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面通し2
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「不貞は事実です。婚約解消、慰謝料は支払うべきだと思いますが、懸想しているだけはなく、どうしても不貞行為の事実が必要だったのではないですか」
「慰謝料が欲しかったとおっしゃるのですか」
「いえ、完全に婚約がなくなることが目的だったのではないですか。その後の要求はおまけのようなもの、違いますか」
「正直に言いなさい」
「本当に知らないのです。ジョセラ様は私を信じられませんか」
『私、リッツソード侯爵の娘、カナンと申します。シーバ公爵令息様、発言をよろしいですか』
『ラト語…ああ、許可する』
皆は共通語で話していたが、カナンは前々世がニュートラ王国あるため、母国語であるラト語は何なく話せる。気を許させるために、敢えて使うことにした。
『まず、私のことは自由恋愛ペリラール王国の者ではないと思って、お聞き願えれば幸いです』
『ええ、分かりました』
『メディエド・バンスは、自分が公爵様の妻になりたかった、なると思っていたから?婚約をなくしたかったのではありませんか』
『ち、違います』
『どうせペリラール王国の令嬢なら不貞を犯すだろう。だが、なかなか証拠は掴めない。しかし、想い人がいることは分かった、でも相手にされておらず、不貞行為にはならないかもしれない。そこで、彼に似ていると言われていたトースの存在を知り、妹の治療費を餌に、護衛騎士として潜り込ませた。ご両親もルビー嬢の想い人は知らなかったので、問題なく採用した。一体いくら使ったのでしょうか?』
『そうなのか』
ジョセラの表情はカナンの考えに寄って来ており、リッツソード侯爵もあまりに自身に似ている娘の姿に喜んでいいのか複雑な気持ちを抱えていた。
『違います、信じてください』
『後から、あの時は恥ずかしくて言えなかった、もしくはあの時に自分の気持ちに気付いた、実は好ましく思っておりました、なんて言い出しませんか?』
『そ、そのようなことはございません』
『そうですか、子爵令嬢ですものね。公爵家に嫁ぐには全く足りませんものね。自分は特別だなんて思って、私の方が相応しいなんて考えることすら、まもともな教育を受けていれば、あり得ませんもね?愚かだと言っているようなものですもね?』
『っ』
カナンはもちろん、ジョセラもメディエドが怒りで、目を吊り上げた瞬間を見逃さず、ジョセラの信用も一気に落ちた。
子爵令嬢が公爵家に嫁ぐことは、ニュートラ王国ではまずあり得ない。苦労するのが目に見えていることもあるが、公爵家にとって、子爵家、男爵家は使う者で、妻にするものではないからだ。
子爵家、男爵家も使われる者ではあると理解しているはずが、従姉弟ということで、驕ったのだろう。
「宰相、吐かせますか」
「いや、まだいい」
『公爵令息様も、婚約者がいる身でありながら、年上の従姉弟と言えど未婚の女性を自身の側に置くのは、ニュートラ王国では、いくら子爵令嬢でも要らぬ疑惑を生みます。恐らくメディエド・バンスは、周りに関係を匂わせるように振舞っていたのではありませんか、お調べになってみてはいかがですか』
『チョアス、どうだ、そのようなことはあったか』
『っ』
チョアスはジョセラの従者であり、耳に入らないことはない。ということは、意図的に入れなかったことになる。
『事実を』
『ございました、申し訳ありません』
『なぜ言わなかった!』
『メディエド様から、不本意な縁談だと聞いておりました、申し訳ありません』
「こちらも問題があったようです、申し訳ありません」
『ジョセラ様、お待ちください』
ジョセラはメディエドを使う者として扱っていたのだろう、鋭い視線だけで黙らせ、リッツソード侯爵は護衛騎士を連れて来るように命じた。
「この度は申し訳ございませんでした。名前は知りませんが、ルビー・プロプラン侯爵令嬢と関係を持つように言われ、妹の治療費がどうしても欲しくて、行いました。申し訳ありません」
トースが連れて来られて謝罪を始めると、メディエドは下を向き、顔を隠そうと必死である。
「この部屋にいらっしゃいますか」
「あの黒髪の方です!」
トースがメディエドを指差すと、メディエドはあからさまに動揺を見せた。分かり易く、計画がずさん過ぎる。
「わ、私は知りません」
