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第一章 ドラゴンハンター01 戸井圭吾
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「ちょっと二人ともどこ行くの? もうお昼ご飯よ」
予想はしていたが、お母さんに引き留められた。
「広場に行ってくる。すぐ戻るから!」
圭吾は結衣の手をひっぱった。
「え~、ショッピングセンターじゃないの?」
結衣が不満そうに言った。
「ショッピングセンターじゃなきゃ行かないもん」
結衣は玄関で立ちどまってしまう。
圭吾は結衣の全身を調べるように見た。火花が散っている様子はない。
もしかしたらすでに、ドラゴンがどこかへ行ってしまったのではないかと期待する。
だが、次の瞬間、結衣の髪の毛の間で、バチバチと火花が散った。
「広場ですごくいいものを見つけたんだ」
圭吾は適当に嘘をついた。結衣をだますようで後ろめたかったが、そんなことを気にしている場合ではなかった。
「いいものってなに?」
「内緒だよ。行ってからのお楽しみ」
とにかく結衣を、広場へ連れて行かなければならない。
「先に言わなきゃ嫌だもん」
結衣が口をとがらせた。
「じゃぁ玄関の外に出たら言う」
圭吾が言うと、結衣はしぶしぶ玄関の外に出た。
「はい、出たよ。いいものってなに?」
結衣が腰に手を当てた。
「なんだと思う?」
「わからないよ」
「あそこの門の外まで出たら教える」
圭吾は石造りの門を指さした。
門までは3メートル程度の石畳が続く。石畳の周りには、白や桃色の日日草、橙色のミニバラなどが咲いていた。小さな庭だが、お母さんが丁寧に手入れをしている。
「やだ。今教えて」
結衣が圭吾をにらみつける。
圭吾が次の作戦を考えていると、
「こんにちは」
と後ろから声がした。
振り返ると、門の所に橋本が立っていた。
「なかなか苦戦しているようだね」
橋本がにっこり笑う。橋本はそのまま門を通り抜け、こっちにやってきた。胸にはドラゴンの入ったビンが揺れている。
「ちょっと下がってて」
橋本が圭吾に言った。圭吾は数歩後ろに下がった。
橋本が結衣の前に立ちはだかる。背の高い橋本に、結衣は怯えたような顔をした。
「こんにちは」
橋本が、結衣の前にしゃがんだ。
結衣が目を見開く。結衣の髪の辺りで、次々と激しい火花が散った。火花はどんどん大きくなっていく。
「こっちに出てきてくれるかな」
顔は笑っているが、橋本の声には迫力があった。
橋本は、おそらく結衣に話しかけているのではない。結衣の中にいるドラゴンに話しかけているのだ。
「いやっ」
結衣が橋本の胸を両手で突いた。結衣の口から大きな火柱が上がる。
一瞬、辺りが熱くなる。圭吾は、ひっと息を飲んだ。
橋本が素早く後ろに飛び去った。橋本の鼻先すれすれまで炎が渦巻いて見えた。
予想はしていたが、お母さんに引き留められた。
「広場に行ってくる。すぐ戻るから!」
圭吾は結衣の手をひっぱった。
「え~、ショッピングセンターじゃないの?」
結衣が不満そうに言った。
「ショッピングセンターじゃなきゃ行かないもん」
結衣は玄関で立ちどまってしまう。
圭吾は結衣の全身を調べるように見た。火花が散っている様子はない。
もしかしたらすでに、ドラゴンがどこかへ行ってしまったのではないかと期待する。
だが、次の瞬間、結衣の髪の毛の間で、バチバチと火花が散った。
「広場ですごくいいものを見つけたんだ」
圭吾は適当に嘘をついた。結衣をだますようで後ろめたかったが、そんなことを気にしている場合ではなかった。
「いいものってなに?」
「内緒だよ。行ってからのお楽しみ」
とにかく結衣を、広場へ連れて行かなければならない。
「先に言わなきゃ嫌だもん」
結衣が口をとがらせた。
「じゃぁ玄関の外に出たら言う」
圭吾が言うと、結衣はしぶしぶ玄関の外に出た。
「はい、出たよ。いいものってなに?」
結衣が腰に手を当てた。
「なんだと思う?」
「わからないよ」
「あそこの門の外まで出たら教える」
圭吾は石造りの門を指さした。
門までは3メートル程度の石畳が続く。石畳の周りには、白や桃色の日日草、橙色のミニバラなどが咲いていた。小さな庭だが、お母さんが丁寧に手入れをしている。
「やだ。今教えて」
結衣が圭吾をにらみつける。
圭吾が次の作戦を考えていると、
「こんにちは」
と後ろから声がした。
振り返ると、門の所に橋本が立っていた。
「なかなか苦戦しているようだね」
橋本がにっこり笑う。橋本はそのまま門を通り抜け、こっちにやってきた。胸にはドラゴンの入ったビンが揺れている。
「ちょっと下がってて」
橋本が圭吾に言った。圭吾は数歩後ろに下がった。
橋本が結衣の前に立ちはだかる。背の高い橋本に、結衣は怯えたような顔をした。
「こんにちは」
橋本が、結衣の前にしゃがんだ。
結衣が目を見開く。結衣の髪の辺りで、次々と激しい火花が散った。火花はどんどん大きくなっていく。
「こっちに出てきてくれるかな」
顔は笑っているが、橋本の声には迫力があった。
橋本は、おそらく結衣に話しかけているのではない。結衣の中にいるドラゴンに話しかけているのだ。
「いやっ」
結衣が橋本の胸を両手で突いた。結衣の口から大きな火柱が上がる。
一瞬、辺りが熱くなる。圭吾は、ひっと息を飲んだ。
橋本が素早く後ろに飛び去った。橋本の鼻先すれすれまで炎が渦巻いて見えた。
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