ドラゴンハンター

ことは

文字の大きさ
上 下
15 / 43
第一章 ドラゴンハンター01 戸井圭吾

1-15

しおりを挟む
「ちょっと二人ともどこ行くの? もうお昼ご飯よ」

 予想はしていたが、お母さんに引き留められた。

「広場に行ってくる。すぐ戻るから!」

 圭吾は結衣の手をひっぱった。

「え~、ショッピングセンターじゃないの?」

 結衣が不満そうに言った。

「ショッピングセンターじゃなきゃ行かないもん」

 結衣は玄関で立ちどまってしまう。

 圭吾は結衣の全身を調べるように見た。火花が散っている様子はない。

 もしかしたらすでに、ドラゴンがどこかへ行ってしまったのではないかと期待する。

 だが、次の瞬間、結衣の髪の毛の間で、バチバチと火花が散った。

「広場ですごくいいものを見つけたんだ」

 圭吾は適当に嘘をついた。結衣をだますようで後ろめたかったが、そんなことを気にしている場合ではなかった。

「いいものってなに?」

「内緒だよ。行ってからのお楽しみ」

 とにかく結衣を、広場へ連れて行かなければならない。

「先に言わなきゃ嫌だもん」

 結衣が口をとがらせた。

「じゃぁ玄関の外に出たら言う」

 圭吾が言うと、結衣はしぶしぶ玄関の外に出た。

「はい、出たよ。いいものってなに?」

 結衣が腰に手を当てた。

「なんだと思う?」

「わからないよ」

「あそこの門の外まで出たら教える」

 圭吾は石造りの門を指さした。

 門までは3メートル程度の石畳が続く。石畳の周りには、白や桃色の日日草、橙色のミニバラなどが咲いていた。小さな庭だが、お母さんが丁寧に手入れをしている。

「やだ。今教えて」

 結衣が圭吾をにらみつける。

 圭吾が次の作戦を考えていると、
「こんにちは」
と後ろから声がした。

 振り返ると、門の所に橋本が立っていた。

「なかなか苦戦しているようだね」

 橋本がにっこり笑う。橋本はそのまま門を通り抜け、こっちにやってきた。胸にはドラゴンの入ったビンが揺れている。

「ちょっと下がってて」

 橋本が圭吾に言った。圭吾は数歩後ろに下がった。

 橋本が結衣の前に立ちはだかる。背の高い橋本に、結衣は怯えたような顔をした。

「こんにちは」

 橋本が、結衣の前にしゃがんだ。

 結衣が目を見開く。結衣の髪の辺りで、次々と激しい火花が散った。火花はどんどん大きくなっていく。

「こっちに出てきてくれるかな」

 顔は笑っているが、橋本の声には迫力があった。

 橋本は、おそらく結衣に話しかけているのではない。結衣の中にいるドラゴンに話しかけているのだ。

「いやっ」

 結衣が橋本の胸を両手で突いた。結衣の口から大きな火柱が上がる。

 一瞬、辺りが熱くなる。圭吾は、ひっと息を飲んだ。

 橋本が素早く後ろに飛び去った。橋本の鼻先すれすれまで炎が渦巻いて見えた。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

魔法のステッキ

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

踊るねこ

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

小悪魔ノート

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

ちょっとだけマーメイド~暴走する魔法の力~

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

リンネは魔法を使わない

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:5

都合のいい友だち

ホラー / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:3

おばけ育成ゲーム

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:4

演じる家族

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

処理中です...