私のバラ色ではない人生

野村にれ

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中休み2

「一回目は無事に終わったか?」
「はい、最初に多少問題が起きましたが……」
「問題?」

 アンセムは何かあったのかと、報告書を捲りながら騎士に目をやった。

「コンパル伯爵令息の……その、鼻毛が出ておりまして」
「っな、それはソアリスが怒っただろう!」
「はい……それを騎士団長が誰か引っこ抜けと言い出されまして……」

 アンセムも額に手を当て、オーランとクイオも全く同じポーズを取っていた。カオスな状況が易々と三人には想像ができた。

 ソアリスはただの怒りで、バーセム公爵も大真面目に失礼だとなってしまい、周りだけが困惑しただろう。

「ソアリスはその……鼻の毛に異様に厳しいのだよ」
「そうなのですか?」
「ああ、何を話してもそのせいで頭に入らなくなるということでな」
「確かに不潔な者だったらそこまで気にならないかもしれませんが、小綺麗な方でしたら目立って気になるかもしれません。以後は気を付けるようにします」

 あの時は戸惑ったが、騎士たちも自分の鼻は大丈夫かと思ったくらいだった。

「ああ、取り調べだからな、そうしてくれ。ソアリスもいつもなら言わないんだが……コンパル伯爵令息には耐える必要もなかっただろう」
「はい、取り調べ前でしたので」
「ご苦労だったな、今日はゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます。失礼いたします」

 悪いのは鼻毛を出していたルックリンツソルだが、巻き込まれた騎士たちは不憫でしかなく、疲れを取って欲しいと願うしかなかった。

「よりにもよってだな……」

 騎士が退室すると、アンセムは絞るように言った。

 他の誰かならソアリスではなく、遠回しに伝えた可能性もあっただろうが、彼女にルックリンツソルに言わないという選択肢はなかったのだろう。

「はい。想像ができて、私もその場にいたらふざけるなよと思うと思います」
「鏡を見てから出てきて欲しかったですね」

 当然だが、そのことは報告書に記載はない。

 アンセムは報告書を読みながら、ルックリンツソルはソアリスの掌の上で転がされているなと感じていた。それでもどうにか自分は悪くないと思っているところが案外強いなと思った。

「鼻毛のせいで心が折れたと思ったが、そうでもないな」
「そうなのですか?」
「私だったら、自分の鼻が気になって仕方ないですけどね、あまり力を入れないようにしようとか」
「読むといい」

 アンセムはオーランとクイオに報告書を渡すと、二人もソアリス節だなと思いながらも、ルックリンツソルはなかなか折れず、おそらく今も折れていないのではないだろうか。

「一回目ということでしたよね?」
「ああ、だから一回目のテーマは威圧だと言っていた」
「ですが、話の流れは上手いと思いますが、随分お優しいように感じます」

 オーランはソアリスなら一回目からもフルスロットルで叩きつけ、二回目も手を緩めることもなく、行うのではないかと思っていた。

「バーセム公爵も含まれているのだろうな」
「ああ……それはそうですね」
「最強の参謀を連れられてとのことでしたね」
「今回はあの二人が指揮を取ったのだから、あの小童が敵うはずがないのだが、自我が強いのだろうな。どこまで持つかどうかだな」
「私もお二人には取り調べされたくありません」

 オーランは二人に睨まれただけで、全て話すしかないと思うだろう。

「私も絶対に嫌だよ」
「そういえば、結局、鼻毛は引っこ抜いたのでしょうか?」

 クイオは衝撃で聞いていなかったことに今さら気付いてしまった。

「あ……」
「あ……」
「後で本人に聞いておく」

 夕食が終わって、ソアリスに尋ねると自分のハンカチで拭わせたと聞いてホッとした。翌日、オーランとクイオも気になっていたようで、話をすると同じようにホッとしていた。

 そして、中休みを終えて、二回目の取り調べが行われることになった。

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