私のバラ色ではない人生

野村にれ

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罰案4

「一番面白い展開としてはコンパル伯爵が名前だけで訴えて、公になって事情が分かって青ざめて、ダイヤも罰されたら最高だけど、さすがに馬鹿すぎるわね」
「それはさすがにな……」

 コンパル伯爵夫妻は随分、反省しているようだったから、いくら事なかれ主義でも浅はかな真似はしないだろう。

「悪の親玉だもの。馬鹿をハハハハハ!と笑ってやらないとね」
「現実になったら笑ってやったらいい」

 調べもせずに訴えるようなことになれば、アンセムも一緒に笑ってやりたいくらいである。

「話さないとしたら、あっぱらパールの姉だって気付くと思う?しかも、関わった人たちには私が口止めをしているから教えてくれる親切な人はいないわ。そもそも誰になんて聞くの?」
「確かにそうだな。関係者に聞くにも教えないものな」

 顔だけでは化粧のこともあるために難しいだろう。名前を教えられても、王家では妹はソアリスのせいでパールだったなと覚えていたが、他の者はどうだろうか。その上でダイヤのことを覚えている者がいるのか。

「娼婦だとは分かっているから、そちらから調べる?」
「聞いて回れば可能かもしれないが、店が分かるくらいだろうな」
「それで何が分かるかって話よね。実はって人がいればいいけど、いるかしらね?」

 アンセムよりも貴族にも強い味方がたくさんいるソアリスの言葉は、いないだろうという答えしか思い浮かばなかった。

「いないだろうな。コンパル伯爵夫妻を嫌ってしまったか?」
「当然よ、何もしないことも罪よ。そのことで二人のなんの罪もない若い女性が苦しんだの」
「そうだな、もっと怒鳴り付けるかと思ったが……」
「今日は参観日だもの」
「まさか……」
「ふふふ」

 今日はコンパル伯爵夫妻の宿題の答えを聞いていた。ルックリンツソルの参観日だと思っていたが、実際はコンパル伯爵夫妻の参観日だったというのか。

「はあ……あれらの尻も叩きたかったのか?」
「どうぞ、お叩きくださいと尻を出されればね!」
「っ!ちょっと、想像してしまったではないか」
「まあ」

 オーランとクイオもアンセムと同じで、ケインドルとリリンナッタが立ち上がった状態で、捲りあげて尻を差し出す姿が想像されていた。

「いくら私より若いからと言っても、おじとおばの尻はね……ちょっとね」
「悲惨な光景ではあるな」
「年齢制限があるとは言わないけど、ちょっと見てられないじゃない」

 アンセムも尻を叩かれるのは子ども、ギリギリ若い者だから見ていられる。これが中年になると、一気に見ていられなくなるのは分かる。

「エルムート伯爵くらいにならないと無理ね、さすがに楽しさを感じられないわ」
「ならなくていい」

 鞭を斡旋したエルムート伯爵は、ソアリスの中で節度を持った変態になっている。

「その割にはキリス・ロアンスラーを邸の前に立たせただろう?」
「だってキリスだもの」
「まあ、それはそうなのだが……」

 ソアリスにとって甚振っていい相手になっていることはアンセムも理解しているが、やってもいない罪で皆の頭の中で変態になっているのは少し可哀想である。

「や~い!変態だもの。想像しただけで面白かったわ!被害者には申し訳ないけど、ひょろガーリーが下着持って立っているのよ?皆に白い目で見られながら、カイルスに写真を撮ってもらって、私は目の前を陣取ってデッサンをして、さらに画家も呼ばないとね」
「うっ!やりかねない……」

 ソアリスがキリスをじっとりと見つめ、変態だと罵りながらデッサンをしている姿が思い浮かぶ。しかも、その横や後ろには子どもたちや嫁や婿も集合させられて、キリスは泡を吹いて倒れてしまいそうだ。

「絵のタイトルはね……」

 ソアリスがうーんと考え始めて、絶対にまともではないタイトルになると、皆が身構えた。

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