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狩猟9
『あなたのことは、巻き込む気はないから、大公にも国王にも、きちんと説明をしておく。怖がらず、正々堂々とお帰りなさい』
『ありがとうございます』
『何かあったら、私に言いなさい。理不尽な目に遭ってもらっては私の心が痛む』
『ありがとうございます。ですが、どうしてそこまで言ってくださるのですか?』
オレンジは前回、クロンデール王国には来ておらず、今日初めて会った、ただ共通語が分かる侍女というだけしか、ソアリスは認識していないはずなのに、ここまでしてくれるのか分からなかった。
『懐柔する気だとでも思った?そんなものは必要ないわ、だって私王妃だもの』
『は、はい……』
正直に今日あったことは聞かれれば話すつもりだったが、味方につける気なのかと、少し考えてしまっていた。
だが、ソアリスの今日の姿を見る限り、そのような小賢しいことをするとも思えなかった。
『ソアリス、その言い方は』
アンセムもオレンジはまともだと判断したことは分かっていたが、さすがにソアリスの王妃を振りかざすのは良くないのではないかと、口を挟んだ。
『私もいつも侍女に支えてもらっているという点は、同じなの。一緒に働いているのに、評価されないのはおかしいし、それなのに責任を追及などおかしいだろ?侍女たちが理不尽な目に遭うことは許せない。あなたは私の立場では、口を挟むことはできなかったとだけ伝えなさい。身分は上手く使うのが良いのよ』
そう言って、ソアリスは含みを持った笑みを浮かべた。
『はい、そうさせていただきます』
『それが事実なんだから、堂々としていなさい。ちなみに、侍女になって長いの?』
『夫人が結婚されてから、前当主様に頼まれて、侍女になりました。夫人は努力などしておりません、王妃陛下が言われたことが概ね合っていると私は思います』
『あの手の者は、思考がよく似ておるのだよ。王妃などをしているとな、色んな者を見るからな』
オレンジはこのようなことになって、心から申し訳ないと思っていたが、王妃ともなれば、場数が違うのだろうと納得した。
『まだ分かりませんが、ピュアジュエルお嬢様は変われるかもしれません。勉強しているのは事実です。今回の旅行も行かないと決められたのは、ご本人です』
『そうか』
『こちらでも恥をかいたと聞きましたが、エクラオース王国でもありまして』
オレンジは前当主から、クロンデール王国でのことは聞いていた。
ゆえにピュアジュエルのことはフォローのために、詳細を話さなければ大丈夫だろうと伝えることにした。
『共通語を学ぶなら、オレンジが公女と話す時は、共通語で話すといいのではないか?17歳では毎日行う方が良いだろう?』
『はい』
『あの夫人だけが分からない会話を、大公家で繰り広げてやればいい。とても楽しそうじゃないか』
『はい、私も正直、そう思います』
その話は当然だが、チェチリーとフェジェには分からない。付いて来た護衛たちの中にも、共通語ができる者はいなかった。
キャロラインはその姿を見て、ソアリスの魅力に落ちたなと感じていた。
そこへ、また可愛らしい声が聞こえた。
『オレンジってなまえななの?すてき!』
『ありがとうございます。王妃陛下にも褒めていただき、王女殿下にまで、嬉しいです。今日ほど自分の名前を誇らしく思ったことはありません』
『大袈裟ね』
『とーってもかわいいとおもうわ』
レモンと名付けようとしたソアリスと、レモンと名付けられるところだったケイトは、オレンジを大絶賛であった。
その姿にレモンでも良かったのかと、アンセムは考えてしまっていた。
そして、フェジェがチェチリーを引っ張るような形で、無理矢理に帰っていき、帰り道でも言い合いをしたり、オレンジに何を話していたのか聞かれたが、謝罪をしていたとだけしか話さなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただきありがとうございます。
本日より初めての日本を舞台にした
新作「クリスマス・ナンバー・ナイト」を投稿しております。
よろしければ、よろしくお願いいたします。
前にも書いたと思いますが、
こちらの作品ももう終わっている予定だったのですが、
思いの外、長くなっております。
目途が立ちましたら、またお知らせいたします。
申し訳ございません!
