私のバラ色ではない人生

野村にれ

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マッドリー侯爵家4

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 ソアリスはマッドリー侯爵家で犬たちと触れ合ってから、いつかは飼ってみたいと思っていたが、そんな余裕もなかった。

 だが、ずっと保護施設のことは考えており、動くならば、私も飼い主になろうと決めていた。

 本当のなら子どもたちが小さい頃の方が良かったかもしれないが、孫たちには良い影響を与えてくれるのではないかと思っている。

「おかあさま!けいとですわ!」
「はあ…申し訳ございません、誰がここにいることを教えたのかしら…一番やかましい末の娘なのですが、同席してもよろしいですか?」
「ああ、勿論だよ!ケイト殿下だね?」

 サエラもライックもスーラも、嬉しそうに頷いているが、ソアリスはいつものごとく憂鬱であった。

「ええ…ケイト、入っていいわよ!」
「しつれいいたします!」

 ケイトはちょこちょこと歩いて来て、カーテシーを行った。

「まっどりーこうしゃくけのみなさま、けいと・ぐれんばれんでございます。おかあさまが、たいへんおせわになっております」

 礼儀正しい様子に、リッシュ、サエラ、ライック、スーラは慌てて立ち上がって、ケイトに挨拶をした。

「こちらこそお世話になっております」
「ごめいわくをかけていませんか?」
「ケイトにだけは言われたくないわ」
「まあ!ひどい!それで、おやつはどこですの?」
「一言目がそれなの?」
「きちんとあいさつはしましたわよ?まっしゅるーむはねているのでしょ?おこしちゃかわいそうでしょ?」

 マッドリー侯爵家一同は、思わずペラペラ喋るケイトをじっと見つめていた。

「おじ様たちも座って、これが第四王女の正体よ!とくとご覧になって」
「ハハハハハ!」
「フフフフフ」
「ッククク」
「フフフ」
「幼い頃のソアちゃんにそっくりだな!声も同じだ!」

 皆、ケイトが幼い頃のソアリスを思い起こされ、一斉に笑い始め、一通り笑うと席に戻った。

「ケイトも座りなさい」
「は~い」

 ケイトはソアリスの隣にヒョイと座ると、リッシュ、サエラ、ライック、スーラにお茶と一緒に置かれていた手を付けていないマドレーヌを一斉に差し出し始めた。

 ソアリスは、とっくの昔に食べ切っている。

「おじさんのも食べるといい」
「おばさんのも」
「おじさんのも」
「おばさんのも」
「ありがとうございます!」

 おじさんとおばさんの攻撃に、ケイトは満面の笑みを浮かべたが、ソアリスはマッドリー侯爵家は食べさせたい家であることを思い出していた。

 ソアリスも子どもの頃は、子どもは遠慮してはいけないと言われて、食べさせて貰っていた。

「おじ様、おば様、持って来て貰いますからいいのよ」
「いや、手は付けていない物だから…失礼だったかい?」
「いえ、そのようなことはないのだけど」

 ソアリスにとって問題は、手を付けないマドレーヌを渡すことよりも、ケイトが全て食べようとすることである。

「けいと、まどれーぬだいすき!」
「では、よろしければお食べください」
「ケイト!」
「子どもが遠慮してはいけない」
「そうよ」
「いただきます!」

 ケイトの周りに、マドレーヌが並べられて、マッドリー侯爵家の皆は満足そうに頷いている。

「本当に吸い込まれるように食べてしまうのよ」
「ハハッ、そこも似ているのか?」
「そうなの。マッドリー侯爵邸で、私もたらふくいただいたから、人のことは言えないんだけど」
「まあ、おかあさま。けいとにないしょで、まっどりーこうしゃくけでおやつをたべていたの?」

 ケイトはパクパクと食べながら、ソアリスだけがおやつを食べていたと考え、厳しい目を向けている。

「今ではなくて、お母様が子どもの頃よ」
「ふーん。みなさま、おかあさまはたくさんたべるでしょう?いまだって、おかあさまのおさらだけからっぽよ?」
「あら、いつの間に食べたのかしら」

 ソアリスはいつ食べたのか、全く思い出せなかった。
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