36 / 67
説明
しおりを挟む
マスタール侯爵はアイレットが旅立つ背中を寂しい気持ちを抱えながら見送り、ハービスとフィーストを呼び出した。
「座りなさい」
「「はい」」
「アデリーナには伝えるつもりはないが、お前たちには伝えておく。ソック伯爵の事件を最初に見付けたのはアイレットだ」
「っな」「本当ですか」
「ああ、ハービスは恨むかもしれないと言っていたが、恨むんじゃないぞ」
「恨みません」「なぜアイレットが見付けるようなことに?」
「昔からよくバートロ伯爵家の話をしていただろう?」
「でもアイレットは参加していませんでした」
ハービスがそう言うと、フィーストも横で頷いている。
「私の主観ではなく、事件を見てみたいと言って、フォリッチ公爵が手を貸してくださったそうだ。才女の意見を聞いてみたいとね」
「才女…」
「アイレットは学園で孤高の才女と呼ばれていたそうだ。表立って弱者を助けることはないが、教師に報告をしてカウンセラーを付けるように進言している」
「ルミナが言っていました、そのようなことを行っていると」
フィーストは現在、ルミナによって、考え方を指導中であり、マスタール侯爵家も全面的に任せている。
「事実だ、マスタール侯爵家の名も多少は役に立ったかもしれないが、孤高の才女の方が役に立っただけだろう。結局、3年間1位を誰にも譲らないまま、旅立った…学園長が表彰したいと言ったそうだが、断ったそうだ」
「断った?」「…アイレットらしいですね」
ルミナの言った通りだった、アイレットは学力を褒めて貰いたいわけでもない、自分のために学んでいるのだと言っていた。
「それで事件の資料を見せて貰って、ワインの仕入れがおかしいこと、その後にバートロ伯爵はワインを嫌っていたこと、そしてワイン貯蔵庫と書かれていたが、そんなものはなかったことが分かった。書いたのはソック伯爵だった」
「擦り付けるために」
「ああ、使用人に聞けば分かるのに、協力者がいたのだろうと」
「それがロズウェル子爵だったのですね」
「そういうことだ、潜入していたリンダースもロズウェル元子爵に聞かれて、ないと話していたのに、訂正されていなかった。説得力を持たせるために必要だったんだろうな。貴族の家にはワイン貯蔵庫がある、貴族はワインが好きだという思い込み。私は責任を取らされることはなかったが、責任を十分に感じている。見付けたのがアイレットだったからこそ、面目が保たれただけなんだ。だから、もしマスタール侯爵家を褒められても、驕ることは許さない、分かるな?」
事件のことでパーティーなどは控えられていたが、再開する時期になっているはずだ。そこでさすがマスタール侯爵家だと褒められて、まんざらでもない態度を取ることは許されない。
「はい」「はい、アデリーナには伝えないというのは?」
「責任があり、驕ってはならないということは伝える。だがアイレットのことで何を言っても、もう駄目だろう」
「何かあったのですか」
「なかったことになっているから、相手は伏せるがアイレットに縁談があった」
「「え?」」
頭はいいのかもしれないけど、縁談があったとは思わなかった。アイレットにはないと思い込んでいたのかもしれないが、客観的見ればアイレットとアデリーナとなれば、アイレットだろう。
「先方に納得して貰ってなかったことになったのだが、アデリーナは自分への縁談があると思っていた時期と重なる。何か誤解をしたのだと思うが、全く関係のない家を言い出して、侍女にも話を聞いたが、特に親しくしていた相手もおらず、その後も紹介がないのにも関わらずだ」
「それは…」「焦っているのは知っていましたが」
気の強いアデリーナがそんな年若い令嬢のような思い込みをしていたのかと、兄たちは恥ずかしくなった。
「座りなさい」
「「はい」」
「アデリーナには伝えるつもりはないが、お前たちには伝えておく。ソック伯爵の事件を最初に見付けたのはアイレットだ」
「っな」「本当ですか」
「ああ、ハービスは恨むかもしれないと言っていたが、恨むんじゃないぞ」
「恨みません」「なぜアイレットが見付けるようなことに?」
「昔からよくバートロ伯爵家の話をしていただろう?」
「でもアイレットは参加していませんでした」
ハービスがそう言うと、フィーストも横で頷いている。
「私の主観ではなく、事件を見てみたいと言って、フォリッチ公爵が手を貸してくださったそうだ。才女の意見を聞いてみたいとね」
「才女…」
「アイレットは学園で孤高の才女と呼ばれていたそうだ。表立って弱者を助けることはないが、教師に報告をしてカウンセラーを付けるように進言している」
「ルミナが言っていました、そのようなことを行っていると」