『ありがとうございます』
『何かあったら、私に言いなさい。理不尽な目に遭ってもらっては私の心が痛む』
『ありがとうございます。ですが、どうしてそこまで言ってくださるのですか?』
オレンジは前回、クロンデール王国には来ておらず、今日初めて会った、ただ共通語が分かる侍女というだけしか、ソアリスは認識していないはずなのに、ここまでしてくれるのか分からなかった。
『懐柔する気だとでも思った?そんなものは必要ないわ、だって私王妃だもの』
『は、はい……』
正直に今日あったことは聞かれれば話すつもりだったが、味方につける気なのかと、少し考えてしまっていた。
だが、ソアリスの今日の姿を見る限り、そのような小賢しいことをするとも思えなかった。
『ソアリス、その言い方は』
アンセムもオレンジはまともだと判断したことは分かっていたが、さすがにソアリスの王妃を振りかざすのは良くないのではないかと、口を挟んだ。
『私もいつも侍女に支えてもらっているという点は、同じなの。一緒に働いているのに、評価されないのはおかしいし、それなのに責任を追及などおかしいだろ?侍女たちが理不尽な目に遭うことは許せない。あなたは私の立場では、口を挟むことはできなかったとだけ伝えなさい。身分は上手く使うのが良いのよ』
そう言って、ソアリスは含みを持った笑みを浮かべた。
『はい、そうさせていただきます』
『それが事実なんだから、堂々としていなさい。ちなみに、侍女になって長いの?』
『夫人が結婚されてから、前当主様に頼まれて、侍女になりました。夫人は努力などしておりません、王妃陛下が言われたことが概ね合っていると私は思います』
『あの手の者は、思考がよく似ておるのだよ。王妃などをしているとな、色んな者を見るからな』
オレンジはこのようなことになって、心から申し訳ないと思っていたが、王妃ともなれば、場数が違うのだろうと納得した。
『まだ分かりませんが、ピュアジュエルお嬢様は変われるかもしれません。勉強しているのは事実です。今回の旅行も行かないと決められたのは、ご本人です』
『そうか』
『こちらでも恥をかいたと聞きましたが、エクラオース王国でもありまして』
オレンジは前当主から、クロンデール王国でのことは聞いていた。
ゆえにピュアジュエルのことはフォローのために、詳細を話さなければ大丈夫だろうと伝えることにした。
『共通語を学ぶなら、オレンジが公女と話す時は、共通語で話すといいのではないか?17歳では毎日行う方が良いだろう?』
『はい』
『あの夫人だけが分からない会話を、大公家で繰り広げてやればいい。とても楽しそうじゃないか』
『はい、私も正直、そう思います』
その話は当然だが、チェチリーとフェジェには分からない。付いて来た護衛たちの中にも、共通語ができる者はいなかった。
キャロラインはその姿を見て、ソアリスの魅力に落ちたなと感じていた。
そこへ、また可愛らしい声が聞こえた。
『オレンジってなまえななの?すてき!』
『ありがとうございます。王妃陛下にも褒めていただき、王女殿下にまで、嬉しいです。今日ほど自分の名前を誇らしく思ったことはありません』
『大袈裟ね』
『とーってもかわいいとおもうわ』
レモンと名付けようとしたソアリスと、レモンと名付けられるところだったケイトは、オレンジを大絶賛であった。
その姿にレモンでも良かったのかと、アンセムは考えてしまっていた。
そして、フェジェがチェチリーを引っ張るような形で、無理矢理に帰っていき、帰り道でも言い合いをしたり、オレンジに何を話していたのか聞かれたが、謝罪をしていたとだけしか話さなかった。
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本日もお読みいただきありがとうございます。
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前にも書いたと思いますが、
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思いの外、長くなっております。
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