私のバラ色ではない人生

野村にれ

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愛娘1

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 ソアリスの産んだ第五子、ミフル・グレンバレン第三王女も、ララシャの産んだ第一子、エミアンローズ・ピデムートも無事2歳になった。

「ぱぱ、まま」
「「おはよう、エミアンローズ」」
「えみあん、きょうもかわいい?」
「ああ、今日も世界一可愛いぞ」
「ええ、私たちのお姫様。エミアンが世界で一番、可愛いわ」

 朝から愛される日々を送っているエミアンローズ。

 リベルに似たレッドブラウンの髪に黒い目に、ララシャに似た小さな顔に、小さな鼻に、小さな口。

 パッと見は色味が同じであるリベルに似ていると思っていたが、顔立ちはララシャであった。

 王族であることから、お父様とお母様と呼ばせようと思っていたが、ララシャが今は可愛いからパパとママと呼ばせたいと言い、パパママと呼ばせている。

 好きな物を食べ、可愛いドレスを着て、お出掛けして、欲しい物を買って貰って、皆に可愛いと言われて過ごす、甘いだけの時間。

 リベルもいずれは厳しい教育を受けなくてはならないからと、好きなように過ごさせている。

 ララシャもようやく自分の描いた未来を手にしたことを実感していた。優しい自分だけを愛する夫に、可愛い娘。アンセムと結婚していたら、アリルを迎えていたら、こうはいかなかったと身勝手に思っていた。

 ソアリスは私より少し前に、第五子を産んだことは知っていたが、尊敬していないなどと意地悪を言うソアリスなんて知らないと、不貞腐れていた。

 それよりもこれから先の輝かしい未来の方が大事である。

 自分に似たエミアンローズも、同じように求められる人生になるだろう。公爵令嬢ではなく、王族になるからにはもっと、求められる質もいいはずだ。

 自分が取り合われたように、エミアンローズも困って、自分に相談して来ることになる。エミアンローズが愛されて、大事にしてくれる人を選ばないといけない。

 女性の幸せに男性は不可欠なのだから。

「エミアンはきっと求婚者で困ることになるわね」
「止めてくれ、ララシャ!エミアンは誰にも渡さない!」
「もう!リベルったら」
「まだそんなこと考えたくもないよ…ずっと側にいて欲しい」

 ララシャはリベルは子煩悩な父親になると思っていたが、エミアンローズを自分の同じように愛してくれている。

 リベルも自分なら渡す、アリルを寄こせと言った口で、エミアンローズを溺愛しており、まさにソアリスの言った誘拐王の名を欲しいままにしていた。

「でも…国内だと貴族になってしまうわね」
「他国なんて嫌だよ、なかなか会えなくなるじゃないか」
「でも、求められたら仕方ないじゃない?エミアンに相応しい素敵な方を、多くの方の中から、選ばなくてはいけないわね」
「考えたくない…」
「でも相応しい男性がいなかったら、家族三人で仲良く暮らしましょう」
「それがいいな」

 ララシャは仕方ない人ねとリベルを愛しく感じた。でも私の娘だから、そうはならないけどねと思いながら、二皿目の生クリームとベリーソースたっぷりのパンケーキを、むしゃむしゃと頬張った。

 痩せていることが誇りだったはずが、すっかり様変わりした体形になったまま。運動を嫌い、食事も量というよりも、カロリーの高い物を好むようになったために、体形のことを気にすることはなくなった。

 指摘されてもコルセットで締め付ければいい、とても辛い妊娠出産をしたのだから、もう辛いことはしたくないと開き直っていた。

 一方、ソアリスはララシャから音沙汰もなくなり、煩わされることなくなったが、別のことで苛立たされることは変わらず、理不尽なことも起こる。ゆえに鬱憤晴らしがなくなることはないので、口の悪さは健在のままである。
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