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「それとフォリッチ公爵家のトレース殿とパルシエ嬢がアイレットを送ってくださったことがあった。そのことを少し話している時にアデリーナに聞かれて、アイレットを酷く責め立てたのだ。終いには私を褒めてくれたのかとまで言っていた、その後はまたアイレットを睨み付けていた」
何度かそのようなことがあったとフィーストは思い出していた。起伏が激しい質ではあったが、イライラしていることが格段に増えた。
「アデリーナが望むような縁談はないと思った方がいいかもしれないと、ライラとも話してもいる」
ライラとは4人の母親で、ディオンの妻である。ディオンとライラはとても真面目で、優等生であった。ゆえに今までも誠実に向き合って来た。
だがハービスは離縁、フィーストは再教育、アデリーナは縁談がない状態である。末っ子だけが自分の道を歩み出し、どうにかしなければならないと話している。
「フォリッチ公爵家との縁談を根に持っているのですね」
「そうだろうな、自らのせいだというのに、全てアイレットのせいだとして、今回の件でフォリッチ公爵には大変世話になったのだ。二人のどちらでもいい、空いている方がパーティーなどではアデリーナを気に掛けてくれ」
「それは構いませんが、結婚は…」
「縁者に取らせようと思っていたが、それも止めた方がいいと…」
「ああ、そうですね…」「ああ…」
ソック伯爵は祖母の姉妹が嫁いだ先の義妹の夫の家系で、血縁者とは言えない間柄ではあったが、縁者に取らせたことで、ハービスは離縁した。最悪、リンダースが未婚であるため、爵位はないが、邸でも与えて娶って貰おうかとも考えたこともあったが、それも難しいだろう。
「アデリーナにも信用の置ける相手を探してはいる。フィーストはルミナ嬢次第だが、ハービスも再婚をいずれ考えなければならない」
「…はい」「頑張ります」
「父によく言われていた。『目の前の悪を見逃すことも罪だが、罰して終わりではない。そして罰することだけが正義ではない。一方しか見ていないと、いつか必ず過ちを犯す』と…私ももう一度気を引き締めなくてはならない」
「私も聞いたことがあります…」「全てを疑えというのでしょうか」
「そうじゃない、私たちは悪だけを憎み過ぎていたのかもしれない…その中に紛い物があるとも気付かずに、情けないことだ。お前たちも見る目を養うように」
「はい、精進します」「はい」
その後、アデリーナもひとりだけ呼び出し、話をすることにした。アデリーナもアイレットを見送りはしたが、旅立って、清々したと口走っていた。
「今回の事件にはマスタール侯爵家としても責任がある、本来なら辞するのが当然の立場だった」
「ですが、お父様は悪くありません」
「いや、監査担当としては不徳の致すところだ。本当に情けない。良くも悪くも褒められるようなことは否定するように」
「違います!お父様は褒められるべきです」
「そうではない。どうして気付かなかったのかと言われるべきなのだ。分からないか?」
皆は私が指揮を執ったことで、口に出して言う者はいなかったが、どうして気付かなかったのかと思われていることは肌で感じている。
「お父様はお父様のすべきことをやっただけではないですか」
「私が気付けば防ぐことが出来たのに、か?」
「それは…」
「それが本来の世間の目だ、肝に銘じなさい。驕るようなことは許されない、分かったな?」
「…はい」
アデリーナの素直さは良いところでもあるが、自身が信じたこと、自身が信じた人を信用し過ぎるところがある。苛烈さも合わさって、いい作用はしていない。
何度かそのようなことがあったとフィーストは思い出していた。起伏が激しい質ではあったが、イライラしていることが格段に増えた。
「アデリーナが望むような縁談はないと思った方がいいかもしれないと、ライラとも話してもいる」
ライラとは4人の母親で、ディオンの妻である。ディオンとライラはとても真面目で、優等生であった。ゆえに今までも誠実に向き合って来た。
だがハービスは離縁、フィーストは再教育、アデリーナは縁談がない状態である。末っ子だけが自分の道を歩み出し、どうにかしなければならないと話している。
「フォリッチ公爵家との縁談を根に持っているのですね」
「そうだろうな、自らのせいだというのに、全てアイレットのせいだとして、今回の件でフォリッチ公爵には大変世話になったのだ。二人のどちらでもいい、空いている方がパーティーなどではアデリーナを気に掛けてくれ」
「それは構いませんが、結婚は…」
「縁者に取らせようと思っていたが、それも止めた方がいいと…」
「ああ、そうですね…」「ああ…」
ソック伯爵は祖母の姉妹が嫁いだ先の義妹の夫の家系で、血縁者とは言えない間柄ではあったが、縁者に取らせたことで、ハービスは離縁した。最悪、リンダースが未婚であるため、爵位はないが、邸でも与えて娶って貰おうかとも考えたこともあったが、それも難しいだろう。
「アデリーナにも信用の置ける相手を探してはいる。フィーストはルミナ嬢次第だが、ハービスも再婚をいずれ考えなければならない」
「…はい」「頑張ります」
「父によく言われていた。『目の前の悪を見逃すことも罪だが、罰して終わりではない。そして罰することだけが正義ではない。一方しか見ていないと、いつか必ず過ちを犯す』と…私ももう一度気を引き締めなくてはならない」
「私も聞いたことがあります…」「全てを疑えというのでしょうか」
「そうじゃない、私たちは悪だけを憎み過ぎていたのかもしれない…その中に紛い物があるとも気付かずに、情けないことだ。お前たちも見る目を養うように」
「はい、精進します」「はい」
その後、アデリーナもひとりだけ呼び出し、話をすることにした。アデリーナもアイレットを見送りはしたが、旅立って、清々したと口走っていた。
「今回の事件にはマスタール侯爵家としても責任がある、本来なら辞するのが当然の立場だった」
「ですが、お父様は悪くありません」
「いや、監査担当としては不徳の致すところだ。本当に情けない。良くも悪くも褒められるようなことは否定するように」
「違います!お父様は褒められるべきです」
「そうではない。どうして気付かなかったのかと言われるべきなのだ。分からないか?」
皆は私が指揮を執ったことで、口に出して言う者はいなかったが、どうして気付かなかったのかと思われていることは肌で感じている。
「お父様はお父様のすべきことをやっただけではないですか」
「私が気付けば防ぐことが出来たのに、か?」
「それは…」
「それが本来の世間の目だ、肝に銘じなさい。驕るようなことは許されない、分かったな?」
「…はい」
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