私のバラ色ではない人生

野村にれ

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夕食会2

『どちらも同じだよ……王妃陛下、セレニティ王女、申し訳ない』
『いいえ、よく食べることは良きことですわ』
『お祖母様、そうなのですか?』

 エリザベータはセレニティに自主的に訊ねられたのは、初めてではないかと思ったが、冷静を装った。

『そうよ、子どもも大人もしっかり食べないと動けませんからね』
『分かりました』

 そう言うと、セレニティは頷いて、スプーンをしっかり握って、ビーフシチューを食べ始めた。

 エリザベータは無理せずと言いそうになったが、折角食べる気になったのなら、言わない方がいいと思い、グッと堪えた。

『パンもサラダもたべました。おかわりをください』

 セレニティは一口一口、食べているが、その間にケイトはパクパク食べ進めており、パンもサラダも食べ終えていた。

『いいわよ、ゆっくり食べるのよ』
『ゆっくりたべたら、もうひとさらいただけるの?』
『駄目よ、おかわりは一回だって言ったでしょう?』
『ええ』
『そんなに食べたら、明日は動けないでしょうから、明日は栗拾いは不参加にしないとなりませんね。残念ですわ』

 ケイトはソアリスの涼しい顔をひと睨みしてから、鼻に皺を寄せた。

『ひとさらにします』
『まあ、第四王女はいい子ですわね』
『とうぜんでございましょう』

 栗拾いの歌も歌っていたために、ビーフシチューも美味しいが、栗拾いには勝てなかったようである。

 無事に夕食は終わり、セレニティもすべてを食べ終えていた。

『全部、食べたのね』
『はい』
『よく食べました、偉いわ』

 少な目にはしてあったが、いつものセレニティは残すような量であった。

 まるでケイトとは正反対ではあるが、セレニティには良い刺激になったようで、ホッとした。

『はいっ』

 エリザベータにはセレニティが笑っているような気がして、ああここへ来て良かったと、何度目か分からない感謝を持った。

 そして、翌日、ついに栗拾いに行くことになった。

 アリルとエクルもやって来て、エリザベータとセレニティに挨拶をした。皆、乗馬服に身を包み、足元もきちんと踏みしめられるブーツを履いている。

 騎士団員にきちんと再度確認をして、庭師たちも説明のために控えているが、緊張で顔が変な方向へ歪んでいた。

『では、皆様、栗拾いの開幕でございます。足元には気を付けて、怪我のないようにお願いします。トング、もしくは手袋で拾ってくださいね』

 すっかり栗拾いの責任者のソアリスは、満面の笑みで両手を広げている。

『楽しく拾ってください。アリルとエクルはセレニティに付き添ってあげてね』
『『はい』』

 アリルとエクルには、セレニティについて話を通してある。

『セレニティは拾った栗を、食べると思って拾ってくださいね。美味しいですよ』
『はい』
『エリザベータ様には、恐れながら私が付き添わせていただきます』
『よろしくお願いいたします』

 そして、すぐにでも走り出しそうなケイトにソアリスはビシリと言い放った。

『ケイトは、ミフルのために拾ってください』
『え?ひろったぶんだけたべられるんじゃないの?』

 ケイトの企みはソアリスによって、阻まれることになった。

『まあ、何て図々しい。ミフルお姉様にお送りするのです』
『じゃあ、ケイトのは?』
『ケイトのはカイルスが拾ってくれます』
『ケイト、任せておいて。私がちゃんと拾うから、ケイトはミフル姉様に喜んでもらいたいでしょう?』
『うん』

 カイルスはソアリスの意図をきちんと理解しており、助言をした。

『だったら、ケイトが拾って送って差し上げよう。ミフル姉様だけ食べられないなんて可哀想じゃないか?』
『そうね、わかった、がんばる』

 ミフルもケイトが拾ってくれた栗だと喜んでくれるだろう。さすがお母様だと、カイルスはソアリスに向かって頷いた。

『さあ、皆様、お楽しみください』

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