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御縁談4
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「相性が良くないのでしょうね」
「ああ、そういうことなんだろうな」
「だからね、カイルスが会いたいと言わない限りは断ろうと思っていたのよ」
「それなら、良かったです」
カイルスはホッとしたような顔をして、アンセムは何が何でも断ろうと決めた。
「カイルスはどんな方が好ましいのだい?」
アンセムは今後のためにも聞いておこうと、訊ねてみることにした。
「一番はお母様のような女性ですけど、難しいことは分かっています。でも体も心も強い人が良いです」
そう言って、カイルスはソアリスに向かってにっこりと微笑んだ。
「そ、そうか」
「まあ!そう言ってくれるのはカイルスだけよ。ありがとう」
「本心ですから」
キャッキャウフフと、微笑み合うソアリスとカイルスであった。
そして、ソアリスが言ったようにユリウスとマイノスはそのようなことを、一度も言ってくれたことはない。
カイルスとの話は終わりとなったが、その後でアンセムとソアリスは、ユリウスとルルエ、マイノスとエクシアーヌを呼び、縁談について話すことにした。
ポシッジュのこと、関税のことを匂わせていること、カイルスは断りたいということも伝えた。
「エクラオース王国の……」
「公女様ですか」
「そんなことを匂わせるような縁談は、断りましょう」
「私もそれが良いと思います。輸入でしたら私も両親に話をしてみます」
ユリウス、ルルエ、マイノス、エクシアーヌの反応であった。
ユリウスとルルエも険しい顔をしていたが、マイノスとエクシアーヌの方が否定的にハッキリとしていた。
「エクシアーヌ、有難いが、それはまず考えてからにしよう」
「はい!申し訳ございません!カイルス様を望んでいないところに、婿に行くなど考えたくもなかったものですから」
エクシアーヌはマイノスのきょうだいを皆好きだが、カイルスは幼い頃から知っているために、ついつい熱くなってしまっていた。
「気持ちはありがとう。私も同じ気持ちだよ」
「私もです」
「私もでございます」
ユリウスとルルエも、口にはしなかっただけで同じ気持ちだった。
「皆、同じ気持ちだな。それで、皆は公女について何か聞いたことはあるか?」
「私はありません、ルルエはどうだ?」
知らないだけで、王太子夫妻、王子夫妻として会ったり、誰かから話を聞いていないかと訊ねることにした。
「私も見たこともありません」
「エクシアーヌは、何か知っているか?」
「いえ、私も大公夫妻には昔、会ったことはありますが、公女様は会ったことがありません。当時はまだ幼かったでしょうしね」
コーライ大公夫妻はロンド王国にやって来ていたが、公女を見ることはなかったために、一緒には来ていなかったのかもしれない。
「そう言えば、何て名前だったかしら?」
ソアリスも釣書を見ていたが、覚えてもいなかった。
「ソアリスは覚えられそうになかったものな。ピュアジュエル公女だよ」
「ああ……」
「まだ変な渾名は付けてはならぬぞ」
「えっ、ええ」
ソアリスは渋い顔をしており、何やら唸っており、まさかもう考えていたのかと思った。
「何だ、その顔はもう付けたのか?」
「いえ、まだ考えてもいないわ」
「だったら、その顔は何だ?」
「いえ、これは感覚だから、会ったこともない、知らない人にいくらなんでも失礼よね。親だって、一応ね……そうよ、ええ」
ソアリスは何かに納得したようだったが、アンセムは気になって仕方がない。
「何だ?怒らないから言ってみなさい」
まるで父親のような口振りだが、ソアリスはキリスにそのようなことは言われたことがないために、ピンと来ていない。
「何か、その……恥ずかしくない?」
「っく」
ユリウス、ルルエ、マイノス、エクシアーヌも全員が、口元を押さえたが、じりじりと漏れ出し、そのまま一気に皆が抑えながらも笑い出した。
「ああ、そういうことなんだろうな」
「だからね、カイルスが会いたいと言わない限りは断ろうと思っていたのよ」
「それなら、良かったです」
カイルスはホッとしたような顔をして、アンセムは何が何でも断ろうと決めた。
「カイルスはどんな方が好ましいのだい?」
アンセムは今後のためにも聞いておこうと、訊ねてみることにした。
「一番はお母様のような女性ですけど、難しいことは分かっています。でも体も心も強い人が良いです」
そう言って、カイルスはソアリスに向かってにっこりと微笑んだ。
「そ、そうか」
「まあ!そう言ってくれるのはカイルスだけよ。ありがとう」
「本心ですから」
キャッキャウフフと、微笑み合うソアリスとカイルスであった。
そして、ソアリスが言ったようにユリウスとマイノスはそのようなことを、一度も言ってくれたことはない。
カイルスとの話は終わりとなったが、その後でアンセムとソアリスは、ユリウスとルルエ、マイノスとエクシアーヌを呼び、縁談について話すことにした。
ポシッジュのこと、関税のことを匂わせていること、カイルスは断りたいということも伝えた。
「エクラオース王国の……」
「公女様ですか」
「そんなことを匂わせるような縁談は、断りましょう」
「私もそれが良いと思います。輸入でしたら私も両親に話をしてみます」
ユリウス、ルルエ、マイノス、エクシアーヌの反応であった。
ユリウスとルルエも険しい顔をしていたが、マイノスとエクシアーヌの方が否定的にハッキリとしていた。
「エクシアーヌ、有難いが、それはまず考えてからにしよう」
「はい!申し訳ございません!カイルス様を望んでいないところに、婿に行くなど考えたくもなかったものですから」
エクシアーヌはマイノスのきょうだいを皆好きだが、カイルスは幼い頃から知っているために、ついつい熱くなってしまっていた。
「気持ちはありがとう。私も同じ気持ちだよ」
「私もです」
「私もでございます」
ユリウスとルルエも、口にはしなかっただけで同じ気持ちだった。
「皆、同じ気持ちだな。それで、皆は公女について何か聞いたことはあるか?」
「私はありません、ルルエはどうだ?」
知らないだけで、王太子夫妻、王子夫妻として会ったり、誰かから話を聞いていないかと訊ねることにした。
「私も見たこともありません」
「エクシアーヌは、何か知っているか?」
「いえ、私も大公夫妻には昔、会ったことはありますが、公女様は会ったことがありません。当時はまだ幼かったでしょうしね」
コーライ大公夫妻はロンド王国にやって来ていたが、公女を見ることはなかったために、一緒には来ていなかったのかもしれない。
「そう言えば、何て名前だったかしら?」
ソアリスも釣書を見ていたが、覚えてもいなかった。
「ソアリスは覚えられそうになかったものな。ピュアジュエル公女だよ」
「ああ……」
「まだ変な渾名は付けてはならぬぞ」
「えっ、ええ」
ソアリスは渋い顔をしており、何やら唸っており、まさかもう考えていたのかと思った。
「何だ、その顔はもう付けたのか?」
「いえ、まだ考えてもいないわ」
「だったら、その顔は何だ?」
「いえ、これは感覚だから、会ったこともない、知らない人にいくらなんでも失礼よね。親だって、一応ね……そうよ、ええ」
ソアリスは何かに納得したようだったが、アンセムは気になって仕方がない。
「何だ?怒らないから言ってみなさい」
まるで父親のような口振りだが、ソアリスはキリスにそのようなことは言われたことがないために、ピンと来ていない。
「何か、その……恥ずかしくない?」
「っく」
ユリウス、ルルエ、マイノス、エクシアーヌも全員が、口元を押さえたが、じりじりと漏れ出し、そのまま一気に皆が抑えながらも笑い出した。
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