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狩猟3
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「で、言葉が通じないと迷惑だということが、身を持って分かったか?」
「ですが、王妃陛下とは通じるではありませんか」
「お前は大公夫人だろう?と、何べん言わせるんだ?」
乗り気ではないとしても、縁談を持ち込むのなら、本人もだが、両親がどういった人間か見られるに決まっているだろう。
「に、苦手なこともあるんです。完璧な人間なんていないです」
「縁談で親も見るだろう?お前は私を見て、いびり倒しそうだと思うだろう?」
「っ」
いびり倒すことに絶大なる自信を持ち、向いていると自負しているソアリスは、当然のように問い掛けている。
「王家、大公家、貴族、家族も関わってくるのだから、親も見るさ。それで、お前は大公夫人だろうがと言ってんだよ」
「で、でも、意地悪する人はいません」
「いても気付かないだけだろう?今も、私が何を言ったか、ぜーんぶ、悪口だったらどうする?」
「っ」
ソアリスならずっと悪い口でも、微笑ましい会話のように言い続けるだろうと、思ったがやられた方が疲弊が酷いことになるだろう。
「食う物に困っているわけでもないのに、貧弱な体、飯食ってんのか?とか、乳房も大きくないから着れるドレスだなとか、歯に口紅付いてねぇかとか」
チェチリーは体やドレスも気になったが、現在進行形の口元をハッと押さえ、ソアリスはにやりと笑った。
「ほら、気付けないだろう?」
大公夫人に目の前で歯に口紅付いていると言って来る者は限られるが、陰で言われるならいいが、共通語が分からないと知って、言われる可能性はある。
「これがお前が学ぶことを疎かにした結果だよ!分かり易いだろう?鼻毛が出ても、知らない言葉でコソコソ言われて、陰で『鼻毛夫人』と呼ばれている可能性すらある。恥ずかしくねぇか?」
「ですから、そんなことしたら嫌がらせですよ!体だって、痩せているのだから、そんな言い方をしなくても」
「私だって初対面の不愉快な思いをしていない相手には言わないさ」
遠回しに不愉快な者には、言うと言っているようなものである。だが、実際にソアリスは実行している。
「痩せている方が美しいとされているのです」
「自分は美しいと言っているのか?」
キャロラインはソアリスの琴線に触れてしまったと、分かってしまった。
「そ、そうではありません」
「違うのか?」
「エクラオース王国では、女性は標準体重よりも10キロは少ない方が理想とされているんです」
ソアリスはフェジェに視線を移すと、ふくよかとまではいかないが、健康的な体形をしている。
「筋肉を付けようとは思わないのか?」
「思いません、筋肉は男性だけです」
「突然のことで、助けられなかったらどうしますの?」
「っえ、そんなことは起こりません」
「まあ、危機感がないということは、やはり自分に自信がありますのね」
「いいえ、そんなことは……褒められることはありますけど」
再び、良いように受け取ったチェチリーは、照れながら答えた。
「痩せている、食べても太らないのですね、羨ましいわとか?」
「ええ、そうですわね」
チェチリーはどうして分かったのという顔をしたが、アンセムは天を仰ぎたくなった。その台詞は、痩せていた頃のララシャの最大の誉め言葉である。
ララシャも、チェチリーもと言っていいと思うが、見た目が悪いわけではないが、周りにはもっと美しい者はいるために、その言葉を使うのである。
「それで、その体形を維持しているのね」
「そうなんです。ピュアジュエルも、私を理想にしてしまったので、か弱く見えてしまったのだと思います」
アンセムもキャロラインも、これはソアリスの嫌う発言だと溜息をつきたくなった。ポシッジュも自己愛が激しかったが、チェチリーも自分は特別だと思っていることが、明らかであった。
「へえ」
微笑んではいるが、地を這うような低い声であった。
「ですが、王妃陛下とは通じるではありませんか」
「お前は大公夫人だろう?と、何べん言わせるんだ?」
乗り気ではないとしても、縁談を持ち込むのなら、本人もだが、両親がどういった人間か見られるに決まっているだろう。
「に、苦手なこともあるんです。完璧な人間なんていないです」
「縁談で親も見るだろう?お前は私を見て、いびり倒しそうだと思うだろう?」
「っ」
いびり倒すことに絶大なる自信を持ち、向いていると自負しているソアリスは、当然のように問い掛けている。
「王家、大公家、貴族、家族も関わってくるのだから、親も見るさ。それで、お前は大公夫人だろうがと言ってんだよ」
「で、でも、意地悪する人はいません」
「いても気付かないだけだろう?今も、私が何を言ったか、ぜーんぶ、悪口だったらどうする?」
「っ」
ソアリスならずっと悪い口でも、微笑ましい会話のように言い続けるだろうと、思ったがやられた方が疲弊が酷いことになるだろう。
「食う物に困っているわけでもないのに、貧弱な体、飯食ってんのか?とか、乳房も大きくないから着れるドレスだなとか、歯に口紅付いてねぇかとか」
チェチリーは体やドレスも気になったが、現在進行形の口元をハッと押さえ、ソアリスはにやりと笑った。
「ほら、気付けないだろう?」
大公夫人に目の前で歯に口紅付いていると言って来る者は限られるが、陰で言われるならいいが、共通語が分からないと知って、言われる可能性はある。
「これがお前が学ぶことを疎かにした結果だよ!分かり易いだろう?鼻毛が出ても、知らない言葉でコソコソ言われて、陰で『鼻毛夫人』と呼ばれている可能性すらある。恥ずかしくねぇか?」
「ですから、そんなことしたら嫌がらせですよ!体だって、痩せているのだから、そんな言い方をしなくても」
「私だって初対面の不愉快な思いをしていない相手には言わないさ」
遠回しに不愉快な者には、言うと言っているようなものである。だが、実際にソアリスは実行している。
「痩せている方が美しいとされているのです」
「自分は美しいと言っているのか?」
キャロラインはソアリスの琴線に触れてしまったと、分かってしまった。
「そ、そうではありません」
「違うのか?」
「エクラオース王国では、女性は標準体重よりも10キロは少ない方が理想とされているんです」
ソアリスはフェジェに視線を移すと、ふくよかとまではいかないが、健康的な体形をしている。
「筋肉を付けようとは思わないのか?」
「思いません、筋肉は男性だけです」
「突然のことで、助けられなかったらどうしますの?」
「っえ、そんなことは起こりません」
「まあ、危機感がないということは、やはり自分に自信がありますのね」
「いいえ、そんなことは……褒められることはありますけど」
再び、良いように受け取ったチェチリーは、照れながら答えた。
「痩せている、食べても太らないのですね、羨ましいわとか?」
「ええ、そうですわね」
チェチリーはどうして分かったのという顔をしたが、アンセムは天を仰ぎたくなった。その台詞は、痩せていた頃のララシャの最大の誉め言葉である。
ララシャも、チェチリーもと言っていいと思うが、見た目が悪いわけではないが、周りにはもっと美しい者はいるために、その言葉を使うのである。
「それで、その体形を維持しているのね」
「そうなんです。ピュアジュエルも、私を理想にしてしまったので、か弱く見えてしまったのだと思います」
アンセムもキャロラインも、これはソアリスの嫌う発言だと溜息をつきたくなった。ポシッジュも自己愛が激しかったが、チェチリーも自分は特別だと思っていることが、明らかであった。
「へえ」
微笑んではいるが、地を這うような低い声であった。
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