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別れの後4
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「ソアリス、それでは何も分からないよ」
「そうね」
その間、ケイトはおやつの時間までは、後どれくらいかと計算している。
「ソアリスに襲い掛かった」
「襲い掛かった?」
ソアリスの横に座っていたカイルスは、その言葉で勢い良く立ち上がった。
「違うんだ、飛び掛かった?」
「飛び掛かった?」
実際に起きたことで間違いではないのだが、言葉選びを失敗しているアンセムが、なぜか睨まれていた。
「掴み掛かろうとしたのよ。でも、お母様、ちょっと戦ってみたかったから、参戦してみたの」
「お母様!危険なことは」
「だって、武器も持っていない中年の樽よ?」
「そうですけど……」
それでもカイルスは、大好きなソアリスを傷付けられることは絶対に許せない。同時にソアリスが自分のことは後回しにすることも、不満であった。
「おかあさま、たたかいなさったの?」
「戦いにもならなかったわ!」
「ええ?どうして?」
「それがね、片足を掴んで転ばせたのだけど、それで背中に座って、拘束して、首に手を回して終わり。あっさりし過ぎてね」
ソアリスはもう少しやり合いたかったのだろうと、察することができた。
「よわかったのね」
「そうそう、肥え太っていてもね、強さにはならないのよ」
「そうなのね」
ケイトは納得し、ソアリスも肥え太っていることで重量は出ても、強くはならないと勉強になった。
「ソアリス、よくやっていただろう?」
「何を?」
「経験者の動きだった」
「ああ、でも結婚してからはそんなにしていないわ」
「学園か?」
「そうよ、でも皆、あんなに肥えていなかったから。学園の頃は背中をポンと押して、よろけたところを後手で縛り上げていたのよ」
「そうだったのか…」
澄ました顔で、まるで虫でも叩くかのように行ったのだろう。
「お母様、学園でもやっていたのですか?」
「学園にはね、おかしな子がたまにいるのよ。お母様、一応公爵令嬢だったから、目に余らない場合は教師に突き出していたの」
自分では手を下すのは余程のことで、面倒なので教師に丸投げしていたのだろう。
「妻が言っておりました。ソアリス様はまあ!と言ったと思ったら、気付けば縛り上げていたと、相手は何が何だか分からないまま連行されていたのではないかと。何かおっしゃられていた時もあったが、聞こえなくて残念に思っていたと」
オーランの妻は、当時は見るだけだったが、友人たちとソアリスを見掛けた時には感動する気持ちであった。オーランと結婚してからは、間接的でも話を聞けるだけも、嬉しかった。
恨んでいた者もいるだろうが、ソアリスは爵位ではなく、人柄で問題のある生徒を更生させたり、排除した。ある意味、既に王太子妃、王妃として素質があったとしか思えない。
「何を言ったんだ?」
「黙れとかじゃないかしら?たいしたことは言っていないわ」
「ソアリスには、たいしたことではないのだろうな」
悪い口はソアリスにとって特別なことではない。
しかし、知らぬ者からすれば、公爵令嬢から急にこの人が言ったの?という言葉が繰り出されれば、隙ができる。そこへソアリスが畳み込むのである。
「くっせぇ女だなとは、聞いたことはあると……」
「それは聞き間違いではなく言っているな、しかも香水だろう」
「はい、香水で酔いそうなほどの令嬢だったそうです」
「ああ!いたな」
「鼻を摘まんでらしたと」
アンセムは、ソアリスのその姿が想像できていた。
「ペジーノ侯爵令嬢だな」
「え?」
「デーラバス伯爵夫人か?」
「そうそう!」
ジェリーラ・ペジーノ、現在は結婚して、ジュリーラ・デーラバス。上品で穏やかな、淑女の鏡などと言われている夫人である。
まさか彼女にソアリスから、叱られた過去があるなどと思ってもおらず、侍女たちですら驚いていた。
「そうね」
その間、ケイトはおやつの時間までは、後どれくらいかと計算している。
「ソアリスに襲い掛かった」
「襲い掛かった?」
ソアリスの横に座っていたカイルスは、その言葉で勢い良く立ち上がった。
「違うんだ、飛び掛かった?」
「飛び掛かった?」
実際に起きたことで間違いではないのだが、言葉選びを失敗しているアンセムが、なぜか睨まれていた。
「掴み掛かろうとしたのよ。でも、お母様、ちょっと戦ってみたかったから、参戦してみたの」
「お母様!危険なことは」
「だって、武器も持っていない中年の樽よ?」
「そうですけど……」
それでもカイルスは、大好きなソアリスを傷付けられることは絶対に許せない。同時にソアリスが自分のことは後回しにすることも、不満であった。
「おかあさま、たたかいなさったの?」
「戦いにもならなかったわ!」
「ええ?どうして?」
「それがね、片足を掴んで転ばせたのだけど、それで背中に座って、拘束して、首に手を回して終わり。あっさりし過ぎてね」
ソアリスはもう少しやり合いたかったのだろうと、察することができた。
「よわかったのね」
「そうそう、肥え太っていてもね、強さにはならないのよ」
「そうなのね」
ケイトは納得し、ソアリスも肥え太っていることで重量は出ても、強くはならないと勉強になった。
「ソアリス、よくやっていただろう?」
「何を?」
「経験者の動きだった」
「ああ、でも結婚してからはそんなにしていないわ」
「学園か?」
「そうよ、でも皆、あんなに肥えていなかったから。学園の頃は背中をポンと押して、よろけたところを後手で縛り上げていたのよ」
「そうだったのか…」
澄ました顔で、まるで虫でも叩くかのように行ったのだろう。
「お母様、学園でもやっていたのですか?」
「学園にはね、おかしな子がたまにいるのよ。お母様、一応公爵令嬢だったから、目に余らない場合は教師に突き出していたの」
自分では手を下すのは余程のことで、面倒なので教師に丸投げしていたのだろう。
「妻が言っておりました。ソアリス様はまあ!と言ったと思ったら、気付けば縛り上げていたと、相手は何が何だか分からないまま連行されていたのではないかと。何かおっしゃられていた時もあったが、聞こえなくて残念に思っていたと」
オーランの妻は、当時は見るだけだったが、友人たちとソアリスを見掛けた時には感動する気持ちであった。オーランと結婚してからは、間接的でも話を聞けるだけも、嬉しかった。
恨んでいた者もいるだろうが、ソアリスは爵位ではなく、人柄で問題のある生徒を更生させたり、排除した。ある意味、既に王太子妃、王妃として素質があったとしか思えない。
「何を言ったんだ?」
「黙れとかじゃないかしら?たいしたことは言っていないわ」
「ソアリスには、たいしたことではないのだろうな」
悪い口はソアリスにとって特別なことではない。
しかし、知らぬ者からすれば、公爵令嬢から急にこの人が言ったの?という言葉が繰り出されれば、隙ができる。そこへソアリスが畳み込むのである。
「くっせぇ女だなとは、聞いたことはあると……」
「それは聞き間違いではなく言っているな、しかも香水だろう」
「はい、香水で酔いそうなほどの令嬢だったそうです」
「ああ!いたな」
「鼻を摘まんでらしたと」
アンセムは、ソアリスのその姿が想像できていた。
「ペジーノ侯爵令嬢だな」
「え?」
「デーラバス伯爵夫人か?」
「そうそう!」
ジェリーラ・ペジーノ、現在は結婚して、ジュリーラ・デーラバス。上品で穏やかな、淑女の鏡などと言われている夫人である。
まさか彼女にソアリスから、叱られた過去があるなどと思ってもおらず、侍女たちですら驚いていた。
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