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子爵夫妻5
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「違うわ、シャーリンが支払うだけよ!あの子が悪いんだから」
「そうか…じゃあ、終わりだな」
「問題を起こしたのはシャーリンじゃないか!」
「そうだな」
もうベリックは両親と、話し合う気も、言い合う気もなかった。あとは国王陛下と、レオラッド大公閣下に任せようと決めていた。
カッシャーはベリックの様子に、ホッとすることもなく、さらに不安になった。
しかも、諦めたように立ち去ったベリックと話している孫たちの目が、私たちを酷く軽蔑しているように見えた。
「あなた…大丈夫よね…?」
「分からない…」
「だって、悪いのはシャーリンじゃない」
「だが…シャーリンが嫁いだことで、マクローズ伯爵家から援助をして貰い、だからこそ…私たちの資金も出来たんだ…」
どこから引退後の資金を作ったのかは、マクローズ伯爵家のおかげであった。
「そんなこと」
「ベリックは知っているはずだ。もしかしたら、陛下も…マクローズ伯爵家から聞いているかもしれない。私は間違えたのか…」
「でも、悪いのはシャーリン。そうでしょう?ベリックが払えばいいじゃない」
「だが、レオラッド大公閣下は両親と言ったんだ」
自分よりも保身に走るマレーラに、カッシャーは少しずつ冷静になっていた。
「息子と孫たちを路頭に迷わせて、私たちだけが生きて行くのか…」
「それは…」
お金には異常に執着していたが、可愛がってきた孫たちに、二人はさすがに心が痛んだ。
「支払おう、僅かしか残らないが…」
「だけど」
「私が働くよ…また後ろ指を差されながら、生きて行きたいか?」
「それは…」
ジェフとシャーリンが結婚した時、王太子殿下の周りは祝福してくれたが、世代の違う者たちからは不貞を犯すような娘を育てるような親だと、白い目で見られた。
それは騎士団長を、アニバーサリーを失かったことを恨む者もいた。
通り過ぎる際や、直接ではなく回りくどく、『お前らが出て行けばよかっただろう』『騎士団長を返せ』『アニバーサリーがなくなったのはお前らのせいだ』といった内容を言われることも多かった。
マレーラは友人たちにでさえ、茶会や夜会に呼ばれることもなくなった。
しかも、友人には理由をハッキリ、シャーリンのせい、アニバーサリーが撤退した責任を取れるのかと言われたのだ。今でも交流も一切ない。
その影響は事業にも出る様になり、でガルッツ子爵家と取引きをしたくないと、取引きがなくなり、その際からマクローズ伯爵家から援助をして貰うようになった。
取引きよりも多くの金額も貰うようになり、無駄遣いはせずに貯め込み、ベリックに譲る際に引退後の資金だと、懐に入れた。
マクローズ伯爵家から援助が厳しくなって、難しいと言われるまで、受け取り続けていたために、カッシャーはお金を持っていた。
贅沢をしていたわけではない。だが、あのお金は私が貯めたもので、自分の物だという、強い執着を持っていた。だから、どうしても払いたくなかった。
「今から行って来る」
「…でも」
「孫に嫌われたくないだろう?」
「…それは、そうね」
カッシャーは金庫から、500万円を取り出して、王宮に急ぎ、陛下に再度、謁見を申し込んだ。
「申し訳ございませんでした、お支払いいたします」
「あんなに渋っていたのに、気が変わったのか?」
陛下は丁度、忌々しい気持ちで、レオラッド大公閣下への手紙を書いていたところであった。
「はい…皆を路頭に迷わせることは出来ません。申し訳ございませんでした」
「随分、冷静になったんだな」
「はい…お金に執着していたことは事実です。引退後は穏やかに暮らしたいと願っておりました。ですが、息子や孫を不幸にしては意味がないと気付きました…」
「遅いな、まあ返事を出す前で良かったな」
