……」
スミリーはその日のユラリの様子を自分なりに想像してみたが、途中で苦しくなってしまった。
「それで教会へ……そうですか、逃げてきてくれれば……自分が無力であることを実感します」
「スミリー嬢のせいではありません」
「いいえ、もし追い詰められて、疲れ果てていたら選んだかもしれません……」
「そうですか、チュベラの毒は何か意味がありますか?」
「意味はないと思いますが、伯母様が大事に育てていたくらいでしょうか」
何か意味があるのかと思っていたが、やはり手に入れられるのはチュベラの毒しかなかっただけでもあるが、フロノア伯爵家に繋がることも考えたのかもしれない。
「虐待については誰かに話していましたか?」
「はい、家族にも祖父母にも証言をしたと言っていましたが?」
「っな」
証言のことを言われて、フロノア伯爵は思わず声を上げたが、スミリーに睨みつけられた。
「当然でしょう?いくら注意をしても、伯父様が躾だと、エリルお姉様とトアイお兄様にはしていないのに。伯父様にも注意してもらったはずです。まさかそのことで怒ったの?それで……あああああ!人殺しが!」
スミリーは立ち上がって三人に言い放った。
「スミリー嬢、気持ちは分かりますが落ち着いてください」
「ユラリの手紙には無事に過ごしていると書いてあったんです。もう言えなかったのでしょう?酷くなるから……ああ、やっぱり引き離してもらうべきだったわ!反省した振りなんてして!この人、裁かれないんですか!この人たちが殺したも同然ではないですか!」
マセリーノ侯爵も同じ気持ちだったが、フロノア伯爵を殺した証拠は実際にはない。あの日も邸にいたことも分かっている。
「フロノア伯爵が殺したとは思わないのですか?」
「そんな度胸はないですよ!」
「っな」
「伯父様は小心者だと有名ですから、それなのにユラリが大人しいことをいいことに最低よ!エリルお姉様とトアイお兄様もね!」
だからこそ脅すようなことはするが、大怪我をさせたり、体に傷が残るようなことまでははしない。それでも許されることではない。だが、そのせいでユラリとフロノア伯爵家から引き離すこともできなかった。
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