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3 誕生石
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「リンネ、おっそーい」
ナナの声が低い。不機嫌そうだ。
「ごめん、ごめん」
リンネは素直に謝る。
「もしかして両替機、混んでた?」
「あ……うーん」
リンネはあいまいな返事をした。
まさかマリナと話していたなんて、ナナには言えない。
リンネはだまって、両替した硬貨をナナに渡した。
「ありがと。さぁ、次は絶対取るぞー」
ナナが100円玉をゲーム機に入れようとする。
「ちょっと待って」
リンネはナナの手をつかんだ。
「どうしたの?」
ナナが、きょとんとした顔をする。
「あ、えーっと……」
リンネはマリナに言われたことが気になっていた。ジュエルを取ってはいけない。このジュエルは本物。危険なジュエル。
だが、どうして危険なのかはわからなかった。マリナの言ったことが本当かわからないし、マリナの話を信じたわけでもない。
「もしかして、リンネ、先にやりたかった?」
「あ、ううん。なんでもない」
リンネは慌てて首を横に振った。
「お金、無駄にしないように頑張って」
リンネはナナの肩をポンとたたいた。
(気にしない、気にしない。マリナの言ったことなんて、全然意味わからないし)
「キャー! やったー」
ナナが跳びはねている。
「あ、えっ? 取れたの?」
リンネははっとした。
「もう! もしかしてリンネ、見てなかったの?」
ナナが鼻の穴をふくらめて言う。
「ちょっと考えごとしてて……」
リンネの返事など耳に入らない様子で、ナナはカプセルを開けている。
「サファイアだって」
ナナは、手のひらを見せてきた。親指の爪ほどの大きさの、丸くて紫がかった青い石。くもりガラスみたいな感じの半透明の石で、リンネが想像していた宝石とは違っていた。
「これ、本当にサファイアなの? 全然キラキラしてないね」
「磨かれる前の原石だからじゃない?」
ナナは、カプセルに一緒に入っていた紙を夢中で読んでいる。
「やった! カリスマ性や勝負運を高めてくれるんだって!」
ナナが嬉しそうにクルッとその場で回った。
「ごめん、ごめん。遅くなっちゃった。もう夕飯だから、帰ろう」
リンネのお母さんが息を切らしながらやってきた。
「えー。わたし、まだ1回もやってないんだけど」
リンネはふくれっ面をした。
「じゃぁ、早くしなさい」
お母さんが、急かすようにリンネの背中をポンポンと叩く。
「リンネも絶対に取ってね」
ナナが、期待をこめたまなざしで、カプセルの山を見つめている。
リンネはまだ、マリナに言われたことがひっかかっていた。マリナはすごく真剣な顔をしていた。ただリンネをからかっているだけのようには見えなかった。
リンネは迷いながらも、財布から100円玉を取り出す。
「これ、難しそうね」
お母さんが、ガラス越しに中をのぞいている。その胸元には、見覚えのないペンダントが揺れている。
「それ、どうしたの?」
リンネはお母さんの胸元を指さした。
お母さんが、ぱっと顔を輝かせる。
「買っちゃった。先週お母さんの誕生日だったから、お父さんが好きなもの買っていいって1万円くれたの。これ、6月の誕生石のムーンストーンなのよ」
お母さんがペンダントトップを指先で持ち上げる。澄んだ透明の石がついている。光を反射してとてもきれいだ。
「お店の人に聞いたんだけどね、ムーンストーンって、自分の気づいていない能力を引き出してくれるんだって。あと、進むべき道を示してくれたり、家族や親しい友だちの危険を予知して守ってくれたりするんだって」
お母さんが、うれしそうに言う。
「ずるーい」
「リンネだって、6月2日の誕生日にゲーム買ったでしょ?」
「リンネとリンネのお母さんって、同じ6月生まれなんだね」
ナナが、口をはさむ。
「わたしも誕生石にすればよかった」
リンネが口をとがらせると、ナナがパチンと手を打った。
「そうだ。このジュエルに願ってあげる。リンネがムーンストーンを取れますようにって」
「そんなにうまくいくかなぁ」
「いいから、いいから」
ナナがリンネの手から100円玉を取り上げた。そのまま投入口に入れてしまう。
「あっ」
もう迷っている場合ではない。ゲーム機を操作しなければ100円が無駄になってしまう。
「なになに。どうすればいいの?」
いきなりだったから、あわてて適当にボタンを押してしまった。
クレーンはもう、アームを開いてカプセルをすくう動作に入っている。あとは運にまかせるしかない。
途中までは順調に見えたが、出口手前でアームからカプセルが落ちてしまう。
「やっぱりダメかぁ……」
リンネがため息をついた時、落ちたカプセルが大きく手前にバウンドする。
「えっ、うそ。うそでしょ?」
ゲーム機の獲得口にカランコロンとカプセルが落ちた。
「すごい、リンネ。一発じゃん!」
ナナがリンネの背中をバシンと叩く。
「ねぇ、なにが入ってた? 早く開けて」
ナナがもどかしそうに、リンネのカプセルをのぞきこんでくる。
