私のバラ色ではない人生

野村にれ

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王妃陛下の身に余る素晴らしい取り調べ5

「苦情だと言ったが?」
「そんなの無理やりに書かせたものでしょう」
「そう解釈するのか」

 何でもこのように都合よく解釈して、アマリリスに迫ることをやめなかったのだろう。まさに恋のスパイスだと思っていたのかもしれない。

「誰かすまないが、子息の前髪を上げてくれ」
「王妃陛下、私が行います」

 母であるリリンナッタが立ち上がり、ルックリンツソルの後ろに立った。

「母上」
「きちんとして」

 リリンナッタは一言だけ告げると、黙ったまま息子の前髪を簡単にまとめて持っていた紐でとめた。

「王妃陛下、いかがでしょうか」
「ああ」

 頭を下げて彼女は席に戻り、ようやくルックリンツソルの顔が見えた瞬間だった。確かに整った顔をしているが、額に変態と書きたい気持ちしか湧かなかった。

「まず、問いたいのだがアマリリス・トレアンに嫌われていると一度も思ったことがないのか?」
「嫌われていません」
「お前は何があったら人に嫌われていると感じるのだ?答えてくれ」

 ソアリスは重症だと思われるために、先に尋ねてみることにした。

「嫌われている……ですか?」
「さすがに人に嫌われたことがないというのはないだろう?」

 ルックリンツソルの性格を考えると、よく言われる嫌われるような人ではない表現は当てはまらないと考えていた。ゆえに嫌われた経験も一度くらいあるだろう。

「ないです……」
「ない?嫌われたことがないのか?」
「はい……」

 ソアリスもだが、バーセム公爵も正直、頭を抱えたくなった。嫌われたことがないのではなく、嫌われていることに気付いていない質だったのかと察した。

「ならば、話し掛けないで欲しい。近付かないで欲しい。贈り物も要らないはどう思うのだ?」
「遠慮していると思います」
「コンパル伯爵、女性にそう言われたらどう思う?」
「……嫌われていると思います」

 本来考えるまでもないことだが、ケインドルは言い難そうに答えた。

「子息、父親はこう言っているが?」
「相手が違いますから」
「お前はアマリリスを想像しているのだろうが、別の令嬢に話し掛けないで欲しい。近付かないで欲しいと言われたらどうだ?嫌われていると思わないか?」
「言われたことがないので分かりません」

 アマリリスの友人たちも言っていたはずだが、それも含めて嫌われているとはとらえていなかったのだろう。

「同性にはどうだ?嫌われることはないか?」
「ありません」

 ハッキリと答えたが、ケインドルとリリンナッタですら、ルックリンツソルは嫌われるような人ではないではないと思っている。

 ソアリスもアマリリスの手紙が効果があるのか不安にはなったが、彼女とも約束をしたために読み上げなければならない。

 何かいい手はないかと考えると、すぐさま閃いた。

「では、これからアマリリスから苦情の手紙を読み上げる」

 ルックリンツソルは頷きはしなかったが、これまでに前のめりであった。その姿を見て、本当に気付いていないのか、ソアリスはどうするつもりなのかと気になった。

 ソアリスは立ち上がって、便箋を開いて、黙ったまま読み、終えると首を左右に曲げて、にっこりと微笑んだ。

 そして、再び侍女に向かって右手を出すと、三人は素早く動き、鞭を手に乗せた。力強く握りしめると、床に叩きつけた。

 パシーン

「気持ち悪ぅ」

 パシーン

「近付くな変態野郎」

 パシーン

「強風かと思ったわ、鼻息がうるせぇんだよ」

 パシーン

「目潰ししてやろうか」

 パシーン

「くたばれ犯罪者」

 ルックリンツソルもだったが、皆もアマリリスがそんなことを書いていたのかと、動揺が広がっていたが、それほどまでに怒っているのではないかと考える者もいた。

 だが、これはそういうことではないかと察する者もいる。

「アマリリスがどうしてそんなことを……書かされたんだ」
「というのが、私の訳したものです」

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