都合のいい友だち

ことは

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8 全くの別人

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「やっぱり新築っていいわねぇ」

 お母さんは車を停めると、石上ミキの家を見ながらうらやましそうな顔をした。

 表札には間違いなく『石上』と書かれていた。

 2階建てのモノトーンのおしゃれな外壁に、かわいらしい花々で整えられた庭。2台分の駐車スペースがあったが、車は停まっていなかった。

「人の家の駐車場に勝手に停めるわけにもいかないから、留守ならここで待つしかないかしら」

 お母さんは少し離れた路肩に車を停めたまま、ハザードランプを点滅させた。
 
 数分後。駐車スペースに黒い軽自動車が入ってきた。

「行ってみましょう」

 お母さんが、車のドアを開けようとした。

「待って」

 さゆりは、お母さんの腕をひっぱった。

「あの子は、ミサちゃんじゃない」

 車から降りてきた女の子は、ショートカットで眼鏡をかけていた。髪を伸ばして眼鏡を外したところで、どう見てもミサとは全くの別人だった。

「あの子が石田ミサちゃんじゃないとしても、石上ミキちゃんかどうかを確かめなくちゃ」

 お母さんが、強引に車から降りる。

「ちょっと、お母さんってば」
 
 しかたなくさゆりも車から降りたが、近づくのは怖くて車の陰から見守った。

「こんにちは」

 お母さんが、女の子のお母さんに声をかけた。

「ミキ、これ持って行って」

 ミキと呼ばれた子は、買い物袋を受け取ると、逃げるように家に入ってしまった。

「あの、なにかの営業とかでしたら、うちは全部お断りしてるんで」

 ミキのお母さんが、不審そうな顔をする。

「いえ、うちの子が隣のはるかちゃんとお友達で、今お迎えに来て帰るところなんです」

 お母さんがさゆりの方を指さす。

 気まずくなってさゆりはうつむいた。

「なんだ、そうだったの。失礼しました」

 ミキのお母さんが、はずかしそうに笑った。

「さっきの子、ミキちゃんですか? もしそうなら、うちの子と一緒のクラスなんです」

「ええ、そうよ。不登校で中学校は一度も行ってないんですけどね」

 ミキのお母さんが、困ったような顔で笑う。

「うちの子、さゆりって言うんですけど、テストの日だけしか学校行ってないので、似たようなもんです」

「あら、そうなの? でも、テストだけでも行けるならえらいわね。うちはテストも全然受けてないから」

 ミキのお母さんがさゆりの方を見ながら言う。

 突然、ミキのお母さんがさゆりの方にコトコトと歩いてきた。

「もしミキが学校行けるようになったら、よろしくね」

 ミキのお母さんが、さゆりの肩を叩く。

 さゆりは黙ってうなずいた。

「じゃぁ、わたしたちはこれで」

 さゆりのお母さんが会釈をすると、ミキのお母さんもペコリと頭を下げ家の中へ入っていった。
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