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夜会3
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「はい、厳しい対処をさせていただきます」
「お父様…」
「バーセム公爵夫妻、何か言うことはありますか?」
「いいえ」「いいえ」
バーセム公爵夫妻は、静かに答えた。
「王妃、陛下が、婚約者を見つけたくだされば…私は、私は」
「ミリンティー!」
ソアリスはオイエン侯爵を掌で制した。
「なぜ親でもない私が、あなたの婚約者を見つけなければならないの?」
「…」
「もし何かあったら、私のせいに出来るとでも思ったの?」
ミリンティーは、一瞬渋い顔した。
「あなたのパーティーでのことは噂になっているそうよ」
「え…」
さすがにミリンティーも、良い噂ではないことは察することが出来た。
「自分で声を掛けられないのでしょう?人を使おうとも考えたようだけど、侯爵令嬢ならそれでも良かったでしょうね。でもあなたは侯爵令嬢としての振る舞いをしてない。とても理不尽よね?」
「でっ、でも、お父様が探してくれないから」
侯爵令嬢が婚約者を探すなど異例である、でもそれほどに見付からなかった。
「オイエン侯爵はあなたに合った相手を探したはずです」
「私に合った…?そんなはずありません」
見た目が華やかでなかったり、年が離れていたり、事業が上手くいっているような家ではなかった。
「いいえ、まともな親は子どもに合った相手を選んだり、探したりするはずです。何が気に入らなかったのですか?見た目?」
「見た目もです…」
侯爵令嬢なのだから、王家や公爵家から声が掛かり、婚約者になれると信じていた。それなのに、そんな相手はいなかった。
「だったら、見た目だけで、何もしないとしても?」
「そう…ではなくて」
「見た目も良くて、爵位も、背も高くて、強くて、頭も良くて、お金持ち?そんな相手だったら、了承していたと?」
ミリンティーはそうだと言うのは憚られたが、誰もが持っている感情ではないか。馬鹿にするように言われる筋合いはないと思っていた。
「でも、相手も選ぶ権利はあるでしょう?」
「な!」
「特にお相手が努力して、得たものだったら、あなたは自分と同じように、努力をしているように見えるかしら?売りといえば、侯爵令嬢くらいでしょう?でもそれは、生まれただけで、努力ではないわ」
「でも私は選ばれた存在なの…」
よくもこのメンバーで、重苦しい空気の中で、言えるなと感心するほどだった。
「オイエン侯爵、その娘は健康なのよね?」
「はい」
「ならば肥え太りすぎよ!ここへ移動するだけで、ハァハァと息を切らし、汗だくで、見た目のことを言うなら、先に自分のことを考えなさい」
「…酷い」
ミリンティーは、少し震えながら言ったが、息を切らしていたのも、汗をダラダラ流して、拭っていたのも事実であるために、皆は冷たい視線を向けていた。
「酷いかしら?もしかしたら、夫としてあなたを抱き上げることも出来ないと、諦めた人だっているかもしれないわよ?」
「え…そんな…」
ここで軽々とミリンティーを運べるのは、ミオト・バーセム公爵だけだろう。
「さあ、もう時間切れよ。今日は帰りなさい」
「皆様、本当に申し訳ありませんでした」
オイエン侯爵は立ち上がって、深く頭を下げ、ローティーも続いた。
「ローティー夫人、黙らせて悪かったわね」
「いえ、申し訳ありませんでした」
ローティー夫人はいつもの喋り方ではなく、しっかりと謝罪し、オイエン侯爵夫妻とミリンティーは、息子も連れて帰って行った。
ソアリスは時間を取らせました、戻りましょうかと指示して、夜会に戻った。
何もなかったかのようではあったが、残った王家の者には事情は伝わっている。ルーファもバーセム公爵夫妻ももう楽しめるような気分ではなくなっていた。ソアリスが取り仕切らなければ、怒りに任せていただろう。
エクルが友人と話していると、ソアリスがわざわざルーファの側で、扇子を口元に当てているのが見えた。あれはまずいわ!と判断したが、走る訳にはいかない。
「お父様…」
「バーセム公爵夫妻、何か言うことはありますか?」
「いいえ」「いいえ」
バーセム公爵夫妻は、静かに答えた。
「王妃、陛下が、婚約者を見つけたくだされば…私は、私は」
「ミリンティー!」
ソアリスはオイエン侯爵を掌で制した。
「なぜ親でもない私が、あなたの婚約者を見つけなければならないの?」
「…」
「もし何かあったら、私のせいに出来るとでも思ったの?」
ミリンティーは、一瞬渋い顔した。
「あなたのパーティーでのことは噂になっているそうよ」
「え…」
さすがにミリンティーも、良い噂ではないことは察することが出来た。
「自分で声を掛けられないのでしょう?人を使おうとも考えたようだけど、侯爵令嬢ならそれでも良かったでしょうね。でもあなたは侯爵令嬢としての振る舞いをしてない。とても理不尽よね?」
「でっ、でも、お父様が探してくれないから」
侯爵令嬢が婚約者を探すなど異例である、でもそれほどに見付からなかった。
「オイエン侯爵はあなたに合った相手を探したはずです」
「私に合った…?そんなはずありません」
見た目が華やかでなかったり、年が離れていたり、事業が上手くいっているような家ではなかった。
「いいえ、まともな親は子どもに合った相手を選んだり、探したりするはずです。何が気に入らなかったのですか?見た目?」
「見た目もです…」
侯爵令嬢なのだから、王家や公爵家から声が掛かり、婚約者になれると信じていた。それなのに、そんな相手はいなかった。
「だったら、見た目だけで、何もしないとしても?」
「そう…ではなくて」
「見た目も良くて、爵位も、背も高くて、強くて、頭も良くて、お金持ち?そんな相手だったら、了承していたと?」
ミリンティーはそうだと言うのは憚られたが、誰もが持っている感情ではないか。馬鹿にするように言われる筋合いはないと思っていた。
「でも、相手も選ぶ権利はあるでしょう?」
「な!」
「特にお相手が努力して、得たものだったら、あなたは自分と同じように、努力をしているように見えるかしら?売りといえば、侯爵令嬢くらいでしょう?でもそれは、生まれただけで、努力ではないわ」
「でも私は選ばれた存在なの…」
よくもこのメンバーで、重苦しい空気の中で、言えるなと感心するほどだった。
「オイエン侯爵、その娘は健康なのよね?」
「はい」
「ならば肥え太りすぎよ!ここへ移動するだけで、ハァハァと息を切らし、汗だくで、見た目のことを言うなら、先に自分のことを考えなさい」
「…酷い」
ミリンティーは、少し震えながら言ったが、息を切らしていたのも、汗をダラダラ流して、拭っていたのも事実であるために、皆は冷たい視線を向けていた。
「酷いかしら?もしかしたら、夫としてあなたを抱き上げることも出来ないと、諦めた人だっているかもしれないわよ?」
「え…そんな…」
ここで軽々とミリンティーを運べるのは、ミオト・バーセム公爵だけだろう。
「さあ、もう時間切れよ。今日は帰りなさい」
「皆様、本当に申し訳ありませんでした」
オイエン侯爵は立ち上がって、深く頭を下げ、ローティーも続いた。
「ローティー夫人、黙らせて悪かったわね」
「いえ、申し訳ありませんでした」
ローティー夫人はいつもの喋り方ではなく、しっかりと謝罪し、オイエン侯爵夫妻とミリンティーは、息子も連れて帰って行った。
ソアリスは時間を取らせました、戻りましょうかと指示して、夜会に戻った。
何もなかったかのようではあったが、残った王家の者には事情は伝わっている。ルーファもバーセム公爵夫妻ももう楽しめるような気分ではなくなっていた。ソアリスが取り仕切らなければ、怒りに任せていただろう。
エクルが友人と話していると、ソアリスがわざわざルーファの側で、扇子を口元に当てているのが見えた。あれはまずいわ!と判断したが、走る訳にはいかない。
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