フィーストは現在、ルミナによって、考え方を指導中であり、マスタール侯爵家も全面的に任せている。
「事実だ、マスタール侯爵家の名も多少は役に立ったかもしれないが、孤高の才女の方が役に立っただけだろう。結局、3年間1位を誰にも譲らないまま、旅立った…学園長が表彰したいと言ったそうだが、断ったそうだ」
「断った?」「…アイレットらしいですね」
ルミナの言った通りだった、アイレットは学力を褒めて貰いたいわけでもない、自分のために学んでいるのだと言っていた。
「それで事件の資料を見せて貰って、ワインの仕入れがおかしいこと、その後にバートロ伯爵はワインを嫌っていたこと、そしてワイン貯蔵庫と書かれていたが、そんなものはなかったことが分かった。書いたのはソック伯爵だった」
「擦り付けるために」
「ああ、使用人に聞けば分かるのに、協力者がいたのだろうと」
「それがロズウェル子爵だったのですね」
「そういうことだ、潜入していたリンダースもロズウェル元子爵に聞かれて、ないと話していたのに、訂正されていなかった。説得力を持たせるために必要だったんだろうな。貴族の家にはワイン貯蔵庫がある、貴族はワインが好きだという思い込み。私は責任を取らされることはなかったが、責任を十分に感じている。見付けたのがアイレットだったからこそ、面目が保たれただけなんだ。だから、もしマスタール侯爵家を褒められても、驕ることは許さない、分かるな?」
事件のことでパーティーなどは控えられていたが、再開する時期になっているはずだ。そこでさすがマスタール侯爵家だと褒められて、まんざらでもない態度を取ることは許されない。
「はい」「はい、アデリーナには伝えないというのは?」
「責任があり、驕ってはならないということは伝える。だがアイレットのことで何を言っても、もう駄目だろう」
「何かあったのですか」
「なかったことになっているから、相手は伏せるがアイレットに縁談があった」
「「え?」」
頭はいいのかもしれないけど、縁談があったとは思わなかった。アイレットにはないと思い込んでいたのかもしれないが、客観的見ればアイレットとアデリーナとなれば、アイレットだろう。
「先方に納得して貰ってなかったことになったのだが、アデリーナは自分への縁談があると思っていた時期と重なる。何か誤解をしたのだと思うが、全く関係のない家を言い出して、侍女にも話を聞いたが、特に親しくしていた相手もおらず、その後も紹介がないのにも関わらずだ」
「それは…」「焦っているのは知っていましたが」
気の強いアデリーナがそんな年若い令嬢のような思い込みをしていたのかと、兄たちは恥ずかしくなった。
895
あなたにおすすめの小説
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
婚約解消したら後悔しました
せいめ
恋愛
別に好きな人ができた私は、幼い頃からの婚約者と婚約解消した。
婚約解消したことで、ずっと後悔し続ける令息の話。
ご都合主義です。ゆるい設定です。
誤字脱字お許しください。
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
あなただけが私を信じてくれたから
樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。
一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。
しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。
処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
恩知らずの婚約破棄とその顛末
みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。
それも、婚約披露宴の前日に。
さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという!
家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが……
好奇にさらされる彼女を助けた人は。
前後編+おまけ、執筆済みです。
【続編開始しました】
執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。
矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる