私のバラ色ではない人生

野村にれ

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祝辞2

「大丈夫だったようだな」
「ええ、人間になったようですわ」
「そ、そうか…」

 ロアンスラー公爵が以前のような態度を取るとは思っていなかったからこそ、会うことに反対はしなかったが、ハエではなくなったことを喜ぶしかない。

「後ろ盾には必要ですからね、ざまあみろとだけは言いましたけど」
「姉上も言っていたぞ?」
「そうなの?じいさまが言われたの?」
「…あっ、ああ、そうだ」
「姉に言われた弟と、妹に言われた兄ね。ララシャが樽になっていることを聞きたかったのだけど、会っていないんですって」
「そうだったのか」

 同席した者にも確認すると、許したわけではないが、嫌味程度で声を荒げることもなかったそうで、ホッとした。

 数日後、ついにエクシアーヌの陣痛が始まり、初産でルルエのこともあって、1日覚悟をしていたが、20時間で無事に出産をした。ゾル王国にもすぐさま、無事に出産したことを知らせた。

 マイノスとエクシアーヌの第一子は女児で、王宮は喜びに包まれた。

 名前は散々悩んでいたようだったが、エマリーに決まった。エクシアーヌは自身の名前が長いことが、クロンデール王国に来て、さらに強まった。

 だが、シシリーヌを失った両親のことも考えて、リガルタとマリエンヌ、マイノスとエクシアーヌから名付けたそうだ。

「ばあさまですよ~可愛らしいわね」

 お腹の大きな祖母が、孫を抱いている異様な光景が広がっている。

「これは私が生きている間に、二度と見ることは出来ない光景でしょう、しっかり目に焼き付けて置かなければ」

 ロペス医師は鼻息荒く、凝視している。

「お母様、かわいいですか?」

 そこへ現れるのは、やはりカイルスである。

「ええ、カイルスおじさん、今度は姪っ子よ」
「姪っ子」
「エマリーって呼んであげてね、可愛いわね」
「うん、小さくて可愛いね」

 カイルスは覗き込んで、嬉しそうにじっと見つめている。兄になる日、末っ子でなくなる日は刻一刻と近付いている。

 そして、ゾル王国からリガルタ国王とマリエンヌ王妃がやって来ることになった。王太子夫妻には孫が2人生まれているために、3人目の孫となる。

 シシリーヌは要らぬ問題を生まないために、今でも正妻によって、避妊薬を服用させているので、子どもが生まれることはない。

「まあ、可愛い」
「誠に可愛いな」

 デレデレの様子で、二人は交互に抱いており、エクシアーヌも嬉しくなった。

 そこへ大きなお腹を抱えたソアリスがやって来た。現れただけで、あたふたしてしまう両陛下だったが、皆はもうさすがに慣れた。

「私共が伺いましたのに」
「いえいえ、お腹が重いだけで、散歩がてら歩き回っておりますの」
「運動も必要ですものね」
「ええ、今までで一番気を付けておりますが、動かないことが性に合わないのです。護衛は転んだら、絶対に支えると意気込ませてしまっているんですけどね」

 後ろの護衛は二人に向かって、頭を下げた。

「本当に妊娠を、本当にびっくりしましたが、エクシアーヌからも、とてもお元気だと聞いておりましたわ」
「ええ、おかげさまで元気にしております」
「目にしても、信じられないわ」

 マリエンヌはソアリスのお腹を見たが、見た目は祖母には見えない若々しさなのだが、年齢を知っているので、どうしても不思議な気持ちになってしまう。

「私もですわ」
「まさか孫と同い年だなんて…」
「ややこしいことになってしまい、申し訳ございません」
「いえ、失礼しました。そういう意味ではないのです。エクシアーヌはとても心強い気持ちになったそうです。ですが、おいそれと真似が出来ることではありませんからね。想像して見ましたが、私も想像すら進みませんでしたわ」
「私も想像もしておりませんでしたわ」

 ほほほと笑い合い、いよいよソアリスの第7子の出産が始まる。

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