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末っ子
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「はい、お元気です」
「良かったです」
「はあ…良かった…大丈夫だったんだな」
皆に本当の安堵が広がった。
「はい、ソアリス様は痛みを思い出したようで、やはりしんどいとおっしゃっていましたが、通じたのかスルスルとお産が進みまして、一気にお産みになりました」
「それは、良かった」
「ただ、既に限界だと言って眠られております」
「そ、そうか…」
お疲れ様と言いたかったが、起こしてまで言うことではない。再び怒られることも目に見えている。
「改めまして、おめでとうございます。今、片付けをしておりますので、もうしばらくお待ちください。終わりましたら、お迎えに伺います」
現在、ソアリスが眠る中、セミや鳥で起きないと分かっているので、皆がお構いなしに片づけを行っている。
「弟だったの?妹だったの?」
「申し訳ございません。お伝えしておりませんでしたね、王女様でございます」
「妹…私、お兄ちゃん」
「はい、お兄様でございます」
カイルスも今日で末っ子は卒業となり、今日からお兄ちゃんである。
「妹か…」
子どもも生まれたというのに、ユリウスとマイノスも妹なら山ほどいるのに、嬉しそうにまだ見ぬ妹にソワソワしてしまっている。
生命の誕生というのは、やはり素晴らしいことだとアンセムは実感した。
そして、片付けが終わって、説明があった通りにソアリスは眠ってしまっているが、第7子、第四王女がいる部屋に入った。
まずは皆で、寝ている王妃を見て、一度目の安堵。
カイルスはいつも通りにソアリスに近付き、寝顔を嬉しそうに見つめた。
「お母様、お疲れ様です。ゆっくり休んでくださいね」
その姿に、それはアンセムが言うべきだったのではないかと思ったが、アンセムもハッとしており、起こしてはならぬという思いが強かった自分を反省していた。
すっかり良いところをカイルスに取られたが、気を利かせたロペス医師が第四王女の元へ案内した。
「少し、お小さいですが、問題のない体重です」
アンセムは小さく頷き、ベビーベットに向かった。
寝かされた小さな、小さな、娘であり、妹であり、姪っ子。こちらも眠っているようだが、ふにゃふにゃと動いている。第7子でも最初に抱き上げるのは緊張する。
「可愛い…おじ、間違えた、お父さんだよ」
アンセムと最近は、おじいちゃんだよということが多いので、ソアリス同様に間違えてしまった。
「ソアリスに似ているような?どこか違うような…」
皆もその言葉に、年の離れた妹の姿を見ようと、近付いて覗き込んだ。
「やった、やったわ、私と同じ髪色だわ」
どんどん声を大きくしながら、喜びを爆発させたのは、ミフル。第四王女はプラチナブロンドであった。
「本当ね、綺麗な色だわ」
「顔もミフルに似ているんじゃない?」
「そうかもしれない、母と祖父、ミランお祖母様に似ているのではないか?もちろん、ミフルにも」
「凄く嬉しい…」
「ミフルだけ色味が違うのを気にしていたんだな…」
「ミランお祖母様がいた頃は良かったけど、私だけ違うんだもの」
ミフル以外が同じ髪色ではないのだが、密かに気にしていた。
「アークスお祖父様が見たら、喜びそうね」
「本当ね」
皆、アークスの顔を思い出し、微笑み合った。
嫁たちもそっと近づき、義理の妹を見つめた。
「可愛いわ…エミリーっていう遊び相手も待っているからね」
「ミオスもいるわ」
ルルエとエクシアーヌは、グズグズと泣いてしまっており、自分たちと重ねながらも、無事生まれたことに感激していた。
きょうだいたちは泣くまではいかなかったが、誰しもが最悪の事態も想像しなかったわけではなく、母子ともに健康なことに心から感謝した。
「名前はあのぐーぐー寝ている母が目覚めてからですね」
ソアリスは騒がしいのに、起きる様子もなく、疲れ切っているのか全く動かない。
「良かったです」
「はあ…良かった…大丈夫だったんだな」
皆に本当の安堵が広がった。
「はい、ソアリス様は痛みを思い出したようで、やはりしんどいとおっしゃっていましたが、通じたのかスルスルとお産が進みまして、一気にお産みになりました」
「それは、良かった」
「ただ、既に限界だと言って眠られております」
「そ、そうか…」
お疲れ様と言いたかったが、起こしてまで言うことではない。再び怒られることも目に見えている。
「改めまして、おめでとうございます。今、片付けをしておりますので、もうしばらくお待ちください。終わりましたら、お迎えに伺います」
現在、ソアリスが眠る中、セミや鳥で起きないと分かっているので、皆がお構いなしに片づけを行っている。
「弟だったの?妹だったの?」
「申し訳ございません。お伝えしておりませんでしたね、王女様でございます」
「妹…私、お兄ちゃん」
「はい、お兄様でございます」
カイルスも今日で末っ子は卒業となり、今日からお兄ちゃんである。
「妹か…」
子どもも生まれたというのに、ユリウスとマイノスも妹なら山ほどいるのに、嬉しそうにまだ見ぬ妹にソワソワしてしまっている。
生命の誕生というのは、やはり素晴らしいことだとアンセムは実感した。
そして、片付けが終わって、説明があった通りにソアリスは眠ってしまっているが、第7子、第四王女がいる部屋に入った。
まずは皆で、寝ている王妃を見て、一度目の安堵。
カイルスはいつも通りにソアリスに近付き、寝顔を嬉しそうに見つめた。
「お母様、お疲れ様です。ゆっくり休んでくださいね」
その姿に、それはアンセムが言うべきだったのではないかと思ったが、アンセムもハッとしており、起こしてはならぬという思いが強かった自分を反省していた。
すっかり良いところをカイルスに取られたが、気を利かせたロペス医師が第四王女の元へ案内した。
「少し、お小さいですが、問題のない体重です」
アンセムは小さく頷き、ベビーベットに向かった。
寝かされた小さな、小さな、娘であり、妹であり、姪っ子。こちらも眠っているようだが、ふにゃふにゃと動いている。第7子でも最初に抱き上げるのは緊張する。
「可愛い…おじ、間違えた、お父さんだよ」
アンセムと最近は、おじいちゃんだよということが多いので、ソアリス同様に間違えてしまった。
「ソアリスに似ているような?どこか違うような…」
皆もその言葉に、年の離れた妹の姿を見ようと、近付いて覗き込んだ。
「やった、やったわ、私と同じ髪色だわ」
どんどん声を大きくしながら、喜びを爆発させたのは、ミフル。第四王女はプラチナブロンドであった。
「本当ね、綺麗な色だわ」
「顔もミフルに似ているんじゃない?」
「そうかもしれない、母と祖父、ミランお祖母様に似ているのではないか?もちろん、ミフルにも」
「凄く嬉しい…」
「ミフルだけ色味が違うのを気にしていたんだな…」
「ミランお祖母様がいた頃は良かったけど、私だけ違うんだもの」
ミフル以外が同じ髪色ではないのだが、密かに気にしていた。
「アークスお祖父様が見たら、喜びそうね」
「本当ね」
皆、アークスの顔を思い出し、微笑み合った。
嫁たちもそっと近づき、義理の妹を見つめた。
「可愛いわ…エミリーっていう遊び相手も待っているからね」
「ミオスもいるわ」
ルルエとエクシアーヌは、グズグズと泣いてしまっており、自分たちと重ねながらも、無事生まれたことに感激していた。
きょうだいたちは泣くまではいかなかったが、誰しもが最悪の事態も想像しなかったわけではなく、母子ともに健康なことに心から感謝した。
「名前はあのぐーぐー寝ている母が目覚めてからですね」
ソアリスは騒がしいのに、起きる様子もなく、疲れ切っているのか全く動かない。
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