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慈善活動
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「ララシャにはこちらを全部見せましょう。ある意味、何も書いていないのも、いいかもしれないわ」
「そうですね」
「注目を集める方が喜びそうですものね」
そして、アンセムにララシャが慈善活動をしていたかどうか聞くために、時間が出来たら聞きたいことがあると伝えて貰い、それまで別の公務を行っていた。
「聞きたいこととは?」
アンセムが今日の公務を終えて、オーランとクイオと共にソアリスへの元へやって来た。
「たいしたことではないのだけど、ララシャはクロンデール王国で慈善活動をしたことはある?」
「慈善活動?」
「ええ、長い間、王太子殿下の婚約者だったのだから、本来はしているはずなのだけど、私はそんな話を聞いたことがないのよ。記録にも残っていないの」
「ああ…」
アンセムの脳裏には大昔の嫌な思い出が、思い出されていた。
「行ったことはあるんだよ」
「そうなの?」
「孤児院にね、でも着いた途端に急にお腹が痛いと言い出して」
「うっわぁ!仮病っぽい」
王太子殿下の婚約者として、嫌々ながらも行きはしたが、孤児院を見た途端に嫌だと思い、お腹が痛いなどと言い出したのだろう。
「私もそう思ったさ。その後は、そういった活動の日は、出掛ける前から具合が悪いと言い出して、キャンセルするようになったんだ。母上も、ロアンスラー公爵夫妻にも言ったのだが、改善されることはなかった」
「許されたのですか?」
「許されないさ。王太子妃になるということは、こういった活動をすることだと話したのだが、たまたま具合が悪くなっただけだ、疑うなんて酷いと言い張ってね」
明らかに不自然であるのに、行きたい意思があると思わせたいようで、仮病だとは認めなかった。
だが、ララシャの浅墓な思い付きなど、王家に通用することはなかった。
「どうせドレスが汚れる。どうして私がこんなことをしなきゃいけないのかとでも思っていたのでしょう」
「そうだろうな」
「だから、記録にも残っていないのですね」
「そうだ、当時は急病にて不参加と書かれていたのかもしれないが、記録として残す必要もないと判断したのかもしれない」
記録に残っていないのなら、婚約が解消になった際に、必要ないと抹消されたのだろう。もしかしたら、ソアリスの姉であるために、敢えて消した可能性もある。
「それ以降、一度も?」
「ああ…まだ婚約者だったから、そこまで多くはなかった。だが、体調が急に悪くなるのなら、婚約を考え直さなければならないとも話した」
「まあ、初耳ですわ」
ララシャの婚約と言えば、愛されているという自慢話ばかりだったために、まさかそんなことを言われていたとは思わなかった。
「自分の都合の悪いことは、言わなかったのだろう。当然だが、ロアンスラー公爵夫妻にも話してあった。次は必ず体調を整えさせますと言っていたが…」
「知っていたの?どうなっているのよ…伝家の宝刀を振り出すか、尻を叩くくらいしなさいよ」
キリスとマルシャは知らなかったのかと思ったが、そんなはずはない。
「私だったら、殴られているでしょうね!ああ、腹が立って来たわ!メディナ、さっきの新聞見せて」
「はい!」
メディナはササっと、先程のしょぼくれじじいと見切れた樽ばばあの写真の載っている、新聞を差し出した。
「さすが、メディナ!」
「当然にございます」
ソアリスはバサリと開いて、先程の写真を見つめた。
「ふふっ、ふっ、ああ、落ち着いたわ…ふぅ」
「何だ?」
「これ、ここにしょぼくれじじいが写り込んでいるのよ」
ソアリスはアンセムに新聞を差し出して、写真を指差した。
「ん?」
アンセムの後ろにいたオーランとクイオも、身を乗り出して見た。しょぼくれじじいにも、誰もピクリとも反応しないほど、自然なものになっている。
「そうですね」
「注目を集める方が喜びそうですものね」
そして、アンセムにララシャが慈善活動をしていたかどうか聞くために、時間が出来たら聞きたいことがあると伝えて貰い、それまで別の公務を行っていた。
「聞きたいこととは?」
アンセムが今日の公務を終えて、オーランとクイオと共にソアリスへの元へやって来た。
「たいしたことではないのだけど、ララシャはクロンデール王国で慈善活動をしたことはある?」
「慈善活動?」
「ええ、長い間、王太子殿下の婚約者だったのだから、本来はしているはずなのだけど、私はそんな話を聞いたことがないのよ。記録にも残っていないの」
「ああ…」
アンセムの脳裏には大昔の嫌な思い出が、思い出されていた。
「行ったことはあるんだよ」
「そうなの?」
「孤児院にね、でも着いた途端に急にお腹が痛いと言い出して」
「うっわぁ!仮病っぽい」
王太子殿下の婚約者として、嫌々ながらも行きはしたが、孤児院を見た途端に嫌だと思い、お腹が痛いなどと言い出したのだろう。
「私もそう思ったさ。その後は、そういった活動の日は、出掛ける前から具合が悪いと言い出して、キャンセルするようになったんだ。母上も、ロアンスラー公爵夫妻にも言ったのだが、改善されることはなかった」
「許されたのですか?」
「許されないさ。王太子妃になるということは、こういった活動をすることだと話したのだが、たまたま具合が悪くなっただけだ、疑うなんて酷いと言い張ってね」
明らかに不自然であるのに、行きたい意思があると思わせたいようで、仮病だとは認めなかった。
だが、ララシャの浅墓な思い付きなど、王家に通用することはなかった。
「どうせドレスが汚れる。どうして私がこんなことをしなきゃいけないのかとでも思っていたのでしょう」
「そうだろうな」
「だから、記録にも残っていないのですね」
「そうだ、当時は急病にて不参加と書かれていたのかもしれないが、記録として残す必要もないと判断したのかもしれない」
記録に残っていないのなら、婚約が解消になった際に、必要ないと抹消されたのだろう。もしかしたら、ソアリスの姉であるために、敢えて消した可能性もある。
「それ以降、一度も?」
「ああ…まだ婚約者だったから、そこまで多くはなかった。だが、体調が急に悪くなるのなら、婚約を考え直さなければならないとも話した」
「まあ、初耳ですわ」
ララシャの婚約と言えば、愛されているという自慢話ばかりだったために、まさかそんなことを言われていたとは思わなかった。
「自分の都合の悪いことは、言わなかったのだろう。当然だが、ロアンスラー公爵夫妻にも話してあった。次は必ず体調を整えさせますと言っていたが…」
「知っていたの?どうなっているのよ…伝家の宝刀を振り出すか、尻を叩くくらいしなさいよ」
キリスとマルシャは知らなかったのかと思ったが、そんなはずはない。
「私だったら、殴られているでしょうね!ああ、腹が立って来たわ!メディナ、さっきの新聞見せて」
「はい!」
メディナはササっと、先程のしょぼくれじじいと見切れた樽ばばあの写真の載っている、新聞を差し出した。
「さすが、メディナ!」
「当然にございます」
ソアリスはバサリと開いて、先程の写真を見つめた。
「ふふっ、ふっ、ああ、落ち着いたわ…ふぅ」
「何だ?」
「これ、ここにしょぼくれじじいが写り込んでいるのよ」
ソアリスはアンセムに新聞を差し出して、写真を指差した。
「ん?」
アンセムの後ろにいたオーランとクイオも、身を乗り出して見た。しょぼくれじじいにも、誰もピクリとも反応しないほど、自然なものになっている。
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