私のバラ色ではない人生

野村にれ

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マッドリー侯爵邸5

「栗は本当に美味しかったわ。ソアちゃんがよく拾って来ていたから、懐かしいわねって言っていたの」
「ふふふ」
「お母様、こちらにも持って来ていたのですか」
「ええ、そうよ。ロアンスラー公爵家の裏の森?に落ちておりますの、根こそぎ拾ってやりましたの」
「それをこちらで、美味しく頂きましたの」

 サエラも小さなソアリスが栗を抱えてやって来た時には驚いたが、どうやら危険な場所ではないと知り、毎年ソアリスが栗を持って来ると、マッドリー侯爵家ではそんな時期かと思うようになっていた。

 それからソアリスが王家に嫁いでなくなったが、まさかの自ら栗を植えているとは思わず、皆で参加をさせてもらうことになったのである。

「来年も上手くいけば、ご参加ください」
「まあ、楽しみだわ」
「カイルスもまた拾いましょうね」
「はい、来年はもっと大きくなってみせます」
「カイルスは陛下に似ているけど、陛下よりもいい体つきになっているはずよ。それとも、陛下を二人でぶくぶくに肥えさせてみる?」
「国王なのに、不味いでしょう」

 アンセムを肥えさせても、カイルスには何の影響もないのだが、ソアリスにとってはアンセムを変えてしまえばいいとしか考えていない。

「っあ、そうだったわ」
「お母様……」

 そんな話をしていると、ようやくミーアとナークがちょこちょこ出てきており、ケイトが肩を上げていたが、我慢しているようだった。

「セレニティさま」
「まあ、可愛いですわね」

 ラオンとリソルは、当然、ミーアとナークは一緒に暮らして慣れているので、そっと見守っている。

「みゃーお」
「なーぅ」

 ケイトとセレニティは鳴きながら歩く二匹を、じっと見ないようにしながら、チラチラ見ていた。

「そういえば、猫のお名前は誰が付けたの?」
「ソルドなんです」
「まあ」
「安易で申し訳ありません……」

 ミーと鳴くミーアと、ナーと鳴くナークである。

「そんなことないわ」
「私とロークとジスが見付けて、名前を付けたことがないからと、任されまして……ソアリス様のような良い名前は思いつきませんでした」
「マッシュルームはそのひのちょうしょくにでたからよ?」
「そうなの、だからソルちゃんと同じようなものよ」
「でも、素敵な名前です。一度聞いたら忘れません」

 王宮でもマッシュルームと呼ばれて、皆に愛されており、ソルドとミコロンも会うこともある。

「こんどはケイトがつけるわ」
「ええ、そうね」
「やくそくね」
「ええ」
「何か飼われるの?」
「いいえ、ずっと言っているの」

 ケイトも名前を付けてみたいとずっと言っており、結婚できるのか不安はあるが、いつか子どもを産んだら付けられるだろうと思って、ソアリスは深く考えていない。

「何でもお母様の真似をしたいのです」
「あまりにしつこかった時に、だったら陛下に渾名でも付けてやりなさいと言ったのだけど、おとうさまはあんせむちゃんでしょうと、断られたわ」
「まあ、ふふっ」

 あんせむちゃんはケイトにも浸透しており、すっかり渾名のようになっている。ケイトが家族にはあんせむちゃんをおつれしましたなどと紹介されている。

「でも、ケイトだけがお母様が付けた名前なのですよ?」
「まあ、そうでしたの?」

 王子や王女の名付けについては特に発表をしていないために、意外とソアリスがケイトしか名前に関与していないことは知られていない。

「ええ、絶対的に最後になるからと付けることになったのです。本当はレモンって付けようと思ったのですけどね」
「レモンちゃん?お可愛いではありませんか」
「ええ」
「レモンのマドレーヌからです」
「まあ、そういうことですのね。ふふっ」

 やっぱり食べ物から名前を引っ張って来るなんて、それもまたソアリスらしいと微笑ましく思った。

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