121 / 196
フォンターナ家
しおりを挟む
「分からなかったの?」
「いえ、邸は分かりましたが、ご当主様は素晴らしい方ということ以外、どのような方かは分かりませんでした」
「分かったのなら、良かったじゃない」
「あまり聞くと怪しまれてはと思い、引き下がるしかありませんでした」
「仕方ないわ」
だが、メーリンはこんなに簡単に見つかるならば、どうして今まで分からなかったのだろうか、わざわざ探しに来る人はいなかったのだろうかと考えていた。
馬車でフォンターナ家に着くと、平民とは思えないほどの大きな門で、二人の筋肉隆々の大きな門番が立つ邸であった。
「もしかして、平民ではないのかしら?」
「そうかもしれませんね」
いくら元々伯爵家であった一家が、アジェル王国から移ったといっても、爵位を授けられるとは考えてもいなかった。
だが、アジェル王国でも功績から爵位を授けられたように、こちらでも可能性を考えて置かなくてはならなかった。
レオラッド大公閣下夫人も、伯爵令嬢ではあったが、平民となって結婚する際に、相手が大公であるために、有力貴族の養女になり、その家も何か妨害をしているのではないかとすら思っていた。
「私が話して来ましょう」
「お願いいたします」
平民であれば、窓口はトーマスで十分だと思っていたが、平民ではない可能性があるために、メーリン自ら門番に声を掛けることにした。
「すみません。私、ハビット王国の第一王女で、メーリンと申します」
「はい」
仏頂面の二人の門番は、名前を聞いても、表情一つ変えることはなかった。
「フォンターナ家のご当主にお会いしたいのですが」
「お約束は伺っておりません」
「是非、お会いしたいとお取次ぎ願えませんか」
「オルタナ王国王家から、フォンターナ家は多忙にて、ご希望には添えませんと返事が届いておりませんか?」
その言葉に、メーリンは知っていたのだと、焦った。
王女なのだから、当主に聞きに行くくらいはするだろうと、こんなところで王家の人間を待たせることはないと考えていたのである。
「ですが、どうしてもお会いしたいのです。伝えてはいただけませんか」
「いいえ、お約束のない方は多忙にて、こちらで断らせていただいております。ご理解ください」
いくら仏頂面の門番でも、彼らも仕事であることは分かっている。
しかも、言葉使いは丁寧で、無礼があるわけではない。
だが、王女ということが全く通用しないことに苛立ってはいたが、ここで怒鳴りでもしたら、余計にあって貰えなくなると抑えて、再度お願いをすることにした。
「お話を伺いたいだけなのです。お時間がないのであれば、出来るまで待たせていただきます」
「では王家にお願いいたします」
「っな」
どうして王家になるのか、訊ねて来ているのはフォンターナ家で、王家ではない。
どう言えば分かるのかと考えていると、一台の気品あふれる馬車が到着し、長身の美しい青年が降りて来た。
「仕事にお戻りください」
「「は!」」
護衛二人は男性に頭を下げて、持ち場に戻り、男性はメーリンの前に立った。
「やはりここへ来ていましたか、ハビット王国の王女殿下。私はメイリクス・レオラッドです」
「大公閣下…」
メーリンはレオラッド大公閣下の顔を知ることは出来ないまま来たので、若く見える様にまさか大公閣下だとは思いもしなかった。
「王家からお断りしたのに、どうしてこちらに来ているのか、こちらでは迷惑ですので、王宮で話を伺わせていただきましょう」
「ですが」
「これ以上、迷惑を掛けるつもりですか?」
「分かりました」
あまりに強い眼差しに、メーリンも承諾するしかなかった。
馬車に付いて来てくださいと言われ、王宮まで馬車で向かうことになった。馬車の中で待っていたトーマスたちは、何があったのかと不思議に思っていた。
「いえ、邸は分かりましたが、ご当主様は素晴らしい方ということ以外、どのような方かは分かりませんでした」
「分かったのなら、良かったじゃない」
「あまり聞くと怪しまれてはと思い、引き下がるしかありませんでした」
「仕方ないわ」
だが、メーリンはこんなに簡単に見つかるならば、どうして今まで分からなかったのだろうか、わざわざ探しに来る人はいなかったのだろうかと考えていた。
馬車でフォンターナ家に着くと、平民とは思えないほどの大きな門で、二人の筋肉隆々の大きな門番が立つ邸であった。
「もしかして、平民ではないのかしら?」
「そうかもしれませんね」
いくら元々伯爵家であった一家が、アジェル王国から移ったといっても、爵位を授けられるとは考えてもいなかった。
だが、アジェル王国でも功績から爵位を授けられたように、こちらでも可能性を考えて置かなくてはならなかった。
レオラッド大公閣下夫人も、伯爵令嬢ではあったが、平民となって結婚する際に、相手が大公であるために、有力貴族の養女になり、その家も何か妨害をしているのではないかとすら思っていた。
「私が話して来ましょう」
「お願いいたします」
平民であれば、窓口はトーマスで十分だと思っていたが、平民ではない可能性があるために、メーリン自ら門番に声を掛けることにした。
「すみません。私、ハビット王国の第一王女で、メーリンと申します」
「はい」
仏頂面の二人の門番は、名前を聞いても、表情一つ変えることはなかった。
「フォンターナ家のご当主にお会いしたいのですが」
「お約束は伺っておりません」
「是非、お会いしたいとお取次ぎ願えませんか」
「オルタナ王国王家から、フォンターナ家は多忙にて、ご希望には添えませんと返事が届いておりませんか?」
その言葉に、メーリンは知っていたのだと、焦った。
王女なのだから、当主に聞きに行くくらいはするだろうと、こんなところで王家の人間を待たせることはないと考えていたのである。
「ですが、どうしてもお会いしたいのです。伝えてはいただけませんか」
「いいえ、お約束のない方は多忙にて、こちらで断らせていただいております。ご理解ください」
いくら仏頂面の門番でも、彼らも仕事であることは分かっている。
しかも、言葉使いは丁寧で、無礼があるわけではない。
だが、王女ということが全く通用しないことに苛立ってはいたが、ここで怒鳴りでもしたら、余計にあって貰えなくなると抑えて、再度お願いをすることにした。
「お話を伺いたいだけなのです。お時間がないのであれば、出来るまで待たせていただきます」
「では王家にお願いいたします」
「っな」
どうして王家になるのか、訊ねて来ているのはフォンターナ家で、王家ではない。
どう言えば分かるのかと考えていると、一台の気品あふれる馬車が到着し、長身の美しい青年が降りて来た。
「仕事にお戻りください」
「「は!」」
護衛二人は男性に頭を下げて、持ち場に戻り、男性はメーリンの前に立った。
「やはりここへ来ていましたか、ハビット王国の王女殿下。私はメイリクス・レオラッドです」
「大公閣下…」
メーリンはレオラッド大公閣下の顔を知ることは出来ないまま来たので、若く見える様にまさか大公閣下だとは思いもしなかった。
「王家からお断りしたのに、どうしてこちらに来ているのか、こちらでは迷惑ですので、王宮で話を伺わせていただきましょう」
「ですが」
「これ以上、迷惑を掛けるつもりですか?」
「分かりました」
あまりに強い眼差しに、メーリンも承諾するしかなかった。
馬車に付いて来てくださいと言われ、王宮まで馬車で向かうことになった。馬車の中で待っていたトーマスたちは、何があったのかと不思議に思っていた。
4,006
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる