49 / 59
48.学校に復帰
しおりを挟む
再び朝がやってきた。私は、ベッドの上に立つ。
「我、完全復活なり!」
「うん。早く降りなよ」
お兄ちゃんは相変わらず、ドライだった。
私を気にすることなく、寝間着から普段着へと着替えている。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。もっと私を構いましょうよー」
「今、忙しいから」
「本当に学校好きですねー」
まあ、私も好きですけど。
今日から、私も学校に復帰する。
それによる完全復活宣言だったのだ。
「今日は、ブランコから飛ぶんだ」
「いきなり難度の高い技をやりますね」
「ゲルトがこの間やってたから」
「怪我には気をつけてくださいよ」
「うん」
そう会話しながら、私も普段着に着替える。今日もピンクのヒラヒラだ。
私の服にはフリルがふんだんに使われている。それは、お母さんが貴族だった影響だろうか。たぶん、そうなんだろうな。
ふんふんふーんと、鼻歌を歌いながら私は着替えを終える。
「お兄ちゃん、皆元気ですかね」
「皆、サキのこと心配してるよ」
「それは、本当に悪いことしましたね」
優しい皆のことだ。あのお花のお見舞いからも分かる通り、凄く気にかけてくれていたに違いない。
「本当に、元気になって良かったね」
お兄ちゃんが微笑む。優しい笑みに、私は嬉しくなる。
「はい! 元気ですよー!」
「でも、ベッドに立つのははしたないから」
「……うい」
お兄ちゃんに注意され、私は頷くのだった。
テーブルの上には、既にお弁当が置かれていた。ピンクの包みが私ので、青いのがお兄ちゃんのだ。
お父さん、毎朝お弁当ありがとうございます!
「二人とも、起きてきましたね」
「はい、お父さん!」
「おはよう、父さん」
お父さんはエプロンを外して、台所から出てくる。
「朝食はもうできていますから、さっさと顔を洗ってきなさい」
「はーい」
「分かった」
良い子の私たちは、言いつけに従う。
庭に出て、蛇口をひねる。
「ぷはー!」
「気持ちいい」
思いっきり水を浴びて、私とお兄ちゃんは持参したタオルで顔を拭く。
「お日様、キラキラしてますねー!」
「もう暑くなる時期だから」
「夏ですね!」
「うん」
このガルシア王国も、季節の呼び名は春夏秋冬だ。たぶん、日本の影響だと思う。
「夏になったら、お父さんの魔道具でかき氷作ってもらいましょう!」
「かきごおり?」
「冷たくて、美味しいんですよー!」
「食べてみたい」
きゃいきゃい騒ぎながら、私とお兄ちゃんは家のなかに入る。
「お父さん、かき氷食べたいです」
「かきごおり」
そう言ったら、お父さんはため息を吐いた。
「また、面倒なものを……」
「あれ、お父さん。かき氷知っているんですか?」
私が意外に思い聞くと、お父さんはそっぽを向いた。
「……む、昔。サラが、かきごおりを食べたいと言っていたんですよ」
「お母さんが……」
お母さん、日本のこと知っていたのかな。
「まず氷を作る魔道具を作って、それを粉砕する魔道具も必要でしたし。大変な思いをしました」
お父さんは、眉間にシワを寄せて言った。しかし……。
「つまり。我が家にはかき氷製造魔道具が、あるということですね!」
「あるんだね、父さん」
私とお兄ちゃんは、目を輝かせた。
お父さん、お母さんの為に未知の代物を作るとは。お母さん、愛されてますな。
「……整備が大変なので、時間が掛かりますよ」
お父さんは嫌そうに、口の端を歪める。
しかし、そんなお父さんの態度には慣れきっている私たちは、引かないのである。
「夏本番までに作れればいいですよー」
「冷たいもの食べたい」
まだ暑さは初夏だ。かき氷さまは、もっと太陽がギンギンになった頃に、堂々と登場なさればいいのである。
「……仕方ないですね」
お父さんがしぶしぶ呟いた。
私たちは更に目を輝かせる。
「やったー!」
「かきごおりー!」
ぴょんぴょん跳ねて万歳する。
「まったく、まだまだ子供ですね」
苦笑するお父さんに、私たちは笑いかける。
「お父さん、大好きー!」
「ありがとう」
「はいはい。さあ、朝食冷めてしまいます。席に着きなさい」
大好きの言葉はスルーされたかと思ったけど、よくよく見ればお父さんの耳赤い。照れているんだ。
「へへ……」
「なんですか、サキ。気味の悪い笑い声を出したりして」
「お父さん、酷い!」
私は騒ぎながら、席に座った。久しぶりのお粥以外の食事。美味しく頂きます!
学校に行く時間になり、私とお兄ちゃんはお弁当を鞄のなかに入れた。
「いいですか、ユーキ。貴方はお兄ちゃんです。病み上がりの妹の面倒はちゃんと見るんですよ」
「任せてよ、父さん」
「サキ、ユーキの言うことをちゃんと聞くんですよ」
「分かってますよ。私はできる子ですから」
胸を張ってそう言えば、お父さんは私にだけ疑惑の視線を突き刺した。解せぬ。
「それじゃあ、行ってきます」
「ええ、行ってらっしゃい」
お父さんに見送られ、私とお兄ちゃんは家を後にした。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。久しぶりの学校ですよ!」
「うん、そうだね。サキ、そこ石がある。転ばないようにね」
「おっと。お兄ちゃん、楽しみです」
「うん。サキ、前を見て。本屋の看板にぶつかるよ」
「本当ですね。危なかったです」
お兄ちゃんに色々注意されながら、私は学校への道を歩く。
「サキ。浮かれすぎ。気をつけて」
「はーい」
確かに多少浮かれている気がする。だって、久しぶりの学校なのだ。皆、元気かなぁ。
自分がここまで学校を好きになるとは、日本にいた頃には考えられないことだ。
私、子供時代を満喫している。学校に行くと、そう感じられて、嬉しくなるのだ。
「あっ、エリーゼ先生だ!」
学校が見えてくると、学校の入り口で立っているエリーゼ先生の姿も見えてきた。
「サキ。走っちゃ駄目だよ。体力はまだ戻ってないんだから」
「はーい」
うずうずしながらも、私は走らずにちょっと速度を上げて歩いた。
「エリーゼ先生! おはようございます!」
「おはよう、サキちゃん。元気になったのね。良かったわ」
「はい! もう、大丈夫です」
そう元気いっぱいに言えば、頭を撫でられた。えへへ。
「元気でよろしい。ユーキくんもおはよう」
「おはようございます」
ぺこりと、お兄ちゃんは頭を下げる。
「うんうん。二人とも元気でよろしい。さ、教室に行きなさい」
「はい!」
「うん」
エリーゼ先生に促され、私とお兄ちゃんは教室に向かった。
「皆、おっはよー!」
教室の扉を開けると、私は大きな声で挨拶した。こんな大胆なことができるようになったのは、この学校に通うようになってからだ。
「あっ!」
「サキちゃん!」
「おはよう、もう大丈夫なの?」
教室にいた子たちが、一斉に反応してくれる。
「はい! もう大丈夫です!」
「サキは熱も下がったし、食欲もあるから。もう大丈夫」
お兄ちゃんもそう言ってくれたので、皆はほっと息を吐いた。
「良かったー!」
「村で、サキちゃんが高熱出して、意識がないって話を聞いてずっと心配だったんだよ」
「皆……」
私は感動で、胸がいっぱいになる。
私はなんて、幸せ者なのだろう!
こんなにも心配してくれる友達がいてくれる。
「皆、ありがとうございます!」
私はお礼を口にした。ごめんなさいより、ありがとうの言葉がいい。お兄ちゃんの言った通りだ。
「あっ、サキちゃん!」
「サキ、もう大丈夫なの?」
「気持ち悪いとか、ない?」
カレンちゃん、リューンちゃん、エミリちゃんが、教室に入るなり口々に私を心配してくれた。
「はい。大丈夫ですよ。お見舞いもありがとうございました」
「ううん、いいんだよ」
「お花、気に入ってくれた?」
「はい! とても綺麗でした!」
私がそう言うと、クラスの皆が嬉しそうにした。
お兄ちゃんから聞いたけど、クラスの皆がお金を出し合って買ってくれたお花なんだよね。大事に扱わせてもらってますよ。
「これで、ユーキも安心だね!」
「ユーキくん、サキちゃんが休んでる間、元気なかったもんねー」
リューンちゃんとエミリちゃんの言葉に、お兄ちゃんは顔を赤くさせた。
「……だって、心配だった、から」
「お兄ちゃん……」
胸がきゅんとした。お兄ちゃんの双子愛に、私の心臓が撃ち抜かれたのだ。
「お兄ちゃん、大好き!」
「うん」
お父さんとは違って、お兄ちゃんはあっさり私の好意を受け入れた。素直なお兄ちゃん、素敵。
「ふふ、仲いいね」
カレンちゃんが微笑ましく笑う。
「よしよし、サキも復帰したし。これで私たちも勉強に身が入るよ」
リューンちゃんが腕を組んで、うんうん頷いた。
その時、教室の扉が勢いよく開いた。
「サキのやつ、復活したって本当か!」
飛び込んできたのは、ゲルトくんだ。
「はい。復活しましたよ!」
私はビシッと、敬礼した。
ゲルトくんは、涙ぐんでいる。
「そうか、良かったな!」
「ゲルトくん……」
ゲルトくんも、私を心配してくれていたのだと分かり、私はまた感動した。
このクラスは、良い子ばかりだ。
「あ、ゲルト。泣いてんの?」
「うるせー、感動の涙だよ!」
リューンちゃんとゲルトくんがいつもの口喧嘩を始める。
こうなると、エリーゼ先生以外には止められないので、皆は自分の席に戻る。
私も、久々の我が席に着く。
「サキちゃん、良くなって良かったね」
隣の席のサリュくんが、話しかけてきた。
「はい! ご心配おかけしました」
「ううん。あの、サキちゃんが元気になっただけで、皆嬉しいんだよ」
「サリュくん……」
なんだろう。このクラスは、私を感動させるのが上手すぎやしないだろうか。
私の胸はぽかぽかだ。
「また、よろしくね」
「はい! サリュくん!」
私は、笑顔を浮かべる。
「また、勉強を教えてくださいね」
「もちろんだよ」
サリュくんも笑顔で応えてくれる。
うん、お兄ちゃん。学校って、やっぱり良いですね。
私は再認識した。
「はーい、皆さん。楽しい授業の始まりよー!」
教室に入ってきたエリーゼ先生に、私は皆と声を合わせる。
「はーい!」
楽しい楽しい、学校の始まりだ!
「我、完全復活なり!」
「うん。早く降りなよ」
お兄ちゃんは相変わらず、ドライだった。
私を気にすることなく、寝間着から普段着へと着替えている。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。もっと私を構いましょうよー」
「今、忙しいから」
「本当に学校好きですねー」
まあ、私も好きですけど。
今日から、私も学校に復帰する。
それによる完全復活宣言だったのだ。
「今日は、ブランコから飛ぶんだ」
「いきなり難度の高い技をやりますね」
「ゲルトがこの間やってたから」
「怪我には気をつけてくださいよ」
「うん」
そう会話しながら、私も普段着に着替える。今日もピンクのヒラヒラだ。
私の服にはフリルがふんだんに使われている。それは、お母さんが貴族だった影響だろうか。たぶん、そうなんだろうな。
ふんふんふーんと、鼻歌を歌いながら私は着替えを終える。
「お兄ちゃん、皆元気ですかね」
「皆、サキのこと心配してるよ」
「それは、本当に悪いことしましたね」
優しい皆のことだ。あのお花のお見舞いからも分かる通り、凄く気にかけてくれていたに違いない。
「本当に、元気になって良かったね」
お兄ちゃんが微笑む。優しい笑みに、私は嬉しくなる。
「はい! 元気ですよー!」
「でも、ベッドに立つのははしたないから」
「……うい」
お兄ちゃんに注意され、私は頷くのだった。
テーブルの上には、既にお弁当が置かれていた。ピンクの包みが私ので、青いのがお兄ちゃんのだ。
お父さん、毎朝お弁当ありがとうございます!
「二人とも、起きてきましたね」
「はい、お父さん!」
「おはよう、父さん」
お父さんはエプロンを外して、台所から出てくる。
「朝食はもうできていますから、さっさと顔を洗ってきなさい」
「はーい」
「分かった」
良い子の私たちは、言いつけに従う。
庭に出て、蛇口をひねる。
「ぷはー!」
「気持ちいい」
思いっきり水を浴びて、私とお兄ちゃんは持参したタオルで顔を拭く。
「お日様、キラキラしてますねー!」
「もう暑くなる時期だから」
「夏ですね!」
「うん」
このガルシア王国も、季節の呼び名は春夏秋冬だ。たぶん、日本の影響だと思う。
「夏になったら、お父さんの魔道具でかき氷作ってもらいましょう!」
「かきごおり?」
「冷たくて、美味しいんですよー!」
「食べてみたい」
きゃいきゃい騒ぎながら、私とお兄ちゃんは家のなかに入る。
「お父さん、かき氷食べたいです」
「かきごおり」
そう言ったら、お父さんはため息を吐いた。
「また、面倒なものを……」
「あれ、お父さん。かき氷知っているんですか?」
私が意外に思い聞くと、お父さんはそっぽを向いた。
「……む、昔。サラが、かきごおりを食べたいと言っていたんですよ」
「お母さんが……」
お母さん、日本のこと知っていたのかな。
「まず氷を作る魔道具を作って、それを粉砕する魔道具も必要でしたし。大変な思いをしました」
お父さんは、眉間にシワを寄せて言った。しかし……。
「つまり。我が家にはかき氷製造魔道具が、あるということですね!」
「あるんだね、父さん」
私とお兄ちゃんは、目を輝かせた。
お父さん、お母さんの為に未知の代物を作るとは。お母さん、愛されてますな。
「……整備が大変なので、時間が掛かりますよ」
お父さんは嫌そうに、口の端を歪める。
しかし、そんなお父さんの態度には慣れきっている私たちは、引かないのである。
「夏本番までに作れればいいですよー」
「冷たいもの食べたい」
まだ暑さは初夏だ。かき氷さまは、もっと太陽がギンギンになった頃に、堂々と登場なさればいいのである。
「……仕方ないですね」
お父さんがしぶしぶ呟いた。
私たちは更に目を輝かせる。
「やったー!」
「かきごおりー!」
ぴょんぴょん跳ねて万歳する。
「まったく、まだまだ子供ですね」
苦笑するお父さんに、私たちは笑いかける。
「お父さん、大好きー!」
「ありがとう」
「はいはい。さあ、朝食冷めてしまいます。席に着きなさい」
大好きの言葉はスルーされたかと思ったけど、よくよく見ればお父さんの耳赤い。照れているんだ。
「へへ……」
「なんですか、サキ。気味の悪い笑い声を出したりして」
「お父さん、酷い!」
私は騒ぎながら、席に座った。久しぶりのお粥以外の食事。美味しく頂きます!
学校に行く時間になり、私とお兄ちゃんはお弁当を鞄のなかに入れた。
「いいですか、ユーキ。貴方はお兄ちゃんです。病み上がりの妹の面倒はちゃんと見るんですよ」
「任せてよ、父さん」
「サキ、ユーキの言うことをちゃんと聞くんですよ」
「分かってますよ。私はできる子ですから」
胸を張ってそう言えば、お父さんは私にだけ疑惑の視線を突き刺した。解せぬ。
「それじゃあ、行ってきます」
「ええ、行ってらっしゃい」
お父さんに見送られ、私とお兄ちゃんは家を後にした。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。久しぶりの学校ですよ!」
「うん、そうだね。サキ、そこ石がある。転ばないようにね」
「おっと。お兄ちゃん、楽しみです」
「うん。サキ、前を見て。本屋の看板にぶつかるよ」
「本当ですね。危なかったです」
お兄ちゃんに色々注意されながら、私は学校への道を歩く。
「サキ。浮かれすぎ。気をつけて」
「はーい」
確かに多少浮かれている気がする。だって、久しぶりの学校なのだ。皆、元気かなぁ。
自分がここまで学校を好きになるとは、日本にいた頃には考えられないことだ。
私、子供時代を満喫している。学校に行くと、そう感じられて、嬉しくなるのだ。
「あっ、エリーゼ先生だ!」
学校が見えてくると、学校の入り口で立っているエリーゼ先生の姿も見えてきた。
「サキ。走っちゃ駄目だよ。体力はまだ戻ってないんだから」
「はーい」
うずうずしながらも、私は走らずにちょっと速度を上げて歩いた。
「エリーゼ先生! おはようございます!」
「おはよう、サキちゃん。元気になったのね。良かったわ」
「はい! もう、大丈夫です」
そう元気いっぱいに言えば、頭を撫でられた。えへへ。
「元気でよろしい。ユーキくんもおはよう」
「おはようございます」
ぺこりと、お兄ちゃんは頭を下げる。
「うんうん。二人とも元気でよろしい。さ、教室に行きなさい」
「はい!」
「うん」
エリーゼ先生に促され、私とお兄ちゃんは教室に向かった。
「皆、おっはよー!」
教室の扉を開けると、私は大きな声で挨拶した。こんな大胆なことができるようになったのは、この学校に通うようになってからだ。
「あっ!」
「サキちゃん!」
「おはよう、もう大丈夫なの?」
教室にいた子たちが、一斉に反応してくれる。
「はい! もう大丈夫です!」
「サキは熱も下がったし、食欲もあるから。もう大丈夫」
お兄ちゃんもそう言ってくれたので、皆はほっと息を吐いた。
「良かったー!」
「村で、サキちゃんが高熱出して、意識がないって話を聞いてずっと心配だったんだよ」
「皆……」
私は感動で、胸がいっぱいになる。
私はなんて、幸せ者なのだろう!