戻って来るとは正直、思っていなかったが、決断力のない男なのだろう。
「はい…よろしくお願いいたします」
「そうか…じゃあ、終わりだな」
「問題を起こしたのはシャーリンじゃないか!」
「そうだな」
もうベリックは両親と、話し合う気も、言い合う気もなかった。あとは国王陛下と、レオラッド大公閣下に任せようと決めていた。
カッシャーはベリックの様子に、ホッとすることもなく、さらに不安になった。
しかも、諦めたように立ち去ったベリックと話している孫たちの目が、私たちを酷く軽蔑しているように見えた。
「あなた…大丈夫よね…?」
「分からない…」
「だって、悪いのはシャーリンじゃない」
「だが…シャーリンが嫁いだことで、マクローズ伯爵家から援助をして貰い、だからこそ…私たちの資金も出来たんだ…」
どこから引退後の資金を作ったのかは、マクローズ伯爵家のおかげであった。
「そんなこと」
「ベリックは知っているはずだ。もしかしたら、陛下も…マクローズ伯爵家から聞いているかもしれない。私は間違えたのか…」
「でも、悪いのはシャーリン。そうでしょう?ベリックが払えばいいじゃない」
「だが、レオラッド大公閣下は両親と言ったんだ」
自分よりも保身に走るマレーラに、カッシャーは少しずつ冷静になっていた。
「息子と孫たちを路頭に迷わせて、私たちだけが生きて行くのか…」
「それは…」
お金には異常に執着していたが、可愛がってきた孫たちに、二人はさすがに心が痛んだ。
「支払おう、僅かしか残らないが…」
「だけど」
「私が働くよ…また後ろ指を差されながら、生きて行きたいか?」
「それは…」
ジェフとシャーリンが結婚した時、王太子殿下の周りは祝福してくれたが、世代の違う者たちからは不貞を犯すような娘を育てるような親だと、白い目で見られた。
それは騎士団長を、アニバーサリーを失かったことを恨む者もいた。
通り過ぎる際や、直接ではなく回りくどく、『お前らが出て行けばよかっただろう』『騎士団長を返せ』『アニバーサリーがなくなったのはお前らのせいだ』といった内容を言われることも多かった。
マレーラは友人たちにでさえ、茶会や夜会に呼ばれることもなくなった。
しかも、友人には理由をハッキリ、シャーリンのせい、アニバーサリーが撤退した責任を取れるのかと言われたのだ。今でも交流も一切ない。
その影響は事業にも出る様になり、でガルッツ子爵家と取引きをしたくないと、取引きがなくなり、その際からマクローズ伯爵家から援助をして貰うようになった。
取引きよりも多くの金額も貰うようになり、無駄遣いはせずに貯め込み、ベリックに譲る際に引退後の資金だと、懐に入れた。
マクローズ伯爵家から援助が厳しくなって、難しいと言われるまで、受け取り続けていたために、カッシャーはお金を持っていた。
贅沢をしていたわけではない。だが、あのお金は私が貯めたもので、自分の物だという、強い執着を持っていた。だから、どうしても払いたくなかった。
「今から行って来る」
「…でも」
「孫に嫌われたくないだろう?」
「…それは、そうね」
カッシャーは金庫から、500万円を取り出して、王宮に急ぎ、陛下に再度、謁見を申し込んだ。
「申し訳ございませんでした、お支払いいたします」
「あんなに渋っていたのに、気が変わったのか?」
陛下は丁度、忌々しい気持ちで、レオラッド大公閣下への手紙を書いていたところであった。
「はい…皆を路頭に迷わせることは出来ません。申し訳ございませんでした」
「随分、冷静になったんだな」
「はい…お金に執着していたことは事実です。引退後は穏やかに暮らしたいと願っておりました。ですが、息子や孫を不幸にしては意味がないと気付きました…」
「遅いな、まあ返事を出す前で良かったな」
戻って来るとは正直、思っていなかったが、決断力のない男なのだろう。
「はい…よろしくお願いいたします」
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