私のバラ色ではない人生

野村にれ

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留学5

 レイドラは厳しいが、礼儀やマナーが簡単に身に付くものではないと考えている。

 セレニティの置かれた状況も聞いており、ソアリスが受け入れたのも強く理解していた。ソアリスも初めて会った時は、あまりに遊んでいるために、何もできないのではないかと思っていたが、それは間違いであった。

 だからこそ、先入観は持たないようにしている。

 だが、セレニティは本当に指導を受けていなかったことは、明らかであった。

『そうでしょうか……』
『今は正直、できておりません。ですが、今のカーテシーを見たことのある方は、できるようになったら、驚かれることと思いますよ』

 前向きにはなっていると聞いていたために、ケイトと同じように誰かに見せるのがいいのではないか思い、向上心を刺激することにした。

『はい、そうですよね、頑張ります』
『その意気です。しっかりと身に付けて行きましょう』
『はい』

 セレニティにはまず体力を付けることと、頭に本を乗せて歩いたり、体幹を鍛えることも行うことにした。

 しばらくすると、授業と王族の血が効果を見せたのか、目に見えるほど立ち姿が変わった。

「まあ、背筋が随分伸びましたね」
「あ、ありがとうございます」

 気付いたのは、同じ離宮に住むテラーであった。

「とても良い傾向ですわ」
「はい……嬉しいです」

 気弱なところはまだあるが、受け答えもできないということはなくなり、しっかりとコミュニケーションが取れている。

 そこは授業ではなく、ソアリスが引っ張り回していることが影響しているだろう。

 子どもたちや孫と同じように教育はプロに任せて、自分の運動やマッシュルームの散歩、栗拾いにもつき合わせており、ソアリスに慣れれば、他の相手は楽なものだろうという考えであった。

 そして、孫たちの共通語を教えるという交流も持たせて、年齢を上げていくと考えており、さすが平等を掲げるソアリスらしいなとテラーは思っていた。

「では刺繍に参りましょうか」
「はい」
「これはソアリスには教えられないことですから」
「はい」

 エリザベータが送って来たカリキュラムには刺繍もあり、ソアリスは見たくもないと言ったほどであった。

 刺繍はプロになる必要はないために、交流のためにも、テラーとルルエとエクシアーヌが受け持つことになった。

 セレニティと王宮に行き、ルルエとエクシアーヌと合流した。

「したことはあるのよね?」

 刺繍の道具を前に、テラーは何がいいかしらと思いながら、問い掛けた。

「はい、何度かですが……」
「大丈夫よ、授業でしかしたこともないという王妃もいるのだから」
「あっ、はい」

 王妃という時点で一人しかいないのだが、セレニティもすぐにソアリスのことだと理解した。

「図案は書けるとおっしゃっていましたよ」
「そうなのよ、でも糸では表現できないと言っていたわ。しかも、こんなもの感性だからと図案も書かずに刺繍をしていたこともあったらしいの」
「まあ」
「どうなったのですか?」
「それが、絵は描けるおかげなのか、頭の中のイメージは悪くないけど、まさに糸では表現できずに、犬だったはずが化け物になったそうよ」

 ソアリスと刺繍の話をした際に苦手なのに、時間がなかった時に図案も書かずに行っていたと聞き、驚かされた。

「まあ」
「化け物……」
「でも、前は犬だった化け物ですって提出したそうなの」

 出された教師はソアリスが苦手なことを知っていても、さすがにこれを評価するのかと頭を抱えた。

「まあ、ふふふ」
「お義母様らしいですわね、ちょっと見てみたい気もします」
「犬の片鱗は残っていたのかも怪しいわよね」
「はい」
「私も見たことがないのよね。提出して返った物は拭き掃除に使って捨てたって言うし、アンセムにプレゼントってこともあるわけないですからね」

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