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陰の支配者13
「ソアリス様には本当に感謝しかありませんので、これからも仲良くさせていただきたいと思います」
「ああ、そうしてくれ。二人のキューピットにしては、口が悪いが、ソアリスだったとはな」
キューピットとソアリスがどうにも一致しないが、少し邪悪な表情にすれば、いたずらをしそうではあるが、なかなか似合うなと想像した。
「ソアリス様には彼と婚約を解消したくないという話は、していなかったのですが、後で聞くと『だって、あなた侯爵令嬢なんだから、破棄したければもうしているでしょ?』って、あっさりおっしゃられました」
「ああ、言いそうだな」
「先を見通すお力があるのかと思うほどでした」
「ああ」
想像力が豊かという方が正しいが、否定できないところである。
「陰の支配者だということは、知っていたのか?」
「聞いてはおりました。ですが、身を持って知ったと言いますか、陛下もこれまで耳にされていなかったのですよね?」
「ああ」
「そういうことです、皆、知らないのです」
ジュリーラも話は聞いており、偉そうで我儘な公爵令嬢なのだろうと思っていた。
だが、偉そうではあったが、立場を思えば当然で、本当に立場は上なのである。しかも、我儘という言葉は、どうにも当てはまらない。
「伯爵も?」
「私は知りませんでしたが、母が聞いていたそうです」
「母君が?」
「はい、従姉妹の子どもが学園におりまして、ソアリス様は陰の支配者と呼ばれて、風紀を正していると聞いていたそうです」
「だから、ソアリスの嘘くさい泣き真似も怒らなかったんだな」
やはりメディナ夫人が言うように、知っていたのだと納得した。
「はい、と言っては申し訳ない気持ちになりますが、ソアリス様の話すことに疑いを持たなかったのは事実です。ソアリス様には、何の得もありませんし、嘘は一つも言っておりませんから」
「そうか、ソアリスは妙なプレゼントを渡し、大袈裟にしただけで、嘘はないのか」
「はい、あの香水を付けて、森に放ってみようかと父は言っていたくらいです」
温厚そうな伯爵がそこまで言うとは、本当に怒っていたのだろう。
そして、それはソアリスの入れ知恵ではないかと思うほど、嬉々として考えそうなことでもあった。
「だが、連行したりしていたから見られてはいただろう?」
「それは生徒会や風紀委員の仕事だと思っておりました」
「なるほど……だから、陰の支配者」
もう何度目か分からないが、ソアリスの恐ろしさを実感することになった。
ジュリーラのことは氷山の一角にすぎず、このようなことがまだまだあるのではないかと思った。
「まだ他にもあるということだな?」
「私としては、勝手にお伝えできませんとしか申し上げられません」
「そうだな、これからもソアリスを頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
夫妻は深く頭を下げて、去って行った。
ソアリスの話を聞いていたのには、興味もあったが、他にも理由があった。
だが、ソアリスへではなく、今でもソアリスを大好きだと言って憚らないカイルスに、縁談を持ち掛けられているが、正直言って、アンセムも乗り気ではない。
「カイルスに縁談の申し込みがあった」
「縁談?」
アンセムの表情から、ソアリスも良いものではないのだなと感じた。
「不満なのね?カイルスは?」
「カイルスにはまだ話していない」
「本人に聞いてみたらいいじゃない?他国なの?」
「ああ」
その言葉にソアリスは、カイルスは他国に行くつもりはないだろうことは理解していた。
「どこの誰なの?」
「エクラオース王国の大公家だよ」
エクラオース王国、小国であり、クロンデール王国からだと三日は掛かり、年間を通して高温多湿な気候である。
「ああ!陛下の嫌いな、ポンポリンとか、そんな名前だったわよね?」
「ああ、そうしてくれ。二人のキューピットにしては、口が悪いが、ソアリスだったとはな」
キューピットとソアリスがどうにも一致しないが、少し邪悪な表情にすれば、いたずらをしそうではあるが、なかなか似合うなと想像した。
「ソアリス様には彼と婚約を解消したくないという話は、していなかったのですが、後で聞くと『だって、あなた侯爵令嬢なんだから、破棄したければもうしているでしょ?』って、あっさりおっしゃられました」
「ああ、言いそうだな」
「先を見通すお力があるのかと思うほどでした」
「ああ」
想像力が豊かという方が正しいが、否定できないところである。
「陰の支配者だということは、知っていたのか?」
「聞いてはおりました。ですが、身を持って知ったと言いますか、陛下もこれまで耳にされていなかったのですよね?」
「ああ」
「そういうことです、皆、知らないのです」
ジュリーラも話は聞いており、偉そうで我儘な公爵令嬢なのだろうと思っていた。
だが、偉そうではあったが、立場を思えば当然で、本当に立場は上なのである。しかも、我儘という言葉は、どうにも当てはまらない。
「伯爵も?」
「私は知りませんでしたが、母が聞いていたそうです」
「母君が?」
「はい、従姉妹の子どもが学園におりまして、ソアリス様は陰の支配者と呼ばれて、風紀を正していると聞いていたそうです」
「だから、ソアリスの嘘くさい泣き真似も怒らなかったんだな」
やはりメディナ夫人が言うように、知っていたのだと納得した。
「はい、と言っては申し訳ない気持ちになりますが、ソアリス様の話すことに疑いを持たなかったのは事実です。ソアリス様には、何の得もありませんし、嘘は一つも言っておりませんから」
「そうか、ソアリスは妙なプレゼントを渡し、大袈裟にしただけで、嘘はないのか」
「はい、あの香水を付けて、森に放ってみようかと父は言っていたくらいです」
温厚そうな伯爵がそこまで言うとは、本当に怒っていたのだろう。
そして、それはソアリスの入れ知恵ではないかと思うほど、嬉々として考えそうなことでもあった。
「だが、連行したりしていたから見られてはいただろう?」
「それは生徒会や風紀委員の仕事だと思っておりました」
「なるほど……だから、陰の支配者」
もう何度目か分からないが、ソアリスの恐ろしさを実感することになった。
ジュリーラのことは氷山の一角にすぎず、このようなことがまだまだあるのではないかと思った。
「まだ他にもあるということだな?」
「私としては、勝手にお伝えできませんとしか申し上げられません」
「そうだな、これからもソアリスを頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
夫妻は深く頭を下げて、去って行った。
ソアリスの話を聞いていたのには、興味もあったが、他にも理由があった。
だが、ソアリスへではなく、今でもソアリスを大好きだと言って憚らないカイルスに、縁談を持ち掛けられているが、正直言って、アンセムも乗り気ではない。
「カイルスに縁談の申し込みがあった」
「縁談?」
アンセムの表情から、ソアリスも良いものではないのだなと感じた。
「不満なのね?カイルスは?」
「カイルスにはまだ話していない」
「本人に聞いてみたらいいじゃない?他国なの?」
「ああ」
その言葉にソアリスは、カイルスは他国に行くつもりはないだろうことは理解していた。
「どこの誰なの?」
「エクラオース王国の大公家だよ」
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「ああ!陛下の嫌いな、ポンポリンとか、そんな名前だったわよね?」
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