私のバラ色ではない人生

野村にれ

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王妃陛下の身に余る素晴らしい取り調べ9

「お前は人を嫌ったことはあるか?」
「あります」
「それはどういう時だ?」
「嫌な気持ちになったり、攻撃的なことをされたりでしょうか」
「女性もいるか?」

 ソアリスも今さら置き換えたくらいで理解してもらえるとは思っていない。一応一通り試してみようという試みの元である。

「います」
「だったらその女性に出掛けようと誘われたり、口づけをされそうになったりしたらどうだ?どんな気持ちがする?」
「嫌な気持ちになりますけど、アマリリスは違います!」

 アマリリスは女性の中の一人ではなく、アマリリスと他の女性という認識であるために、意図まで理解している。

「だったら、一週間はお風呂に入っておらず、歯も磨いておらず、服も着替えていない者にされたらどうだ?」
「そんなの突き飛ばします」
「それがアマリリスにとってのお前のようなものだよ」
「私はお風呂に入っています!」
「だが、アマリリスはお前に近付きたくも、近付いて欲しくもない存在なんだよ」

 臭い者と一緒にいるのは辛いだろうが、何もして来ないのならアマリリスはルックリンツソルよりも臭いほうを選ぶだろう。

「違います!」
「そういえばアマリリスのリボン、服を盗んだそうね?窃盗だぞ?」

 アマリリスは口では言えなかったがと、ソアリス宛ての手紙に書いてあった。これによって窃盗罪も追加することになった。

「アマリリス・トレアンから被害届も出ている」
「っな!あれは……」

 ルックリンツソルは別邸に隠していたことを思い出し、見つけ出されているのではないかと言葉が尻つぼみになっていった。

「お前はアマリリスに似合わないから処分すると言ったくせに持ち帰ったんだな。コンパル伯爵家の別邸から見つかっており、アマリリスにも確認をしてもらっている。動かぬ証拠だ……本当に気持ち悪いと可愛い顔を歪ませていたよ」

 マリーがアマリリスのためかもしれないと言っていたクローゼットではなく、別の場所に上等な箱の中に収められていた。

「あああああ!あああああ!」
「泣いても叫んでも、土下座をしても事実は変わらない!」

 ルックリンツソルは叫び出し、バーセム公爵はすぐにソアリスを守るために腕を出したが、彼女に手を緩めるという考えはない。

「お前はただの変態なんだよ!似合わないからと持ち出したり、奪ったりして、部屋で匂いでも嗅いでいたのか!そんなことを嫌いな相手にされて、どんな気持ちになるか分からないのか?私だったらサバイバルを撒き散らしてやるところだぞ?」

 バーセム公爵を始めとする騎士団員もサバイバルの名前にピクリと動き、ソアリスは博識でいらっしゃると思われているが、たまたまである。

「親も息子が変態なんて!なかなか受け入れ難いだろうな」
「変態ではありません!」
「嗅がなかったのか?」
「嗅いでいません!」
「嘘だな、絶対に嗅いでいる」
「嗅いでいない!」

 嗅いだところを見たわけではないが、ソアリスは絶対なる自信があった。

「コンパル伯爵、夫人、どう思う?嗅いでるよな?」

 部屋中が絶対にソアリスでなければできない質問だと思ったが、夫妻を可哀想だとは思えなかった。

「っ、それは……」

 ケインドルは言葉に詰まり、リリンナッタは下を向いて震えていた。

「夫人はどうだ?」
「ど、どう……でしょうか……」
「もし子息が私の息子だったら、絶対に嗅いでいると思うと思うがな。お前たちは違うのか?受け入れられないのは分かるが、ここまできたら私は確信があるがな」

 「あの」「いえ」と二人は同じように口籠っており、変態だと認めたくないのか、ソアリスの目も見れなかった。

「窃盗もしていたのだが、どうしていけないことだと教えなかった?」
「申し訳ございません」
「申し訳ございません」

 何度目からの夫妻の謝罪だが、ソアリスの求めている答えではない。

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