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エクラオース王国3
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護衛たちは言葉が分からず、内容までは分からないと聞いていたために、詳しくはベールスに話を聞くしかないが、チェチリーが騒いだことになったことが原因だと思うことは聞かされていた。
「君が騒いだから、注目を集めたんだろう?何をしているんだ」
「私は危険を知らせただけよ!当然じゃない!」
「はあ、とりあえず、ピュアジュエルを連れ出すのはやめてくれ。分かったな?」
「酷いわっ!」
チェチリーは思ったより心配してもらえなくて、不満だった。
ポシッジュはピュアジュエルなら、何か分かっているかもしれないと、話を聞きに行こうと思っていたためにチェチリーを置き去りにして、部屋に向かった。
「何があったんだ?チェチリーには外出しないように言ってあったんだ」
「えっ、そんなこと知らないわ」
「黙っていたのだろうな」
「だから、侍女がいなかったってことね」
「わざと連れて行かなかったんだろうな」
いつものように侍女を連れて行っていれば、あんなことにならなかったのにと、ピュアジュエルはチェチリーを恨んだ。
「で、何があった?分かる範囲でいい」
「身なりのちゃんとした方に、紳士的に共通語で話し掛けられたの。でも、私はまだ挨拶とありがとうくらいしか、聞き取れなくて……」
ピュアジュエルは目を伏せており、情けなく思ったのだろうと感じた。
「そうか」
「ママは何を言っているか分からなくて、大騒ぎし始めて、止めたんだけど、そこへベールス様が来られて、話をしてくださったの」
「そうか」
よりにもよって、ベールスがやって来たことは運が悪かっただろう。
「ママはナンパだなんて言っていたけど、それは絶対違うと思う。ママから一定の距離を取っていたし、貴族のような人だったわ」
確かにナンパだと言っていたが、護衛たちからも話を聞いていたポシッジュもさすがに信じることはできなかった。
「私、恥ずかしかったわ……ママが騒いだことも、言葉が分からなかったことも」
「そうか」
「勉強するから、私は出掛けなくていいから」
ポシッジュは今さらながら、チェチリーではなく、ピュアジュエルに話しておけば良かった。だが、目の当たりにしたことで、やる気になったのならすべてが悪いことではなかったように思うことにした。
「励みなさい」
「うん、頑張るわ」
チェチリーは気の強い質ではない、だがイレギュラーなことが苦手で、口籠ってしまうか、パニックになってしまう。今回はそのパニックになってしまったのだろう。
翌日、ベールスにお礼とともに話を聞こうと考えていたが、イエフォールにまで話が届いていた。
「夫人が騒ぎを起こしたようだな」
「えっ、どうしてご存知なのですか」
「夫人に声を掛けていたのは、アロワ王国の侯爵家の方だよ」
「アロワ王国、の……侯爵家」
いくら大公家でも、アロワ王国の侯爵家など、失礼があってはならない存在で、冷や汗が流れ始めた。
「そうだよ、建築に詳しい方でね。我が国にもご興味があるとのことで、いらしていたんだよ。だが、ロア語、共通語がなかなか通じなかったそうで、身なりのいい夫人に声を掛けたが、夫人は共通語が分からない」
ポシッジュは、ようやく声を掛けた理由が分かった。
ナンパなわけはないと思っていたが、他国の貴族の方が困っていたのなら、大公夫人として手助けをする場面だっただろう。
「ベールス様が助けてくれたと伺いました」
「ああ、たまたま通りかかって騒ぎが起きているようだったから、様子を伺ったが、夫人だと分かって慌てたらしい」
「はい……」
「そこで、夫人が大騒ぎをしていたそうだ……はあ」
「申し訳ございません」
イエフォールは心底呆れたという顔に、ポシッジュも謝るしかない状況に、静かに頭を下げた。
「君が騒いだから、注目を集めたんだろう?何をしているんだ」
「私は危険を知らせただけよ!当然じゃない!」
「はあ、とりあえず、ピュアジュエルを連れ出すのはやめてくれ。分かったな?」
「酷いわっ!」
チェチリーは思ったより心配してもらえなくて、不満だった。
ポシッジュはピュアジュエルなら、何か分かっているかもしれないと、話を聞きに行こうと思っていたためにチェチリーを置き去りにして、部屋に向かった。
「何があったんだ?チェチリーには外出しないように言ってあったんだ」
「えっ、そんなこと知らないわ」
「黙っていたのだろうな」
「だから、侍女がいなかったってことね」
「わざと連れて行かなかったんだろうな」
いつものように侍女を連れて行っていれば、あんなことにならなかったのにと、ピュアジュエルはチェチリーを恨んだ。
「で、何があった?分かる範囲でいい」
「身なりのちゃんとした方に、紳士的に共通語で話し掛けられたの。でも、私はまだ挨拶とありがとうくらいしか、聞き取れなくて……」
ピュアジュエルは目を伏せており、情けなく思ったのだろうと感じた。
「そうか」
「ママは何を言っているか分からなくて、大騒ぎし始めて、止めたんだけど、そこへベールス様が来られて、話をしてくださったの」
「そうか」
よりにもよって、ベールスがやって来たことは運が悪かっただろう。
「ママはナンパだなんて言っていたけど、それは絶対違うと思う。ママから一定の距離を取っていたし、貴族のような人だったわ」
確かにナンパだと言っていたが、護衛たちからも話を聞いていたポシッジュもさすがに信じることはできなかった。
「私、恥ずかしかったわ……ママが騒いだことも、言葉が分からなかったことも」
「そうか」
「勉強するから、私は出掛けなくていいから」
ポシッジュは今さらながら、チェチリーではなく、ピュアジュエルに話しておけば良かった。だが、目の当たりにしたことで、やる気になったのならすべてが悪いことではなかったように思うことにした。
「励みなさい」
「うん、頑張るわ」
チェチリーは気の強い質ではない、だがイレギュラーなことが苦手で、口籠ってしまうか、パニックになってしまう。今回はそのパニックになってしまったのだろう。
翌日、ベールスにお礼とともに話を聞こうと考えていたが、イエフォールにまで話が届いていた。
「夫人が騒ぎを起こしたようだな」
「えっ、どうしてご存知なのですか」
「夫人に声を掛けていたのは、アロワ王国の侯爵家の方だよ」
「アロワ王国、の……侯爵家」
いくら大公家でも、アロワ王国の侯爵家など、失礼があってはならない存在で、冷や汗が流れ始めた。
「そうだよ、建築に詳しい方でね。我が国にもご興味があるとのことで、いらしていたんだよ。だが、ロア語、共通語がなかなか通じなかったそうで、身なりのいい夫人に声を掛けたが、夫人は共通語が分からない」
ポシッジュは、ようやく声を掛けた理由が分かった。
ナンパなわけはないと思っていたが、他国の貴族の方が困っていたのなら、大公夫人として手助けをする場面だっただろう。
「ベールス様が助けてくれたと伺いました」
「ああ、たまたま通りかかって騒ぎが起きているようだったから、様子を伺ったが、夫人だと分かって慌てたらしい」
「はい……」
「そこで、夫人が大騒ぎをしていたそうだ……はあ」
「申し訳ございません」
イエフォールは心底呆れたという顔に、ポシッジュも謝るしかない状況に、静かに頭を下げた。
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