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5記憶
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未来はその日一日、休み時間になると毎回トイレに行って時間をつぶした。
美波や恵理が入って来た時には、目も合わさずにそそくさと出て行く。顔を合せたら、また自分が変なことを言い出すのではないかと、不安の波が押し寄せてきた。
給食を食べ終わると、校庭を一人でブラブラ歩いて昼休みを過ごした。
一日が長く、重くのしかかってくるようだった。胃がシクシクと痛んだ。
情緒不安定。
頭の中に文字が浮かんだ。生理中でもないのにどうしたのか、わたし。と、問いただしてみても、答えは見つからない。
午後の授業とホームルームが終わった後も、未来は急いで帰りの支度をしていた。
だが、美波と恵理の方が一足早かった。
「わたしたちのこと、避けることないでしょ」
見あげると、美波がにっこり笑っている。
「わたしが鏡を失くしたこと、まだ怒っているの?」
未来は頭を勢いよく横に振った。
「怒ってなんかいないよ。ただ、わたし、また美波を傷つけるようなこと言っちゃいそうで、怖くて……」
「全く失礼しちゃうなぁ。わたしは、そんなに簡単には傷つかないよ。恵理ちゃんとも話したんだけど、今日も未来の家に行って、みんなでもう一回、ハルちゃんの部屋探してみようよ」
「でも、ハルちゃんの部屋は昨日わたしが……」
未来の話を、美波が途中でさえぎった。
「なかったけど、もしあったらって思うと不安なんでしょ? みんなで探してそれでもなかったら、安心できそうじゃん。もちろん、帰ったらわたしも自分の家の中、もう一度探してみるけど」
「いいの?」
「知っていると思うけど、わたし、どうせ暇だし」
美波が、未来の頭をポンポンと子どもをあやすように叩いた。
「わたしも、二人と居た方が楽しいし」
恵理も美波を真似して、未来の頭を優しく叩く。
「もう、子ども扱いするな」
未来は恵理の手を払いのけた。
喉の奥が熱くなった。唾を飲み込んで、熱を冷ます。
目を手でごしごし擦って、ゆるくなった涙腺に蓋をする。急いで筆箱を鞄にしまった。
「いこっ」
未来はいすから立ち上がって、二人に明るく言った。
美波や恵理が入って来た時には、目も合わさずにそそくさと出て行く。顔を合せたら、また自分が変なことを言い出すのではないかと、不安の波が押し寄せてきた。
給食を食べ終わると、校庭を一人でブラブラ歩いて昼休みを過ごした。
一日が長く、重くのしかかってくるようだった。胃がシクシクと痛んだ。
情緒不安定。
頭の中に文字が浮かんだ。生理中でもないのにどうしたのか、わたし。と、問いただしてみても、答えは見つからない。
午後の授業とホームルームが終わった後も、未来は急いで帰りの支度をしていた。
だが、美波と恵理の方が一足早かった。
「わたしたちのこと、避けることないでしょ」
見あげると、美波がにっこり笑っている。
「わたしが鏡を失くしたこと、まだ怒っているの?」
未来は頭を勢いよく横に振った。
「怒ってなんかいないよ。ただ、わたし、また美波を傷つけるようなこと言っちゃいそうで、怖くて……」
「全く失礼しちゃうなぁ。わたしは、そんなに簡単には傷つかないよ。恵理ちゃんとも話したんだけど、今日も未来の家に行って、みんなでもう一回、ハルちゃんの部屋探してみようよ」
「でも、ハルちゃんの部屋は昨日わたしが……」
未来の話を、美波が途中でさえぎった。
「なかったけど、もしあったらって思うと不安なんでしょ? みんなで探してそれでもなかったら、安心できそうじゃん。もちろん、帰ったらわたしも自分の家の中、もう一度探してみるけど」
「いいの?」
「知っていると思うけど、わたし、どうせ暇だし」
美波が、未来の頭をポンポンと子どもをあやすように叩いた。
「わたしも、二人と居た方が楽しいし」
恵理も美波を真似して、未来の頭を優しく叩く。
「もう、子ども扱いするな」
未来は恵理の手を払いのけた。
喉の奥が熱くなった。唾を飲み込んで、熱を冷ます。
目を手でごしごし擦って、ゆるくなった涙腺に蓋をする。急いで筆箱を鞄にしまった。
「いこっ」
未来はいすから立ち上がって、二人に明るく言った。
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