ドラゴンハンター

ことは

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第一章 ドラゴンハンター01 戸井圭吾

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 圭吾は橋本と二人で、地下の駐車場に降りた。駐車場はところどころに灯りがともっていたが、全体的に薄暗かった。

 橋本は白衣を脱いでいた。黒のTシャツに黒のパンツ。白衣の時とは大分印象が変わる。さっそうと歩く姿は、映画に出てくるスパイみたいだった。

「念のため、確認」

 歩きながら橋本が言った。

「妹さん……結衣ちゃんの体から、火花が散るのを見た?」

「はい。見ました」

「火花を見た時、部屋は明るかった? 暗かった?」

「今朝のことだから、明るかったです」

「ドラゴンが寄生していると考えて間違いなさそうだね。静電気程度のエネルギーでは、明るい場所で火花なんて、なかなか見えないだろうから」

 広い駐車場に、車は3台しか停まっていない。黒い車に近づくと、橋本がポケットから車のキーを取り出し、ロックを解除する。

「火花が散るのは、ドラゴンに寄生されている人間の特徴なんだが、静電気と間違えやすいから、注意が必要だ」

 橋本が、車のドアに手をかけた瞬間、バチンと音がした。同時に閃光が走る。

 イテッと、橋本が手を振った。

「これは、ただの静電気だから、ご心配なく。ぼく、静電気をためやすい体質なんで」

「あ、はい。今、思い切り火花が散りましたけど、ここ、暗いですもんね」

 圭吾は助手席に乗りこんだ。

「けど、君はすごいね。訓練もなしに、ドラゴンを瞬間移動させたんだから」

 車を走らせながら、橋本が言った。

「瞬間移動?」

「そうだ。圭吾くんは、密閉されたガラスケースから外の世界へ、ドラゴンを呼び出したんだよ」

 橋本が感心したように言った。

「ドラゴンは瞬間移動ができる。ただし、単独ではできない。君は、ドラゴンがガラスケースの外に出ることを想像しただろう?」

「はい。どうしても触ってみたくなっちゃって」

「君の想像力をエネルギー源にして、ドラゴンは瞬間移動したんだ。訓練すれば、テレパシーでドラゴンを操ることも可能だ」

「本当ですか?」

 圭吾は驚いて言った。

「あぁ。人に寄生していないドラゴンなら、簡単に捕まえられるようになるよ」

「人に寄生していたら、ダメなの?」

「ドラゴンだって、獲物を奪われるとなれば凶暴になる」

「じゃぁ、結衣の中にいるドラゴンは簡単には出てこない?」

 圭吾は胸が締め付けられるようだった。

「直接対決したら、こっちが大怪我をするかもしれない。だからコイツに戦わせるのさ」

 赤信号で止まると、橋本はTシャツの首の間から透明のビンを取り出した。ビンには鎖がついていて、橋本はネックレスのようにそれを首から下げていた。

 橋本は片手で鎖を首から外し、圭吾にそれを渡した。

 薬が入っているビンに似ていたが、ビンには金属の蓋がない。

ビンの中でなにかがうごめいていた。

「ドラゴンだ」

 圭吾はため息とともにつぶやいた。

 そのドラゴンは、ほとんど黒に近い深緑色をしていた。結衣に寄生したドラゴンとは違い、たてがみと瞳も漆黒に輝いていた。

「それは、ぼくの身を守ってくれる、身守りドラゴンだ。名前はロザーン。念じれば、ぼくの指示に従う」

「すごい……」

 圭吾はドラゴンを見つめた。

 ほんの数日前までは見えなかったものが、今ではあたりまえのように見える。圭吾は、次々と新しい扉が開いていくような気がした。

 ドラゴンは、ずっと昔から存在していると橋本は言った。見ようとすれば、ずっと近くにあった世界なのに、それは圭吾の全く知らない世界だった。

「ドラゴンってぼく、もっと大きなものをイメージしてたけど、こんなに小さいんですね」

「そのドラゴンはまだ、赤ちゃんだからね」

「どのくらいまで大きくなるんですか?」

 圭吾は橋本を見た。橋本は残念そうな顔をしている。

「ドラゴンの成体については、まだなにもわかっていないんだ。なぜか20センチ以上に成長すると、ドラゴンは見えなくなってしまうんだよ」

「20センチになったら死んで、消えてしまうとか?」

「そうじゃない……とぼくは考えている。すべては予測の範囲を出ないんだが」

 橋本が黙った。車は緩く右にカーブする。

「ぼくは13歳の時に一度だけ、ドラゴンの成体を見たことがあるんだ。すごい光景だったよ。ふと見上げた空に、ドラゴンの大群が飛び交っていたんだ。体長5メートルはあったと思う」

 圭吾はゴクンと唾を飲んだ。

 車の窓から、空を見上げる。もしかしたら見えないだけで、上空には巨大なドラゴンが翼を広げているのだろうか。

 今の圭吾に見えるのは、青い空と白い雲、飛行機が飛んだ後にできる白い光の筋だけだった。

「しかしドラゴンが見えたのはほんの数分の間だけだった。ドラゴンの成体を見るには、想像力に加えてなにかほかに、特殊な条件が必要なのかもしれない。だが、その条件がわからずに今に至る」

 橋本は、圭吾の家の近くの広場に車を停めた。ちょうどお昼時で、遊んでいる人は誰もいなかった。

「結衣ちゃんを連れて来られる? 無理そうなら自宅に伺うけど、できれば屋外が望ましい。ドラゴンが相当暴れるだろうから」

「意地でも連れてきます」

 圭吾は車から降りて走った。
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