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14 立場逆転
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さゆりは、ミサの方を振り返った。
ミサのセーラー服のリボンは、青から赤に戻っていた。
(元の世界に、もどった? 本当にあれはお母さんだったの?)
さゆりは小首をかしげた。
「ミサちゃん、なんか……ごめんね」
さゆりはミサの演技を思い出して言った。セリフだとはいえ、核心をつかれた気がしていた。
「なんのこと?」
「あの……、ミサちゃんは、わたしの勝手な都合で作り出したイマジネーションフレンドだから、だから……」
なんと言っていいかわからず、さゆりは口ごもった。
「イマジネーションフレンド? わたしが? あなたの?」
ミサが驚いたような顔をする。
さゆりはこっくりとうなずいた。
「それ、本気で言ってる?」
ミサがさゆりを試すように言う。
「あの、わたし、ミサちゃんが気に障るようなこと言っちゃったかな? 勝手な都合っていうのは、ミサちゃんが言ってたことで、わたしは本当にそんなこと思ってなくて……」
「で?」
「ミサちゃんのことは、本当に大切な友だちだって思ってる」
さゆりは、思いきり微笑んだ。
「ねぇ、あなた、ひとつ勘違いしているみたいだけど……」
ミサが人差し指を立てた。
「他のみんなと話せないのは誰? 他のみんなから見えないのは誰?」
ミサが挑発的な態度でさゆりを見る。
「それはミサちゃ……、あ」
さゆりはゴクンと唾を飲みこんだ。
それはさゆりだった。
いつの間にか立場が逆転していた。
「あなたは、わたしにとって都合のいいお友だちだったわ」
ミサが、鼻で笑う。
「だった……?」
過去形。
「わたし、もう他の子に無視されないし、なんでも話せるようになったの。だから、あなたよりも、他の子と仲良くしたいの」
「そんな……」
さゆりは返す言葉がなかった。
「これからも見えないあなたと話していたら、みんなに変な子だと思われちゃう。だからさぁ……」
ミサが無表情で言う。
「あなた、消えてくんない?」
ミサは表情を変えない。
(どうしてそんなひどいこと言うの?)
さゆりは言い返そうとしたが、喉に言葉が詰まって出てこなかった。
(あぁ。わたしはもう、ミサちゃんとも話せなくなってしまったの?)
息を吸って。吸って。吸って。
呼吸の仕方を思い出そうとしても、苦しくなるばかりだった。
ミサが笑った。ヒマワリが咲いたみたいな明るい笑顔だった。
今の、全部嘘だよ。本当はさゆりちゃんのこと、大好きだよ。とでも言いそうな笑顔に、さゆりは期待した。
「あなたは、わたしの都合のいい友だち。だから、いらなくなったら消えてくれるよね? だってその方が、都合がいいんだもの」
ミサはにこっと微笑むと、さゆりの前を通り過ぎて行ってしまう。
(ミサちゃん、待って)
さゆりはミサを追いかけた。
昇降口を出て、校門を出る。ミサの隣を歩く。
さゆりの家まで帰る方向は同じはずだ。家に着くまでに、なんとかミサと仲直りしたかった。
(なんでこんなことになってしまったんだろう)
ミサは真っ直ぐ前を向いて歩いていく。一度だってさゆりの方を見ようとしない。
(ねぇ、ミサちゃん)
さゆりの声はミサに届かない。
(あぁ、もう家に着いちゃった)
さゆりは家の前で立ち止まった。
いつもここで別れるはずのミサが、今日はさゆりの家の庭に入っていった。
ミサがカバンから鍵を取り出した。さゆりの家のドアノブに鍵を挿し、カチャリと回す。
(え? どういうこと?)
ミサはドアを開けると、そのまま家の中に入っていった。
(待って)
さゆりも中に入ろうとしたが、寸前でドアを閉められた。
ドアノブに手をかける。
(中から鍵をかけられた?)
だが、その可能性は低かった。
ミサが家の中に入ってから、鍵をかける音はしなかった。
(じゃあ、なぜドアは開かない?)
現実的に考えたらあり得ないことだが、さゆりにはドアノブを回すことができなかった。
ドアノブに触れている感触すらなかった。
さゆりは血の気がひいて、目の前がクラクラしてきた。
(お母さんがパートから帰ってくるまで待つしかない)
さゆりは膝から崩れ落ちるように、玄関前に座り込んだ。
ミサのセーラー服のリボンは、青から赤に戻っていた。
(元の世界に、もどった? 本当にあれはお母さんだったの?)