こんなにも心配してくれる友達がいてくれる。
「皆、ありがとうございます!」
私はお礼を口にした。ごめんなさいより、ありがとうの言葉がいい。お兄ちゃんの言った通りだ。
「あっ、サキちゃん!」
「サキ、もう大丈夫なの?」
「気持ち悪いとか、ない?」
カレンちゃん、リューンちゃん、エミリちゃんが、教室に入るなり口々に私を心配してくれた。
「はい。大丈夫ですよ。お見舞いもありがとうございました」
「ううん、いいんだよ」
「お花、気に入ってくれた?」
「はい! とても綺麗でした!」
私がそう言うと、クラスの皆が嬉しそうにした。
お兄ちゃんから聞いたけど、クラスの皆がお金を出し合って買ってくれたお花なんだよね。大事に扱わせてもらってますよ。
「これで、ユーキも安心だね!」
「ユーキくん、サキちゃんが休んでる間、元気なかったもんねー」
リューンちゃんとエミリちゃんの言葉に、お兄ちゃんは顔を赤くさせた。
「……だって、心配だった、から」
「お兄ちゃん……」
胸がきゅんとした。お兄ちゃんの双子愛に、私の心臓が撃ち抜かれたのだ。
「お兄ちゃん、大好き!」
「うん」
お父さんとは違って、お兄ちゃんはあっさり私の好意を受け入れた。素直なお兄ちゃん、素敵。
「ふふ、仲いいね」
カレンちゃんが微笑ましく笑う。
「よしよし、サキも復帰したし。これで私たちも勉強に身が入るよ」
リューンちゃんが腕を組んで、うんうん頷いた。
その時、教室の扉が勢いよく開いた。
「サキのやつ、復活したって本当か!」
飛び込んできたのは、ゲルトくんだ。
「はい。復活しましたよ!」
私はビシッと、敬礼した。
ゲルトくんは、涙ぐんでいる。
「そうか、良かったな!」
「ゲルトくん……」
ゲルトくんも、私を心配してくれていたのだと分かり、私はまた感動した。
このクラスは、良い子ばかりだ。
「あ、ゲルト。泣いてんの?」
「うるせー、感動の涙だよ!」
リューンちゃんとゲルトくんがいつもの口喧嘩を始める。
こうなると、エリーゼ先生以外には止められないので、皆は自分の席に戻る。
私も、久々の我が席に着く。
「サキちゃん、良くなって良かったね」
隣の席のサリュくんが、話しかけてきた。
「はい! ご心配おかけしました」
「ううん。あの、サキちゃんが元気になっただけで、皆嬉しいんだよ」
「サリュくん……」
なんだろう。このクラスは、私を感動させるのが上手すぎやしないだろうか。
私の胸はぽかぽかだ。
「また、よろしくね」
「はい! サリュくん!」
私は、笑顔を浮かべる。
「また、勉強を教えてくださいね」
「もちろんだよ」
サリュくんも笑顔で応えてくれる。
うん、お兄ちゃん。学校って、やっぱり良いですね。
私は再認識した。
「はーい、皆さん。楽しい授業の始まりよー!」
教室に入ってきたエリーゼ先生に、私は皆と声を合わせる。
「はーい!」
楽しい楽しい、学校の始まりだ!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
286
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる