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相手を探す第一王女
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「不貞したからに決まっているじゃない」
「っ、でもあなたは留学先を潰したからでしょう」
ライラックに言われるのであれば、オリビアは言い返す術を持っていなかったが、アマリリスは自業自得である。
「お母様のせいでもあるはずよ!」
誰かのせいにしなければ、現実に向き合えないアマリリスは、オリビアに責任転嫁していた。
「あったとしても、私にはどうにもならないわ。それこそあなたと言った通り、不貞を犯した女なのですから」
オリビアはどうしてあんなに男娼に夢中になってしまったのかというほど、反省というよりは、目が覚めたような感覚になっていた。
「お父様が探してくれないのだから、お母様が見付けてよ」
アッシュとライラックは婚約が決まったことを、オリビアも兄から教えて貰い、アマリリスに留学先のことで相手が見付からずに、困っているというのも聞いていた。
「何度も同じことを言わせないで頂戴」
「責任を取ってよ!」
「だったら、あなたも留学先のことを責任を取るべきでしょう」
「っな!」
「あなたのせいで、留学が出来なくなった方だっているはずよ。その方はあなたは恨んでいるでしょうね、そんな話を友人に話すことだってあるでしょう」
「じゃあ、他国に伝手はないの!」
「あったら、既に頼んでいるわよ」
他国の縁談は難しいと話している。そんな伝手があれば、誰か子どもたちとの婚約を決めていただろう。
「大公閣下の子息だって!折角、格好良かったのに、挨拶もさせて貰えなかったのよ!お父様とお母様のせいなのでしょう!」
「…そうね」
オリビアは子息のことは知らなかったが、エルムの息子なのだろうと察した。
「謝ってどうにかならないの!」
「無理よ、お母様はオルタナ王国に入国すら出来ないわ」
オリビアは罰として、オルタナ王国に入国禁止となっている。
「…え」
「それほど怒らせているの」
「その母親を?」
「そうね、だから謝罪はおろか、会うことも許されないわ」
威勢よくアニバーサリーが戻ってくればなどと思っていた頃が、懐かしいとすら思っていた。皮肉にもすっかり立場は逆転してしまったと、オリビアは思っている。
「何なのよ!使えないわね」
「じゃあ、もう帰って頂戴」
「何よ、折角頼ってあげたのに」
「頼る相手がいないからでしょう」
「な!もういいわ」
アマリリスは結局、何も得られないまま帰ることになった。
だが、同級生だった伯爵令嬢の邸で、他国の方も招かれるパーティーが開かれることを、メイドの噂話から聞くことになった。
親しくはなかったが、何度か話したことがあったために、令嬢に連絡をして、どうしても行きたいと願い出た。
伯爵家は王家を呼ぶつもりはなく、王女殿下がいらっしゃる対応は出来ませんと断ったが、王女としての参加ではないと話して、ようやく誘って貰うことが出来た。
珍しく他国の者が来るようなパーティーが開かれるのは、令嬢の兄が国際ピアノコンクールで賞を取ったからである。とは言っても、最高賞ではなかったので、内輪のパーティーであった。
伯爵令嬢は既に子爵家に嫁いでおり、パーティーに出席する友人たちにアマリリスも来ると言えば、どうして誘ったのかと驚かれることになった。
「婚約が出来ずに困っているのでしょう?とても必死で、可哀想だったのよ」
「それは確かにね…」
「でも、面倒事を起こしたりしないのかしら?」
「そんなことをしたら、ますます婚約なんて出来なくなるわよ」
「それもそうね」
皆、アマリリスの留学先でのことは知っていたが、オズレ王国に留学をしたいわけではなかったので、被害を受けたわけではなかった。
それでも無事に終わることを願いながらも、可哀想なのだから、相手を探すような素振りがあっても、見なかったことにしようと話していた。アマリリスは同級生にとって、そんな存在になっていたのである。
「っ、でもあなたは留学先を潰したからでしょう」
ライラックに言われるのであれば、オリビアは言い返す術を持っていなかったが、アマリリスは自業自得である。
「お母様のせいでもあるはずよ!」
誰かのせいにしなければ、現実に向き合えないアマリリスは、オリビアに責任転嫁していた。
「あったとしても、私にはどうにもならないわ。それこそあなたと言った通り、不貞を犯した女なのですから」
オリビアはどうしてあんなに男娼に夢中になってしまったのかというほど、反省というよりは、目が覚めたような感覚になっていた。
「お父様が探してくれないのだから、お母様が見付けてよ」
アッシュとライラックは婚約が決まったことを、オリビアも兄から教えて貰い、アマリリスに留学先のことで相手が見付からずに、困っているというのも聞いていた。
「何度も同じことを言わせないで頂戴」
「責任を取ってよ!」
「だったら、あなたも留学先のことを責任を取るべきでしょう」
「っな!」
「あなたのせいで、留学が出来なくなった方だっているはずよ。その方はあなたは恨んでいるでしょうね、そんな話を友人に話すことだってあるでしょう」
「じゃあ、他国に伝手はないの!」
「あったら、既に頼んでいるわよ」
他国の縁談は難しいと話している。そんな伝手があれば、誰か子どもたちとの婚約を決めていただろう。
「大公閣下の子息だって!折角、格好良かったのに、挨拶もさせて貰えなかったのよ!お父様とお母様のせいなのでしょう!」
「…そうね」
オリビアは子息のことは知らなかったが、エルムの息子なのだろうと察した。
「謝ってどうにかならないの!」
「無理よ、お母様はオルタナ王国に入国すら出来ないわ」
オリビアは罰として、オルタナ王国に入国禁止となっている。
「…え」
「それほど怒らせているの」
「その母親を?」
「そうね、だから謝罪はおろか、会うことも許されないわ」
威勢よくアニバーサリーが戻ってくればなどと思っていた頃が、懐かしいとすら思っていた。皮肉にもすっかり立場は逆転してしまったと、オリビアは思っている。
「何なのよ!使えないわね」
「じゃあ、もう帰って頂戴」
「何よ、折角頼ってあげたのに」
「頼る相手がいないからでしょう」
「な!もういいわ」
アマリリスは結局、何も得られないまま帰ることになった。
だが、同級生だった伯爵令嬢の邸で、他国の方も招かれるパーティーが開かれることを、メイドの噂話から聞くことになった。
親しくはなかったが、何度か話したことがあったために、令嬢に連絡をして、どうしても行きたいと願い出た。
伯爵家は王家を呼ぶつもりはなく、王女殿下がいらっしゃる対応は出来ませんと断ったが、王女としての参加ではないと話して、ようやく誘って貰うことが出来た。
珍しく他国の者が来るようなパーティーが開かれるのは、令嬢の兄が国際ピアノコンクールで賞を取ったからである。とは言っても、最高賞ではなかったので、内輪のパーティーであった。
伯爵令嬢は既に子爵家に嫁いでおり、パーティーに出席する友人たちにアマリリスも来ると言えば、どうして誘ったのかと驚かれることになった。
「婚約が出来ずに困っているのでしょう?とても必死で、可哀想だったのよ」
「それは確かにね…」
「でも、面倒事を起こしたりしないのかしら?」
「そんなことをしたら、ますます婚約なんて出来なくなるわよ」
「それもそうね」
皆、アマリリスの留学先でのことは知っていたが、オズレ王国に留学をしたいわけではなかったので、被害を受けたわけではなかった。
それでも無事に終わることを願いながらも、可哀想なのだから、相手を探すような素振りがあっても、見なかったことにしようと話していた。アマリリスは同級生にとって、そんな存在になっていたのである。
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