私のバラ色ではない人生

野村にれ

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抗議文と謝罪4

「そういえば、陛下は私にはケイトが来ないと拗ねておりました」
「それは仕方ないでしょう」

 テラーでもそのようなことがあれば、ソアリスに話に行くだろうと当然のことのように思った。

「セレニティはお母様のことを思い出したりする?」
「たまに……」
「そう、どんな方だったの?」

 ソアリスはエリザベータから慣れて来てからでいいから、両親のことを聞いてみて欲しいと頼まれており、今がいいタイミングかは分からないが、ロランとテラーもいることから、まずは母親のことを訊ねてみることにした。

「あまり一緒にいることはなかったのですが、優しかったとは思います。でもしっかりするようにとも言われました」

 フィーネ側妃はセレニティが5歳の時に亡くなっており、全く記憶がないということはないだろうが、多くあるのかも少し微妙であった。

 亡くなったからと、急に世話をされなくなったわけではなく、少しずつ少しずつ世話をされなくなったのである。

「そう、ではお母様の記憶は悪いものではないのね」
「はい……」

 セレニティにとってフィーネは母親ではあったが、側妃でもあり、なかなか一緒にいる時間はなかった。それでも何の関わりもないジュリアンよりも、唯一の親との時間であった。

「そう、私にも聞いて」
「え?母親のことですか?」
「ええ」

 ロランとテラーはソアリスは何を言い出すのかと思ったが、何か意図があるのだろうと口は挟まなかった。

「王妃陛下のお母様はどんな方なのですか?」
「樽よ」
「え?」
「樽に頭と手足が付いているような形をしているの、それが理不尽に叱って来るの。私はセレニティのような優しい思い出が、記憶を巡ってもないのよね」
「えっ」

 セレニティはエリザベータに、ソアリスも放置されていた話を聞く気持ちがなかったので、記憶されていない。

 ロランとテラーも、やはり優しい思い出もないのかと思い、苦しい気持ちになった。

「幼い頃もないの?」
「それがないんですよね。待っていなさいと言われたから、言われた辺り待っていたら、少し動いただけでチョロチョロしないでとか、どうして大人しくしてられないのと怒られた記憶しかないんですよね」
「そう……」

 子どもは大人しくしていられないのは当然だろう。しかも、ソアリスなのだから、じっとしているのは苦手であることから、動くのも親なら分かるだろう。

「私ね、嫁ぐまでいい母親を知らなかったの。だから、私のいい母親はお義母様とお祖母様だったの。だから、ケイトがおかしいと思ったら、注意してね」
「まあ、良いことを言ってくれちゃってと思ったら、また世話をしてもらおうと思っているのね」
「バレました?」
「もう……」

 テラーは呆れるような顔をしながらも、心の中では嬉しい気持ちであった。

「セレニティ、よろしくね」
「でも、ケイト様は立派です」
「そんなことないわ、あの子だけは見本にしても駄目よ」
「でも」
「見本にしていいのは勉強とマナーと、後はあの無駄に偉そうで、堂々としたところくらいかしら」
「確かに堂々とはしているわね、ふふっ、セレニティも見たでしょう?」
「はっい」

 セレニティにとってはケイトは同じ王女とは思えないほど立派で、それに比べて私はという気持ちも生まれていた。

 だが、ソアリスとしてはケイトを見本にして、あんな風になってしまってはアロワ王国に戻すに戻せなくなってしまう。

 そして、オペイル伯爵家には、ヒューゴとペリリア宛てに恐ろしい抗議文が届くことになった。

「何てことだ……しかも、陛下の名前で来ているではないか」

 抗議文が来ることは予想していたが、ソアリスの名前だと考えていた。

 ペリリアに何があったのかは聞いたが、どこの令嬢か分からないが、王宮にいたことからカイルス殿下に付き纏っていると思って、牽制をしたとは聞いていた。

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