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その後
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アジェル王国王家は、結局エルムの返事がないまま、その後はオルタナ王国とはフエイウイルスの薬だけの関係になった。
また新たなウイルスが流行するようなことがあっても、助けて欲しいとは言えず、不安を抱え続ける日々であった。
第二王子のオークリーも結婚し、第三王女のライラックも予定通りに結婚した。
第二王女のカメリアの心は結局、穏やかに過ごす程度にしか戻ることはなく、騙された相手のことも知ることは一生なかった。
オイスラッドが崩御してから、前王妃となったシンバリアとカメリアと王家の管轄の地で、二人は静かに暮らすことになった。
パベルは留学を終えると、留学中に稼いでいたお金をアジェル王国に渡し、予定通りに王位継承権を放棄した。恋人はいたこともあったが、結婚はすることも子どもを成すこともなく、自分の出来ることを学び続けた。
マグノリア、オーキッド、ヴァイオラも国内ではあるが、嫁がせることが出来た。
バトワスはオイスラッドが崩御して、国王となったが、自分は相応しくないと分かっており、アッシュのために一時的に国王の地位に着いたに過ぎなかった。
それでも、アジェル王国を良くはならなくとも維持し続けた。
元王太子妃であったオリビアは、非公式に子どもには会うことはあったが、公に姿を現すことは一度もなかった。
バトワスも一度だけ、オリビアに会いに行った。
「申し訳ありませんでした…」
「反省をしたのか」
「はい…どうしてあんな風になったのか、今では分からないほどです」
オリビアは一緒にいた時には一切見ることのなかった、穏やかな姿であった。
「王家の方にも、侯爵家にも迷惑を掛けました。私は許される限り、こちらで大人しくしているつもりですが、邪魔になれば出て行くつもりでおります」
「そうか」
褒めることではないが、多くの托卵が発覚する中、オリビアは王太子妃であったために、托卵だけはしていなかった。
「アニバーサリーは、ディールの商会であった」
「…え」
「そして、エルム大公閣下夫人は現在、オルタナ王国で、ディールの商会の経営者になっている」
「そんな…」
「私たちはそのような相手を罵り、追い出したんだ」
「…はい、申し訳ないことをしました」
「ああ」
追い出すつもりはなかったと言わなかったことに、ようやくオリビアも後悔と反省を持つことが出来たのだと、バトワスは安堵した。
ジェフも、罰された他の者たちも、反省をしている。
唯一、反省していないのはシャーリンであった。文句を言いながらも、仕事はするしかなかったので、行ってはいたが、男の言い寄ることは止めなかった。
だが、良くても一晩相手にして貰うくらいで、それもすぐにふざけるなよと相手にすらして貰えなくなった。
最期は男に縋りつき、振り払われた際に、転んで頭を打って亡くなった。
借金は結局、返すことが出来ず、ガルッツ子爵家が残りを支払うことになった。ガルッツ子爵家も、マクローズ伯爵家と同じように、制裁を受けた。
アジェル王国自体も、子沢山もバトワスの代から徐々に元のように戻り、なぜあのように子どもが多かったのかと、疑問視されるほどであった。
それでも表向きは恋愛結婚が増えたからだと押し通したが、アジェル王国の者は女性の性欲が強かったからだと知っている。
他国は家庭内の内情まで知ることはないとしても、天候が変わって、やることがなかったのではないかと笑われることになっている。
アジェル王国は、ハビット王国に追随するように同じ道を辿ることになった。
そのハビット王国はと言うと、輸入のことでも人が離れて行ったが、メーリンのことでさらに厳しい立場になり、徐々に人が減っている。
いずれはどこかの国に吸収され、ハビット王国はなくなるだろうと言われている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただきありがとうございます。
半年近く書いて来た作品ですが、
あと4話で終わる予定になっております。
最後までよろしくお願いいたします。
また新たなウイルスが流行するようなことがあっても、助けて欲しいとは言えず、不安を抱え続ける日々であった。
第二王子のオークリーも結婚し、第三王女のライラックも予定通りに結婚した。
第二王女のカメリアの心は結局、穏やかに過ごす程度にしか戻ることはなく、騙された相手のことも知ることは一生なかった。
オイスラッドが崩御してから、前王妃となったシンバリアとカメリアと王家の管轄の地で、二人は静かに暮らすことになった。
パベルは留学を終えると、留学中に稼いでいたお金をアジェル王国に渡し、予定通りに王位継承権を放棄した。恋人はいたこともあったが、結婚はすることも子どもを成すこともなく、自分の出来ることを学び続けた。
マグノリア、オーキッド、ヴァイオラも国内ではあるが、嫁がせることが出来た。
バトワスはオイスラッドが崩御して、国王となったが、自分は相応しくないと分かっており、アッシュのために一時的に国王の地位に着いたに過ぎなかった。
それでも、アジェル王国を良くはならなくとも維持し続けた。
元王太子妃であったオリビアは、非公式に子どもには会うことはあったが、公に姿を現すことは一度もなかった。
バトワスも一度だけ、オリビアに会いに行った。
「申し訳ありませんでした…」
「反省をしたのか」
「はい…どうしてあんな風になったのか、今では分からないほどです」
オリビアは一緒にいた時には一切見ることのなかった、穏やかな姿であった。
「王家の方にも、侯爵家にも迷惑を掛けました。私は許される限り、こちらで大人しくしているつもりですが、邪魔になれば出て行くつもりでおります」
「そうか」
褒めることではないが、多くの托卵が発覚する中、オリビアは王太子妃であったために、托卵だけはしていなかった。
「アニバーサリーは、ディールの商会であった」
「…え」
「そして、エルム大公閣下夫人は現在、オルタナ王国で、ディールの商会の経営者になっている」
「そんな…」
「私たちはそのような相手を罵り、追い出したんだ」
「…はい、申し訳ないことをしました」
「ああ」
追い出すつもりはなかったと言わなかったことに、ようやくオリビアも後悔と反省を持つことが出来たのだと、バトワスは安堵した。
ジェフも、罰された他の者たちも、反省をしている。
唯一、反省していないのはシャーリンであった。文句を言いながらも、仕事はするしかなかったので、行ってはいたが、男の言い寄ることは止めなかった。
だが、良くても一晩相手にして貰うくらいで、それもすぐにふざけるなよと相手にすらして貰えなくなった。
最期は男に縋りつき、振り払われた際に、転んで頭を打って亡くなった。
借金は結局、返すことが出来ず、ガルッツ子爵家が残りを支払うことになった。ガルッツ子爵家も、マクローズ伯爵家と同じように、制裁を受けた。
アジェル王国自体も、子沢山もバトワスの代から徐々に元のように戻り、なぜあのように子どもが多かったのかと、疑問視されるほどであった。
それでも表向きは恋愛結婚が増えたからだと押し通したが、アジェル王国の者は女性の性欲が強かったからだと知っている。
他国は家庭内の内情まで知ることはないとしても、天候が変わって、やることがなかったのではないかと笑われることになっている。
アジェル王国は、ハビット王国に追随するように同じ道を辿ることになった。
そのハビット王国はと言うと、輸入のことでも人が離れて行ったが、メーリンのことでさらに厳しい立場になり、徐々に人が減っている。
いずれはどこかの国に吸収され、ハビット王国はなくなるだろうと言われている。
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本日もお読みいただきありがとうございます。
半年近く書いて来た作品ですが、
あと4話で終わる予定になっております。
最後までよろしくお願いいたします。
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