【完結】悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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フォンターナ家

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「分からなかったの?」
「いえ、邸は分かりましたが、ご当主様は素晴らしい方ということ以外、どのような方かは分かりませんでした」
「分かったのなら、良かったじゃない」
「あまり聞くと怪しまれてはと思い、引き下がるしかありませんでした」
「仕方ないわ」

 だが、メーリンはこんなに簡単に見つかるならば、どうして今まで分からなかったのだろうか、わざわざ探しに来る人はいなかったのだろうかと考えていた。

 馬車でフォンターナ家に着くと、平民とは思えないほどの大きな門で、二人の筋肉隆々の大きな門番が立つ邸であった。

「もしかして、平民ではないのかしら?」
「そうかもしれませんね」

 いくら元々伯爵家であった一家が、アジェル王国から移ったといっても、爵位を授けられるとは考えてもいなかった。

 だが、アジェル王国でも功績から爵位を授けられたように、こちらでも可能性を考えて置かなくてはならなかった。

 レオラッド大公閣下夫人も、伯爵令嬢ではあったが、平民となって結婚する際に、相手が大公であるために、有力貴族の養女になり、その家も何か妨害をしているのではないかとすら思っていた。

「私が話して来ましょう」
「お願いいたします」

 平民であれば、窓口はトーマスで十分だと思っていたが、平民ではない可能性があるために、メーリン自ら門番に声を掛けることにした。

「すみません。私、ハビット王国の第一王女で、メーリンと申します」
「はい」

 仏頂面の二人の門番は、名前を聞いても、表情一つ変えることはなかった。

「フォンターナ家のご当主にお会いしたいのですが」
「お約束は伺っておりません」
「是非、お会いしたいとお取次ぎ願えませんか」
「オルタナ王国王家から、フォンターナ家は多忙にて、ご希望には添えませんと返事が届いておりませんか?」

 その言葉に、メーリンは知っていたのだと、焦った。

 王女なのだから、当主に聞きに行くくらいはするだろうと、こんなところで王家の人間を待たせることはないと考えていたのである。

「ですが、どうしてもお会いしたいのです。伝えてはいただけませんか」
「いいえ、お約束のない方は多忙にて、こちらで断らせていただいております。ご理解ください」

 いくら仏頂面の門番でも、彼らも仕事であることは分かっている。

 しかも、言葉使いは丁寧で、無礼があるわけではない。

 だが、王女ということが全く通用しないことに苛立ってはいたが、ここで怒鳴りでもしたら、余計にあって貰えなくなると抑えて、再度お願いをすることにした。

「お話を伺いたいだけなのです。お時間がないのであれば、出来るまで待たせていただきます」
「では王家にお願いいたします」
「っな」

 どうして王家になるのか、訊ねて来ているのはフォンターナ家で、王家ではない。

 どう言えば分かるのかと考えていると、一台の気品あふれる馬車が到着し、長身の美しい青年が降りて来た。

「仕事にお戻りください」
「「は!」」

 護衛二人は男性に頭を下げて、持ち場に戻り、男性はメーリンの前に立った。

「やはりここへ来ていましたか、ハビット王国の王女殿下。私はメイリクス・レオラッドです」
「大公閣下…」

 メーリンはレオラッド大公閣下の顔を知ることは出来ないまま来たので、若く見える様にまさか大公閣下だとは思いもしなかった。

「王家からお断りしたのに、どうしてこちらに来ているのか、こちらでは迷惑ですので、王宮で話を伺わせていただきましょう」
「ですが」
「これ以上、迷惑を掛けるつもりですか?」
「分かりました」

 あまりに強い眼差しに、メーリンも承諾するしかなかった。

 馬車に付いて来てくださいと言われ、王宮まで馬車で向かうことになった。馬車の中で待っていたトーマスたちは、何があったのかと不思議に思っていた。
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