都合のいい友だち

ことは

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7 見えない子

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「残念だったね」

 家に帰ると、すぐにお母さんに言われた。

「え? なにが?」

 さゆりは、リビングのソファに腰かけた。

 お母さんも隣に座る。

「ミサちゃん、お休みだったでしょ?」

「えっ、ミサちゃん来てたよ。お母さん、ちゃんと見てた? ミサちゃんは、わたしの左の席の子だよ」

 お母さんが不審そうに眉をひそめる。

「さゆりの左の席には、誰も座ってなかったよ」

「そんなはずないよ。お母さん、目が悪いんじゃない?」

 さゆりは口をとがらせた。

「右隣の席は、小学校が一緒だった今野はるかちゃんよね?」

「うん、そうだけど」

「はるかちゃんのお母さんがいたから、聞いてみたの。隣の席のミサちゃんって子、今日お休みなのかなって」

 お母さんが困ったような顔をする。

「はるかちゃんのお母さん、なんて言ってた?」

「ミサちゃんじゃなくて、ミキちゃんよって、まず笑われた」

「名前間違えてるのは、はるかちゃんのお母さんの方なのに」

 さゆりはゲラゲラ笑った。

「石上ミキちゃんって、呼んでたよ。はるかちゃんのお母さんは」

「微妙に違う。石田ミサちゃんだよ」

 さゆりはすかさず訂正した。まだ笑いが止まらなかった。

「でもね、お母さん不思議に思ってクラス名簿を出してきたの。ほら見て」

 お母さんが指さしたところを、さゆりはじっと見た。

「あっ、石上ミキって書いてある。石田ミサちゃんとは別の子? もう一人似た名前の子がいるの?」

 お母さんが首を横に振る。

「クラス名簿に、石田ミサちゃんって子はいないの。さゆりが間違って覚えたのかもしれない」

「えっ、そんなはずないよ。ミサちゃんって呼んでも訂正されたことないもん。もし本当に間違ってたら、すごく失礼じゃない?」

 さゆりは名簿を隅から隅まで見ながら言った。

「でもやっぱりわたしが、名前を間違えて覚えていたのかも……」

 確かに石田ミサという子はいなかった。

「石上ミキちゃんはね、中学校に入ってから一度も学校に来てないって、はるかちゃんのお母さんが言ってたわ」

「でも、二日前から来てるよ。はるかちゃんのお母さんが知らないだけじゃない?」

「そうかもね。いくら家が隣だからって、朝から晩まで見張ってるわけじゃないし」

 お母さんの言うことに、さゆりは驚いた。

「まって、家が隣? はるかちゃんの家の隣なの? ミサちゃんは小学校区が違うのに」

「あー、それね。中学校に入ってから引っ越してきたみたい。小学生の時はアパートに住んでたんだけど、一戸建てを新築したんだって」

「そういうことか……でも」

 さゆりはもっとおかしなことに気が付いた。

「はるかちゃんの家って、学校の近くだよね?」

「そうよ」

 おかあさんがうなずいた。

 学校を出て家に向かうには、はるかはさゆりと反対方向に進む。そのはるかの家の隣に、ミサは住んでいるという。

「ミサちゃん、わたしの家まで毎日一緒に帰ってきてたんだよね。方向が一緒だからって」

「それはおかしいわねぇ」
 
 お母さんが腕を組んだ。

「どういうことなんだろう」

 さゆりは何がなんだかわからなかった。

「ねぇ、さゆり。今日、本当にミサちゃんは学校に来てたの?」

「来てたよ」

「英語の授業の時、さゆりの隣に座って授業を受けてた?」

「もちろんだよ。なんでそんなこと聞くの?」

「お母さんには、隣にはだれも座っていないように見えたわ」

「お母さんの目がおかしいんだよ」
 
 さゆりは吐き捨てるように言った。

「でも、はるかちゃんのお母さんも、ミキちゃんは学校に来てないって言ってたわ」

「それは、はるかちゃんのお母さんがおかしいんだよ」

 涙目になって、さゆりはお母さんに訴えた。

「どうして信じてくれないの?」

 はぁっと、お母さんが大きなため息をつく。

「わたし、ミサちゃんの家に行って、今から確かめてみる。お母さんも一緒に来て。そうしたら、ミサちゃんが学校に来てたことがちゃんとわかるから」

「ミサちゃんの家に行くの? それとも石上ミキちゃんの家?」

 お母さんが念を押すように聞く。

「石上ミキちゃんの家。だって、ミサちゃんは名簿に載ってないもの。わたしの隣の席が、石上ミキちゃんの席だっていうなら、ミサちゃんはミキちゃんってことだから」

「そうね。お母さんもミサちゃんだかミキちゃんに会って、本当のことを確かめたいわ」
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