私のバラ色ではない人生

野村にれ

文字の大きさ
549 / 817

慈善活動

しおりを挟む
「ララシャにはこちらを全部見せましょう。ある意味、何も書いていないのも、いいかもしれないわ」
「そうですね」
「注目を集める方が喜びそうですものね」

 そして、アンセムにララシャが慈善活動をしていたかどうか聞くために、時間が出来たら聞きたいことがあると伝えて貰い、それまで別の公務を行っていた。

「聞きたいこととは?」

 アンセムが今日の公務を終えて、オーランとクイオと共にソアリスへの元へやって来た。

「たいしたことではないのだけど、ララシャはクロンデール王国で慈善活動をしたことはある?」
「慈善活動?」
「ええ、長い間、王太子殿下の婚約者だったのだから、本来はしているはずなのだけど、私はそんな話を聞いたことがないのよ。記録にも残っていないの」
「ああ…」

 アンセムの脳裏には大昔の嫌な思い出が、思い出されていた。

「行ったことはあるんだよ」
「そうなの?」
「孤児院にね、でも着いた途端に急にお腹が痛いと言い出して」
「うっわぁ!仮病っぽい」

 王太子殿下の婚約者として、嫌々ながらも行きはしたが、孤児院を見た途端に嫌だと思い、お腹が痛いなどと言い出したのだろう。

「私もそう思ったさ。その後は、そういった活動の日は、出掛ける前から具合が悪いと言い出して、キャンセルするようになったんだ。母上も、ロアンスラー公爵夫妻にも言ったのだが、改善されることはなかった」
「許されたのですか?」
「許されないさ。王太子妃になるということは、こういった活動をすることだと話したのだが、たまたま具合が悪くなっただけだ、疑うなんて酷いと言い張ってね」

 明らかに不自然であるのに、行きたい意思があると思わせたいようで、仮病だとは認めなかった。

 だが、ララシャの浅墓な思い付きなど、王家に通用することはなかった。

「どうせドレスが汚れる。どうして私がこんなことをしなきゃいけないのかとでも思っていたのでしょう」
「そうだろうな」
「だから、記録にも残っていないのですね」
「そうだ、当時は急病にて不参加と書かれていたのかもしれないが、記録として残す必要もないと判断したのかもしれない」

 記録に残っていないのなら、婚約が解消になった際に、必要ないと抹消されたのだろう。もしかしたら、ソアリスの姉であるために、敢えて消した可能性もある。

「それ以降、一度も?」
「ああ…まだ婚約者だったから、そこまで多くはなかった。だが、体調が急に悪くなるのなら、婚約を考え直さなければならないとも話した」
「まあ、初耳ですわ」

 ララシャの婚約と言えば、愛されているという自慢話ばかりだったために、まさかそんなことを言われていたとは思わなかった。

「自分の都合の悪いことは、言わなかったのだろう。当然だが、ロアンスラー公爵夫妻にも話してあった。次は必ず体調を整えさせますと言っていたが…」
「知っていたの?どうなっているのよ…伝家の宝刀を振り出すか、尻を叩くくらいしなさいよ」

 キリスとマルシャは知らなかったのかと思ったが、そんなはずはない。

「私だったら、殴られているでしょうね!ああ、腹が立って来たわ!メディナ、さっきの新聞見せて」
「はい!」

 メディナはササっと、先程のしょぼくれじじいと見切れた樽ばばあの写真の載っている、新聞を差し出した。

「さすが、メディナ!」
「当然にございます」

 ソアリスはバサリと開いて、先程の写真を見つめた。

「ふふっ、ふっ、ああ、落ち着いたわ…ふぅ」
「何だ?」
「これ、ここにしょぼくれじじいが写り込んでいるのよ」

 ソアリスはアンセムに新聞を差し出して、写真を指差した。

「ん?」

 アンセムの後ろにいたオーランとクイオも、身を乗り出して見た。しょぼくれじじいにも、誰もピクリとも反応しないほど、自然なものになっている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」

みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のリコリスは20歳。立派な嫁きおくれである。 というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。 なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。 そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。 何か裏がある―― 相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするリコリス。 でも、非力なリコリスには何も手段がない。 しかし、そんな彼女にも救いの手が……?

とある公爵の奥方になって、ざまぁする件

ぴぴみ
恋愛
転生してざまぁする。 後日談もあり。

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

夫婦という名の協力者、敵は令嬢

にゃみ3
恋愛
齢十二歳にして公爵夫人となった、セレスティア。 常に命を狙われる危険と、露骨な敵意に晒される立場。 同年代の令嬢たちからは妬みと侮蔑を向けられ、年長の貴婦人たちからは距離を置かれる。 そんな生活を送り始めて、早くも六年が経った頃。 「私、公爵様とお近づきになりたいんです!」 夫に好意を寄せる、自らが公爵夫人の座に就きたいと言い出した令嬢が現れて……。 黒く爛れた世界でたった二人の幼い夫婦が、どれほど苦しい思いをして生きてきたか。それは、当人である二人にしか分からないことだ。

「あなたは強いから大丈夫よね」、無自覚に人生を奪う姉

恋せよ恋
恋愛
「セリーヌは強いから、一人でも大丈夫よね?」 婚約破棄され「可哀想なヒロイン」となった姉カトリーヌ。 無自覚で優しい姉を気遣う両親と『私の』婚約者クロード。 私の世界は反転した。 十歳から五年間、努力で守ってきた「次期後継者」の座も。 自分に誂えた「ドレス」も……。「婚約者」さえも……。 両親は微笑んで言う。 「姉様が傷ついているの強いお前が譲ってあげなさい」と。 泣いて縋れば誰かが助けてくれると思っているお姉様。 あとはお一人で頑張ってくださいませ。 私は、私を必要としてくれる場所へ――。 家族と婚約者を見限った、妹・セリーヌの物語。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?

宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。 そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。 婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。 彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。 婚約者を前に彼らはどうするのだろうか? 短編になる予定です。 たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます! 【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。 ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』

鷹 綾
恋愛
「君は王太子妃に相応しくない」 その一言で、私は婚約を破棄されました。 理由は“真実の愛”。選ばれたのは、可憐な令嬢。 ……ええ、どうぞご自由に。 私は泣きません。縋りません。 なぜなら——王家は、私を手放せないから。 婚約は解消。 けれど家格、支持、実務能力、そして民の信頼。 失ったのは殿下の隣の席だけ。 代わりに私は、王太子女として王政補佐の任を命じられます。 最初は誰もが疑いました。 若い、女だ、感情的だ、と。 ならば証明しましょう。 怒らず、怯えず、排除せず。 反対も忠誠も受け止めながら、国を揺らさずに保つことを。 派手な革命は起こしません。 大逆転も叫びません。 ただ、静かに積み上げます。 そして気づけば—— “殿下の元婚約者”ではなく、 “揺れない王”と呼ばれるようになるのです。 これは、婚約破棄から始まる静かな逆転譚。 王冠の重みを受け入れた一人の女性が、 国を、そして自分の立場を塗り替えていく物語です。

処理中です...