【完結】悪意か、善意か、破滅か

異変２

　ハビット王国よりもアジェル王国の方が、天候が変わって年数が違うために、まだお金には困っていなかったが、生活の水準が下がり続ける中、さらに生活必需品も質が下がるか、価格が上昇することになった。

　そのことは、ジェフにも伝えられることになった。

「何てことを…」

　ジェフはまだそのようなことになっていることに、忙しくて気付いていなかった。

「そもそもが輸出許可国に入っていないのだから、受け入れるしかないが、おそらく前伯爵夫人のことがあって、ディールが調べたのだろう」
「すぐに両親は領地に押し込みます」

　既に遅い状況だが、今切られただけで、いずれ切られていただろうことに、バトワスは何とも言えない気持であった。

「ああ、そうだな」

　二人を領地に押し込んだところで何も変わらないが、マクローズ前伯爵夫人に何の咎もないことも納得がいかなかった。華やかなことが好きなマクローズ前伯爵夫妻は、娯楽のない場所は罰にはなるだろう。

　ジェフは邸に戻って、両親に再度、領地に行くように伝えた。

「何だ！」
「砂糖や塩、小麦粉やお茶、紙などが今までのように輸入が出来なくなったのを知らないのですか？」

　ジェフも知らなかったが、知っていたかのように話した。

「ああ、皆が不満を言っていると聞いている」

　ジョージは人と会って話をするのが好きなために、出掛けては暇な貴族たちと話をしており、その際にふざけるな、これ以上、苦しめたいのかと言っていた。

「何か、輸入に問題でもあったのか？」
「母上のせいだよ！」
「は？」
「どうして私が…関係ないわ」
「ディールの商品がアジェル王国にも入っていたそうだ、それが全て切られた」
「は？」
「それが、どうして私のせいだって言うのよ！」

　ディールに繋がる人物に会ったのは、自分だけという自覚もないのか。

「母上が大公閣下夫人に会って、失礼なことを言ったからだろう！」
「覚悟するように言っていたが、どうなったんだ？」

　ジョージはあれから深く考えることはなかったが、何も言って来ないことで、やはり大袈裟だったのだと鼻で笑っていた。

「罰する価値もないと判断されたよ」
「っな！だが、罰されなかったという意味では同じか、ほらみろ、大袈裟だったじゃないか」

　ジョージはジェフに向かって、得意気な顔を向けた。

「ああ、だからアジェル王国に、真っ当な制裁を加えられたということだよ」
「っな！それは言い掛かりだろう！」
「そうよ！元々、アジェル王国は輸入国になっていなかったんでしょう？」

　ジェフはそのことは言わなかったが、さすがに知っていたかと思った。

「そうだ、ハイリーのせいではない」
「だったら、そう言えばいい。母上、大公閣下夫人に会ったことを勝手に話したのだろう？」

　ハイリーも人と話すことが好きなために、知り合いを捕まえては、アニバーサリーを戻して貰いたいだけなのに、酷いのよと話をしていた。

　ジェフは執事から聞き、どうして今でも被害者面が出来るのかと、顔を歪ませるしかなかった。

「皆、きっかけを作ったのは、ハイリー・マクローズだといずれ気付くだろうからな。それなのに、大公閣下夫人を悪く言っていたことを思い出すだろう」
「っな」
「こちらには迷惑を掛けないでくれよ」
「そんなことにはならないわよ、ねえ」

　ハイリーはそう言いながら、ジョージを見つめた。

「王家はそう判断されている。国王陛下も王太子殿下も、父上と母上が領地に向かうことを望まれていることを伝えて置くよ」
「…王家が？」

　ジョージはハイリーの方も見ずに、王家という言葉に反応した。

「ああ、国王陛下は確かにアジェル王国は、ディールの輸入許可国に入っていないが、それでも怒りを買うような真似をしたマクローズ前伯爵夫人は、何てことをしてくれたんだとおっしゃっている」
「お前ッ！」