さゆりは小首をかしげた。
「ミサちゃん、なんか……ごめんね」
さゆりはミサの演技を思い出して言った。セリフだとはいえ、核心をつかれた気がしていた。
「なんのこと?」
「あの……、ミサちゃんは、わたしの勝手な都合で作り出したイマジネーションフレンドだから、だから……」
なんと言っていいかわからず、さゆりは口ごもった。
「イマジネーションフレンド? わたしが? あなたの?」
ミサが驚いたような顔をする。
さゆりはこっくりとうなずいた。
「それ、本気で言ってる?」
ミサがさゆりを試すように言う。
「あの、わたし、ミサちゃんが気に障るようなこと言っちゃったかな? 勝手な都合っていうのは、ミサちゃんが言ってたことで、わたしは本当にそんなこと思ってなくて……」
「で?」
「ミサちゃんのことは、本当に大切な友だちだって思ってる」
さゆりは、思いきり微笑んだ。
「ねぇ、あなた、ひとつ勘違いしているみたいだけど……」
ミサが人差し指を立てた。
「他のみんなと話せないのは誰? 他のみんなから見えないのは誰?」
ミサが挑発的な態度でさゆりを見る。
「それはミサちゃ……、あ」
さゆりはゴクンと唾を飲みこんだ。
それはさゆりだった。
いつの間にか立場が逆転していた。
「あなたは、わたしにとって都合のいいお友だちだったわ」
ミサが、鼻で笑う。
「だった……?」
過去形。
「わたし、もう他の子に無視されないし、なんでも話せるようになったの。だから、あなたよりも、他の子と仲良くしたいの」
「そんな……」
さゆりは返す言葉がなかった。
「これからも見えないあなたと話していたら、みんなに変な子だと思われちゃう。だからさぁ……」
ミサが無表情で言う。
「あなた、消えてくんない?」
ミサは表情を変えない。
(どうしてそんなひどいこと言うの?)
さゆりは言い返そうとしたが、喉に言葉が詰まって出てこなかった。
(あぁ。わたしはもう、ミサちゃんとも話せなくなってしまったの?)
息を吸って。吸って。吸って。
呼吸の仕方を思い出そうとしても、苦しくなるばかりだった。
ミサが笑った。ヒマワリが咲いたみたいな明るい笑顔だった。
今の、全部嘘だよ。本当はさゆりちゃんのこと、大好きだよ。とでも言いそうな笑顔に、さゆりは期待した。
「あなたは、わたしの都合のいい友だち。だから、いらなくなったら消えてくれるよね? だってその方が、都合がいいんだもの」
ミサはにこっと微笑むと、さゆりの前を通り過ぎて行ってしまう。
(ミサちゃん、待って)
さゆりはミサを追いかけた。
昇降口を出て、校門を出る。ミサの隣を歩く。
さゆりの家まで帰る方向は同じはずだ。家に着くまでに、なんとかミサと仲直りしたかった。
(なんでこんなことになってしまったんだろう)
ミサは真っ直ぐ前を向いて歩いていく。一度だってさゆりの方を見ようとしない。
(ねぇ、ミサちゃん)
さゆりの声はミサに届かない。
(あぁ、もう家に着いちゃった)
さゆりは家の前で立ち止まった。
いつもここで別れるはずのミサが、今日はさゆりの家の庭に入っていった。
ミサがカバンから鍵を取り出した。さゆりの家のドアノブに鍵を挿し、カチャリと回す。
(え? どういうこと?)
ミサはドアを開けると、そのまま家の中に入っていった。
(待って)
さゆりも中に入ろうとしたが、寸前でドアを閉められた。
ドアノブに手をかける。
(中から鍵をかけられた?)
だが、その可能性は低かった。
ミサが家の中に入ってから、鍵をかける音はしなかった。
(じゃあ、なぜドアは開かない?)
現実的に考えたらあり得ないことだが、さゆりにはドアノブを回すことができなかった。
ドアノブに触れている感触すらなかった。
さゆりは血の気がひいて、目の前がクラクラしてきた。
(お母さんがパートから帰ってくるまで待つしかない)
さゆりは膝から崩れ落ちるように、玄関前に座り込んだ。
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