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処刑
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「驚かせてすみません。処刑されたことはご存知ですか」
「ええ」
「クーデターで唯一生け捕りとなったお嬢様が、公開処刑をするように求められていたのですが、使用人の方に止められて、牢で私が処刑をしました」
使用人が止めた?確かにあの時、使用人が証言してくれると言っていたなと思い出した。彼らは生き残って、私をいつものように可哀想だと思ったのだろう。
「なぜ公開処刑にしなかったのですか」
「たった13歳でした、両親の罪にも何ら関わっていない。関わりようもない。ならばせめて、人前ではない場で処刑すべきだとなりました」
「それは息子の方もではありませんか」
「彼は…抵抗したのです。お嬢様は放心してらして、抵抗しませんでした」
「だから殺したのですか」
「そのようです。私たちもクーデターを抑えようとしておりました。私が援軍を呼んで着いた頃には、ご子息は既に殺されておりました」
知っている、誰よりも。クーデターと言っても、最初は両親がパーティーをしていたため、その雑音だと思っていた。だが彼の部屋にいた私は誰かが近付く物音で、隠れるように言われてバスルームにいたのだ。
そしてあの惨劇が起きた、彼に抵抗する力などあまりなかったはずなのに、何か叫んでいる声は聞こえていたが、聞き取れなかった。立ち去る音がして、出た時にはもう彼は死んでいた。弱った身体に無数の傷があった。
こんなところにいなければ、こんな家に引き取られなければとずっと思っていた。そう、彼は私とは違って、バートロ伯爵夫妻の実子ではなかった、それなのに彼は殺されてしまった。だから、私も生きていてはならなかったのだ。
「そう…私でも処刑を望むわね」
「私はお嬢様が行かれる教会ではなく、修道院を勧めたのです。生きて償って欲しいと、ですが火種を残すのはよくないとおっしゃられました」
「そのお嬢様は生きていたかもしれないのね」
「はい…関わっていないことを訴えて、納得してもらうつもりでした。ですが、納得して貰えたかは今となっては分かりません」
「…そうなの?」
この人生は生きなかった償いかと思っていたが、そうではなかったのか。いや、でもそれは結果論であって、償おうとしなかったのは事実だ。
「はい、調査員は大半は同意してくれましたが、本人が望んだこともあり、処刑となりました。その後、クーデターの首謀者たちにご遺体を見せると、死んでいなかったら、どこまででも追いかけてでも殺すと言っていましたから。彼は子どもを連れ去られた親でした…彼は妻を失い、子を失い、もう何も残っていなかったのです。首謀者はそのような者が多かったのです」
「そうでしたか…」
恨まれて当然の相手だろう、関係ないから生かして欲しいなどと、許せるはずはない。根絶やしにしてやると思うだろう。
「彼らも処刑をなりましたが、そのつもりでやっていると」
「それほどまでに恨まれていたのですね」
「はい…バートロ伯爵が子を奪ったわけではありませんが、誰かにぶつけなくては生きていけなかったのでしょう。奪われた怒りは相当なものだったと思います」
「案内ありがとう、もういいわ」
「いえ、お役に立てたのなら光栄です」
戻ったアイレットは、最後の試験でも1位を守り切り、卒業した。最後だけはパルシエに引っ張って連れて行かれて、初めて自分の試験結果を見た。
「ねっ、凄いでしょう?って私が言う台詞ではないのだけど」
「こんなところに貼ってあったのですね」
「そこ!?」
周りはついにご本人登場と言わんばかりに、人だかりがアイレットとパルシエの周りだけいなくなった。
そして、アイレットは卒業式の翌日には、両親ときょうだい、使用人にお世話になりましたと頭を下げて、旅立っていった。
「ええ」
「クーデターで唯一生け捕りとなったお嬢様が、公開処刑をするように求められていたのですが、使用人の方に止められて、牢で私が処刑をしました」
使用人が止めた?確かにあの時、使用人が証言してくれると言っていたなと思い出した。彼らは生き残って、私をいつものように可哀想だと思ったのだろう。
「なぜ公開処刑にしなかったのですか」
「たった13歳でした、両親の罪にも何ら関わっていない。関わりようもない。ならばせめて、人前ではない場で処刑すべきだとなりました」
「それは息子の方もではありませんか」
「彼は…抵抗したのです。お嬢様は放心してらして、抵抗しませんでした」
「だから殺したのですか」
「そのようです。私たちもクーデターを抑えようとしておりました。私が援軍を呼んで着いた頃には、ご子息は既に殺されておりました」
知っている、誰よりも。クーデターと言っても、最初は両親がパーティーをしていたため、その雑音だと思っていた。だが彼の部屋にいた私は誰かが近付く物音で、隠れるように言われてバスルームにいたのだ。
そしてあの惨劇が起きた、彼に抵抗する力などあまりなかったはずなのに、何か叫んでいる声は聞こえていたが、聞き取れなかった。立ち去る音がして、出た時にはもう彼は死んでいた。弱った身体に無数の傷があった。
こんなところにいなければ、こんな家に引き取られなければとずっと思っていた。そう、彼は私とは違って、バートロ伯爵夫妻の実子ではなかった、それなのに彼は殺されてしまった。だから、私も生きていてはならなかったのだ。
「そう…私でも処刑を望むわね」
「私はお嬢様が行かれる教会ではなく、修道院を勧めたのです。生きて償って欲しいと、ですが火種を残すのはよくないとおっしゃられました」
「そのお嬢様は生きていたかもしれないのね」
「はい…関わっていないことを訴えて、納得してもらうつもりでした。ですが、納得して貰えたかは今となっては分かりません」
「…そうなの?」
この人生は生きなかった償いかと思っていたが、そうではなかったのか。いや、でもそれは結果論であって、償おうとしなかったのは事実だ。
「はい、調査員は大半は同意してくれましたが、本人が望んだこともあり、処刑となりました。その後、クーデターの首謀者たちにご遺体を見せると、死んでいなかったら、どこまででも追いかけてでも殺すと言っていましたから。彼は子どもを連れ去られた親でした…彼は妻を失い、子を失い、もう何も残っていなかったのです。首謀者はそのような者が多かったのです」
「そうでしたか…」
恨まれて当然の相手だろう、関係ないから生かして欲しいなどと、許せるはずはない。根絶やしにしてやると思うだろう。
「彼らも処刑をなりましたが、そのつもりでやっていると」
「それほどまでに恨まれていたのですね」
「はい…バートロ伯爵が子を奪ったわけではありませんが、誰かにぶつけなくては生きていけなかったのでしょう。奪われた怒りは相当なものだったと思います」
「案内ありがとう、もういいわ」
「いえ、お役に立てたのなら光栄です」
戻ったアイレットは、最後の試験でも1位を守り切り、卒業した。最後だけはパルシエに引っ張って連れて行かれて、初めて自分の試験結果を見た。
「ねっ、凄いでしょう?って私が言う台詞ではないのだけど」
「こんなところに貼ってあったのですね」
「そこ!?」
周りはついにご本人登場と言わんばかりに、人だかりがアイレットとパルシエの周りだけいなくなった。
そして、アイレットは卒業式の翌日には、両親ときょうだい、使用人にお世話になりましたと頭を下げて、旅立っていった。
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