【完結】似て非なる双子の結婚

野村にれ

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悩める夫たち2

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「私はどうにでもなるが、キリアムはアベリーのことがあるのだから、慎重に動いた方がいい」
「ああ、トスカーとミエルのこともあるからな」

 三歳のトスカーとミエルはしっかり育てなくてはならない。私たちが習った家庭教師に来て貰って、指導をして貰っている。

「あとルオンに聞かれたのだが、なぜ事件の日、ホテルを変えたんだ?次期当主として、居場所を知らせてもいなかったのか?」
「それは…」

 正直、聞かれたくないことだった。どう答えても、罪悪感しかないからだ。

「ルオンは、姉が新しいホテルに泊まりたいなどと、我儘を言ったのではないか言っていたが、どうなんだ?」
「…あっ、ああ、そうだ。その通りだ。まさかこんなことになっているとは思わずに、ホテルで遊んでいたと言われても仕方ない…聞かれるのが怖かった」

 キリアムは腕を額に当てて、塞ぎ込んでしまった。

「父上たちには?」
「変えたことは聞かれたが、アベリーとユーリのことで、それどころではなくなって、問い詰められることはなかったんだ…」
「ルオンの言ったことは事実だったのか…」

 オーランドにとって、ルオンの言ったことにますます信憑性を持つ結果となった。

「言い訳のようだが、私はホテルはどこでも良かったのだが、メルベールがもうすぐ誕生日だから、いつものホテルじゃなくて違うホテルに泊まりたいと言い出して、プールがあると聞いていたようで、そこへ…今となっては後悔しかない」
「知らなかったとはいえ、今後は気を付けろよ。所在は明らかにしておくべきだ」
「ああ、その通りだったと思う」

 観光気分で、まあいいかと思った自分を殴りたい。せめて、連絡をしていれば、もっと早くに戻れたはずだ。思い出すのも辛かった。

 キリアムはアベリー、メルベール、レイア、全てが自分に圧し掛かっているように感じていた。

「無理はするなよ」
「ああ、アベリーは寄宿学校に入れるつもりだ」
「そうか…」

 アベリーの将来は既に決まっている以上、その方がいいのかもしれない。修道院に入っても、一生会えないわけではない。オーランドには分からないが、親としては苦渋の決断なのだろう。

 何かあったら相談するようにと告げて、オーランドは帰った。

 別邸に戻ると、メルベールが領地で購入したドレスを着ていた。正直、それすら見たくなかった。

「来週、友人の茶会に誘われたの」
「当分、控えた方がいい」
「でも、友人たちは公爵家の方とは関係ないわ。大丈夫よ」
「広まっている可能性もある」
「そんなことないわ、皆、そんなに心の狭い人たちじゃないもの」

 どういう意味だ?心の狭い人というのは、嘘くらい許してくれるという意味か?まさかユーリのことを指しているのか?

「アベリーのこともある、これ以上何かあっては困るんだ」
「だから仲のいい友人なの!ユーリのことで、励ましてくれるつもりなのよ」
「この前、亡くなった時のことを聞かれて困ったと言ってなかったか?」

 ユーリのことばかり聞かれる、私が分からないのは仕方ないのに、皆が薄情だと言っているように感じると嘆いていたではないか。

「あの人たちは同級生みたいなもので、友人とは言えない人だから、ユーリのことばかり聞いていたのよ」
「はあ…私は反対したからな、責任は自分で取りなさい」
「もう、心配し過ぎなのよ。キリアムは。アベリーも寄宿学校に入ればきっと違うわ、己を見詰め直すはずよ」

 メルベールはアベリーと向き合うのがもう面倒なだけだろう、入れてしまえばいいと思っているようにしか見えない。

「ああ、そうだ、私もグラーフ伯爵夫妻への贈り物を確認したいんだが?記録はどこにある?」
「え?実家に?」
「父上の様に贈っているだろうではいけないと思ってな」

 贈っていないことはルオンから聞いているが、どう答えるかが聞きたい。嘘を付くか、正直に話すか。

「その都度買っているから、記録はしてなくて…」

 君はまた嘘を重ねるのか…もう信じられそうもない。
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