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覚悟2
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「後、私も昨日知ったのですが、エルム・フォンターナ様と私の婚約は、フォンターナ家から婚約中でも不都合があれば婚約は解消するという注意事項の入った書面が残っていました」
「そう、だったのか」
バトワスがわざわざ婚約破棄などと言う必要もなく、両家の契約として、解消が出来ていた。
「私が言わずとも…」
「申し訳ございません!」
「いや…だが、フォンターナ騎士団長はそうはしなかった、する気もなくなったのかもしれないな」
婚約破棄と言っていても、オズワルド・フォンターナが婚約の契約を持ち出して、婚約は解消だと言えば、契約に基づいて解消することが出来ていたはずである。
だが、そうはしなかった。それは私が婚約破棄と言ったからではないか。
言わなければ、時期に解消になっていたのではないか。
そんな思いが、今更とは思えないほど、バトワスの頭を駆け巡っていた。
「はい…私も確認をしましたが、きちんと記載されておりました。本来はマクローズ伯爵家の有責で解消されていたはずだったのです…私が悪いことは当然ですが、両親が隠していたということです」
「隠したかったのだろうな」
「はい…今となっては、よく婚約が結ばれたものだとすら思います」
「ああ…」
確かに婚約が結ばれていなければ、相手がフォンターナ家でなければ、違ったことは間違いない。
「当時の執事が今更、私に言っても仕方ないと言わなかったそうですが…私がフォンターナ家に話をしに行くことも出来たはずです」
「冷静に話が出来たと思うか?」
「それは…」
今ならきちんと誠意を持って話が出来たと思う。だが、あの当時は両親への反発と、シャーリンのことで冷静に話が出来たと自信を持っては言えなかった。
「当時のジェフだと、フォンターナ騎士団長に怒りを買った可能性もあるだろう」
「それは、はい…」
相手は当時、騎士団長だったオズワルドであることを思い出し、上手く言えたかは、さらに思えなくなった。
「全て、今更なんだよ…皆が、間違っていた」
「はい…」
「だが、さらに間違うとは…」
皆が、弁えていたはずであった。オズワルド・フォンターナが怒ったのも、メーリン王女殿下で、謝罪は断られたが、アジェル王国に罰はなかった。
「はい…」
「あちらから何も求められなかったら、どうする?」
「罰を、ですか?」
ジェフは、当然のように罰されると思っていた。
「フォンターナ家は、関わりたくないという気持ちの方が強いと感じている。だから、可能性は高いと思う」
「両親は領地に移します。もういらっしゃることはないかもしれませんが、領地であれば、会うことは絶対にないでしょう」
「そうだな」
「母はディールはアジェル王国をあなた方のせいで見限ったと言われたことが、ショックだったそうですから」
「そう言われたのか?」
「はい…大公閣下夫人がそうおっしゃったようです」
バトワスも分かっていたが、関係者に言われることは気分が違う。
「噂になっていると言えば、責められるのを恐れて従うと思います」
「そうか、ならばそのように動いてくれ」
「はい」
バトワスはレオラッド大公閣下にハイリー・マクローズの謝罪と、ジェフがどんな罰でも受け入れますという内容の手紙を送った。
まず返事が来るのかとすら思っていたが、しばらくして返事は来た。
だが、差出人を見て、固まった。
達筆な字で、エルム・レオラッドと書かれていたからである。
これまでもそうだったように当たり前に、レオラッド大公閣下から返事が来ると思っていた。
エルムのことは一方的に責め続けた関係性だけで、きちんと話したことすらなく、間違いなく私を嫌っていると自覚があった。
嫌われている者への手紙に、一体何が書いてあるのかと考えれば考えるほど、なかなか開封が出来なかった。
「そう、だったのか」
バトワスがわざわざ婚約破棄などと言う必要もなく、両家の契約として、解消が出来ていた。
「私が言わずとも…」
「申し訳ございません!」
「いや…だが、フォンターナ騎士団長はそうはしなかった、する気もなくなったのかもしれないな」
婚約破棄と言っていても、オズワルド・フォンターナが婚約の契約を持ち出して、婚約は解消だと言えば、契約に基づいて解消することが出来ていたはずである。
だが、そうはしなかった。それは私が婚約破棄と言ったからではないか。
言わなければ、時期に解消になっていたのではないか。
そんな思いが、今更とは思えないほど、バトワスの頭を駆け巡っていた。
「はい…私も確認をしましたが、きちんと記載されておりました。本来はマクローズ伯爵家の有責で解消されていたはずだったのです…私が悪いことは当然ですが、両親が隠していたということです」
「隠したかったのだろうな」
「はい…今となっては、よく婚約が結ばれたものだとすら思います」
「ああ…」
確かに婚約が結ばれていなければ、相手がフォンターナ家でなければ、違ったことは間違いない。
「当時の執事が今更、私に言っても仕方ないと言わなかったそうですが…私がフォンターナ家に話をしに行くことも出来たはずです」
「冷静に話が出来たと思うか?」
「それは…」
今ならきちんと誠意を持って話が出来たと思う。だが、あの当時は両親への反発と、シャーリンのことで冷静に話が出来たと自信を持っては言えなかった。
「当時のジェフだと、フォンターナ騎士団長に怒りを買った可能性もあるだろう」
「それは、はい…」
相手は当時、騎士団長だったオズワルドであることを思い出し、上手く言えたかは、さらに思えなくなった。
「全て、今更なんだよ…皆が、間違っていた」
「はい…」
「だが、さらに間違うとは…」
皆が、弁えていたはずであった。オズワルド・フォンターナが怒ったのも、メーリン王女殿下で、謝罪は断られたが、アジェル王国に罰はなかった。
「はい…」
「あちらから何も求められなかったら、どうする?」
「罰を、ですか?」
ジェフは、当然のように罰されると思っていた。
「フォンターナ家は、関わりたくないという気持ちの方が強いと感じている。だから、可能性は高いと思う」
「両親は領地に移します。もういらっしゃることはないかもしれませんが、領地であれば、会うことは絶対にないでしょう」
「そうだな」
「母はディールはアジェル王国をあなた方のせいで見限ったと言われたことが、ショックだったそうですから」
「そう言われたのか?」
「はい…大公閣下夫人がそうおっしゃったようです」
バトワスも分かっていたが、関係者に言われることは気分が違う。
「噂になっていると言えば、責められるのを恐れて従うと思います」
「そうか、ならばそのように動いてくれ」
「はい」
バトワスはレオラッド大公閣下にハイリー・マクローズの謝罪と、ジェフがどんな罰でも受け入れますという内容の手紙を送った。
まず返事が来るのかとすら思っていたが、しばらくして返事は来た。
だが、差出人を見て、固まった。
達筆な字で、エルム・レオラッドと書かれていたからである。
これまでもそうだったように当たり前に、レオラッド大公閣下から返事が来ると思っていた。
エルムのことは一方的に責め続けた関係性だけで、きちんと話したことすらなく、間違いなく私を嫌っていると自覚があった。
嫌われている者への手紙に、一体何が書いてあるのかと考えれば考えるほど、なかなか開封が出来なかった。
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