「メディと呼ばれていました、間違いなくあの方です」
結局、婚約解消と慰謝料で話は終わり、トースとメディエドの処遇は各々の国に任せられることになった。
「慰謝料が欲しかったとおっしゃるのですか」
「いえ、完全に婚約がなくなることが目的だったのではないですか。その後の要求はおまけのようなもの、違いますか」
「正直に言いなさい」
「本当に知らないのです。ジョセラ様は私を信じられませんか」
『私、リッツソード侯爵の娘、カナンと申します。シーバ公爵令息様、発言をよろしいですか』
『ラト語…ああ、許可する』
皆は共通語で話していたが、カナンは前々世がニュートラ王国あるため、母国語であるラト語は何なく話せる。気を許させるために、敢えて使うことにした。
『まず、私のことは自由恋愛ペリラール王国の者ではないと思って、お聞き願えれば幸いです』
『ええ、分かりました』
『メディエド・バンスは、自分が公爵様の妻になりたかった、なると思っていたから?婚約をなくしたかったのではありませんか』
『ち、違います』
『どうせペリラール王国の令嬢なら不貞を犯すだろう。だが、なかなか証拠は掴めない。しかし、想い人がいることは分かった、でも相手にされておらず、不貞行為にはならないかもしれない。そこで、彼に似ていると言われていたトースの存在を知り、妹の治療費を餌に、護衛騎士として潜り込ませた。ご両親もルビー嬢の想い人は知らなかったので、問題なく採用した。一体いくら使ったのでしょうか?』
『そうなのか』
ジョセラの表情はカナンの考えに寄って来ており、リッツソード侯爵もあまりに自身に似ている娘の姿に喜んでいいのか複雑な気持ちを抱えていた。
『違います、信じてください』
『後から、あの時は恥ずかしくて言えなかった、もしくはあの時に自分の気持ちに気付いた、実は好ましく思っておりました、なんて言い出しませんか?』
『そ、そのようなことはございません』
『そうですか、子爵令嬢ですものね。公爵家に嫁ぐには全く足りませんものね。自分は特別だなんて思って、私の方が相応しいなんて考えることすら、まもともな教育を受けていれば、あり得ませんもね?愚かだと言っているようなものですもね?』
『っ』
カナンはもちろん、ジョセラもメディエドが怒りで、目を吊り上げた瞬間を見逃さず、ジョセラの信用も一気に落ちた。
子爵令嬢が公爵家に嫁ぐことは、ニュートラ王国ではまずあり得ない。苦労するのが目に見えていることもあるが、公爵家にとって、子爵家、男爵家は使う者で、妻にするものではないからだ。
子爵家、男爵家も使われる者ではあると理解しているはずが、従姉弟ということで、驕ったのだろう。
「宰相、吐かせますか」
「いや、まだいい」
『公爵令息様も、婚約者がいる身でありながら、年上の従姉弟と言えど未婚の女性を自身の側に置くのは、ニュートラ王国では、いくら子爵令嬢でも要らぬ疑惑を生みます。恐らくメディエド・バンスは、周りに関係を匂わせるように振舞っていたのではありませんか、お調べになってみてはいかがですか』
『チョアス、どうだ、そのようなことはあったか』
『っ』
チョアスはジョセラの従者であり、耳に入らないことはない。ということは、意図的に入れなかったことになる。
『事実を』
『ございました、申し訳ありません』
『なぜ言わなかった!』
『メディエド様から、不本意な縁談だと聞いておりました、申し訳ありません』
「こちらも問題があったようです、申し訳ありません」
『ジョセラ様、お待ちください』
ジョセラはメディエドを使う者として扱っていたのだろう、鋭い視線だけで黙らせ、リッツソード侯爵は護衛騎士を連れて来るように命じた。
「この度は申し訳ございませんでした。名前は知りませんが、ルビー・プロプラン侯爵令嬢と関係を持つように言われ、妹の治療費がどうしても欲しくて、行いました。申し訳ありません」
トースが連れて来られて謝罪を始めると、メディエドは下を向き、顔を隠そうと必死である。
「この部屋にいらっしゃいますか」
「あの黒髪の方です!」
トースがメディエドを指差すと、メディエドはあからさまに動揺を見せた。分かり易く、計画がずさん過ぎる。
「わ、私は知りません」
「メディと呼ばれていました、間違いなくあの方です」
結局、婚約解消と慰謝料で話は終わり、トースとメディエドの処遇は各々の国に任せられることになった。
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