【完結】会いたいあなたはどこにもいない

野村にれ

文字の大きさ
37 / 67

忠告

しおりを挟む
「それとフォリッチ公爵家のトレース殿とパルシエ嬢がアイレットを送ってくださったことがあった。そのことを少し話している時にアデリーナに聞かれて、アイレットを酷く責め立てたのだ。終いには私を褒めてくれたのかとまで言っていた、その後はまたアイレットを睨み付けていた」

 何度かそのようなことがあったとフィーストは思い出していた。起伏が激しい質ではあったが、イライラしていることが格段に増えた。

「アデリーナが望むような縁談はないと思った方がいいかもしれないと、ライラとも話してもいる」

 ライラとは4人の母親で、ディオンの妻である。ディオンとライラはとても真面目で、優等生であった。ゆえに今までも誠実に向き合って来た。

 だがハービスは離縁、フィーストは再教育、アデリーナは縁談がない状態である。末っ子だけが自分の道を歩み出し、どうにかしなければならないと話している。

「フォリッチ公爵家との縁談を根に持っているのですね」
「そうだろうな、自らのせいだというのに、全てアイレットのせいだとして、今回の件でフォリッチ公爵には大変世話になったのだ。二人のどちらでもいい、空いている方がパーティーなどではアデリーナを気に掛けてくれ」
「それは構いませんが、結婚は…」
「縁者に取らせようと思っていたが、それも止めた方がいいと…」
「ああ、そうですね…」「ああ…」

 ソック伯爵は祖母の姉妹が嫁いだ先の義妹の夫の家系で、血縁者とは言えない間柄ではあったが、縁者に取らせたことで、ハービスは離縁した。最悪、リンダースが未婚であるため、爵位はないが、邸でも与えて娶って貰おうかとも考えたこともあったが、それも難しいだろう。

「アデリーナにも信用の置ける相手を探してはいる。フィーストはルミナ嬢次第だが、ハービスも再婚をいずれ考えなければならない」
「…はい」「頑張ります」
「父によく言われていた。『目の前の悪を見逃すことも罪だが、罰して終わりではない。そして罰することだけが正義ではない。一方しか見ていないと、いつか必ず過ちを犯す』と…私ももう一度気を引き締めなくてはならない」
「私も聞いたことがあります…」「全てを疑えというのでしょうか」
「そうじゃない、私たちは悪だけを憎み過ぎていたのかもしれない…その中に紛い物があるとも気付かずに、情けないことだ。お前たちも見る目を養うように」
「はい、精進します」「はい」

 その後、アデリーナもひとりだけ呼び出し、話をすることにした。アデリーナもアイレットを見送りはしたが、旅立って、清々したと口走っていた。

「今回の事件にはマスタール侯爵家としても責任がある、本来なら辞するのが当然の立場だった」
「ですが、お父様は悪くありません」
「いや、監査担当としては不徳の致すところだ。本当に情けない。良くも悪くも褒められるようなことは否定するように」
「違います!お父様は褒められるべきです」
「そうではない。どうして気付かなかったのかと言われるべきなのだ。分からないか?」

 皆は私が指揮を執ったことで、口に出して言う者はいなかったが、どうして気付かなかったのかと思われていることは肌で感じている。

「お父様はお父様のすべきことをやっただけではないですか」
「私が気付けば防ぐことが出来たのに、か?」
「それは…」
「それが本来の世間の目だ、肝に銘じなさい。驕るようなことは許されない、分かったな?」
「…はい」

 アデリーナの素直さは良いところでもあるが、自身が信じたこと、自身が信じた人を信用し過ぎるところがある。苛烈さも合わさって、いい作用はしていない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

婚約解消したら後悔しました

せいめ
恋愛
 別に好きな人ができた私は、幼い頃からの婚約者と婚約解消した。  婚約解消したことで、ずっと後悔し続ける令息の話。  ご都合主義です。ゆるい設定です。  誤字脱字お許しください。  

婚約破棄の前日に

豆狸
恋愛
──お帰りください、側近の操り人形殿下。 私はもう、お人形遊びは卒業したのです。

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

恩知らずの婚約破棄とその顛末

みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。 それも、婚約披露宴の前日に。 さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという! 家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが…… 好奇にさらされる彼女を助けた人は。 前後編+おまけ、執筆済みです。 【続編開始しました】 執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。 矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

あなただけが私を信じてくれたから

樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。 一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。 しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。 処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。

処理中です...