私のバラ色ではない人生

野村にれ

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エリザベータ王妃陛下7

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『セレニティ・ハイズ・アロワコンティでございます』
『丁寧にありがとうございます。ロラン・グレンバレンでございます。そこの国王の父親です』
『テラー・グレンバレンでございます。同じくそこの国王の母親でございます』
『はい、よろしくお願いいたします』

 セレニティは首だけ頭を下げ、恐縮した。テラーもおぼつかない様子に気付かないはずもなく、エリザベータがテラーを見て、頷くだけで伝わった。

『ご無理を申し訳ございません』

 ソアリスはセレニティを連れて、別の席に移り、ロランとテラーも座り、エリザベータと向き合った。

 退位するまでは、友好的な関係を築いてはいたが、クロンデール王国へも公式訪問であったために、私的な訪問は一度もなかった。

『いえ、ソアリスが諾ということでしたら、離宮も部屋は沢山空いておりますから、心配いりませんよ』
『ええ、そうですね。勝算があるわけではないのですけど、上手くいくのです』
『まあ、そんな力も?』
『本人は認めませんけどね』

 ソアリスはセレニティに特に話すことはなく、じっとしており、侍女たちは眠いのだろうなと思ったが、さすがに寝るようなことはしない。

 その後は必要な物などを話し合い、ソアリスはそういったことに疎いために、誰も問うこともない。

 そして、まだ会っていない家族は、夕食の前にエリザベータとセレニティに、挨拶を行った。そこには末っ子の爆食モンスターが潜んでいる。

『クロンデールおうこく、だいよんおうじょ、ケイト・グレンバレンでございます。ろくさい、すきなことはたべることと、あそぶことと、ねることです。よろしくおねがいいたします』

 言葉もカーテシーも完璧ではあったが、王女らしからぬ自己紹介が含まれている。

『ご丁寧にありがとうございます、お母様から色々聞いておりますわ』
『まあ、おかしなことをいっておりませんか?わたしのすきなことはおかあさまのおなじですのよ』
『ふふっ、とっても元気な王女様だと伺っておりますわ』
『はい、げんきだけがとりえです』

 アンセム、ユリウス、マイノスは自己紹介までもソアリスと同じで、取り柄すら同じになっているではないかと思いながらも、否定はできないために見守るしかなかった。カイルスだけはその姿を微笑ましく見つめていた。

 孫であるミオスとエマリーも、ロア語で挨拶を行った。

『ミオス・グレンバレンでございます。よろしくおねがいいたします』
『エマリー・グレンバレンでございます。よろしくおねがいいたします』

 エリザベータは可愛らしいわねと思っていたが、セレニティはぞろぞろ現れる大小の王族に圧倒されて、恐縮していた。

『騒がしくして申し訳ありませんが、一緒に食事をするのが一番いいかと思いまして、大丈夫でしょうか』
『ええ、とても楽しみだわ』

 エリザベータも皆で食事をすることはあるが、全員が集まってということはまずないために、心から楽しみであった。

『セレニティも、うるさくてごめんなさいね』
『いっ、いいえ』
『皆の顔を覚えなくてもいいから、認識だけでもしておいて。あの、クッキーのドレスを着た見た目だけが王女っぽいのが、爆食モンスターですから、気を付けてね』

 今日はケイトはエリザベータとセレニティのために、正装としてクッキーのドレスを着ていた。

『え?は、い?』
『可愛いドレスね、確か、エスザール王国との』
『はい、そろそろ子どもっぽいかと思うのですけど、気に入っておりまして』
『まだまだ大丈夫よ』

 アロワ王国の王妃陛下にもお菓子モチーフのドレスを認知されており、事業が上手くいっていることを実感することができた。

『びーふしちゅー、ちゅー、ちゅー、ほろほろおにくのびーふちちゅー』

 ケイトがステップを踏みながら歌い出し、ソアリスがじっとりとした目で見つめたが、歌が止まることはない。
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