カプセルは意外と固くて、開けにくい。リンネは両手にぐっと力を込めた。
「やだぁ」
「変なの入ってた?」
ナナが顔を近づけてくる。
「そうじゃなくて、すごい、すごいよ! っていうか、なんか怖いんだけど!」
リンネはカプセルからジュエルを出して叫んだ。
リンネの手の平には、丸くて小さな透明の石が乗っていた。
「これ、ムーンストーンだって」
ナナの声が低い。不機嫌そうだ。
「ごめん、ごめん」
リンネは素直に謝る。
「もしかして両替機、混んでた?」
「あ……うーん」
リンネはあいまいな返事をした。
まさかマリナと話していたなんて、ナナには言えない。
リンネはだまって、両替した硬貨をナナに渡した。
「ありがと。さぁ、次は絶対取るぞー」
ナナが100円玉をゲーム機に入れようとする。
「ちょっと待って」
リンネはナナの手をつかんだ。
「どうしたの?」
ナナが、きょとんとした顔をする。
「あ、えーっと……」
リンネはマリナに言われたことが気になっていた。ジュエルを取ってはいけない。このジュエルは本物。危険なジュエル。
だが、どうして危険なのかはわからなかった。マリナの言ったことが本当かわからないし、マリナの話を信じたわけでもない。
「もしかして、リンネ、先にやりたかった?」
「あ、ううん。なんでもない」
リンネは慌てて首を横に振った。
「お金、無駄にしないように頑張って」
リンネはナナの肩をポンとたたいた。
(気にしない、気にしない。マリナの言ったことなんて、全然意味わからないし)
「キャー! やったー」
ナナが跳びはねている。
「あ、えっ? 取れたの?」
リンネははっとした。
「もう! もしかしてリンネ、見てなかったの?」
ナナが鼻の穴をふくらめて言う。
「ちょっと考えごとしてて……」
リンネの返事など耳に入らない様子で、ナナはカプセルを開けている。
「サファイアだって」
ナナは、手のひらを見せてきた。親指の爪ほどの大きさの、丸くて紫がかった青い石。くもりガラスみたいな感じの半透明の石で、リンネが想像していた宝石とは違っていた。
「これ、本当にサファイアなの? 全然キラキラしてないね」
「磨かれる前の原石だからじゃない?」
ナナは、カプセルに一緒に入っていた紙を夢中で読んでいる。
「やった! カリスマ性や勝負運を高めてくれるんだって!」
ナナが嬉しそうにクルッとその場で回った。
「ごめん、ごめん。遅くなっちゃった。もう夕飯だから、帰ろう」
リンネのお母さんが息を切らしながらやってきた。
「えー。わたし、まだ1回もやってないんだけど」
リンネはふくれっ面をした。
「じゃぁ、早くしなさい」
お母さんが、急かすようにリンネの背中をポンポンと叩く。
「リンネも絶対に取ってね」
ナナが、期待をこめたまなざしで、カプセルの山を見つめている。
リンネはまだ、マリナに言われたことがひっかかっていた。マリナはすごく真剣な顔をしていた。ただリンネをからかっているだけのようには見えなかった。
リンネは迷いながらも、財布から100円玉を取り出す。
「これ、難しそうね」
お母さんが、ガラス越しに中をのぞいている。その胸元には、見覚えのないペンダントが揺れている。
「それ、どうしたの?」
リンネはお母さんの胸元を指さした。
お母さんが、ぱっと顔を輝かせる。
「買っちゃった。先週お母さんの誕生日だったから、お父さんが好きなもの買っていいって1万円くれたの。これ、6月の誕生石のムーンストーンなのよ」
お母さんがペンダントトップを指先で持ち上げる。澄んだ透明の石がついている。光を反射してとてもきれいだ。
「お店の人に聞いたんだけどね、ムーンストーンって、自分の気づいていない能力を引き出してくれるんだって。あと、進むべき道を示してくれたり、家族や親しい友だちの危険を予知して守ってくれたりするんだって」
お母さんが、うれしそうに言う。
「ずるーい」
「リンネだって、6月2日の誕生日にゲーム買ったでしょ?」
「リンネとリンネのお母さんって、同じ6月生まれなんだね」
ナナが、口をはさむ。
「わたしも誕生石にすればよかった」
リンネが口をとがらせると、ナナがパチンと手を打った。
「そうだ。このジュエルに願ってあげる。リンネがムーンストーンを取れますようにって」
「そんなにうまくいくかなぁ」
「いいから、いいから」
ナナがリンネの手から100円玉を取り上げた。そのまま投入口に入れてしまう。
「あっ」
もう迷っている場合ではない。ゲーム機を操作しなければ100円が無駄になってしまう。
「なになに。どうすればいいの?」
いきなりだったから、あわてて適当にボタンを押してしまった。
クレーンはもう、アームを開いてカプセルをすくう動作に入っている。あとは運にまかせるしかない。
途中までは順調に見えたが、出口手前でアームからカプセルが落ちてしまう。
「やっぱりダメかぁ……」
リンネがため息をついた時、落ちたカプセルが大きく手前にバウンドする。
「えっ、うそ。うそでしょ?」
ゲーム機の獲得口にカランコロンとカプセルが落ちた。
「すごい、リンネ。一発じゃん!」
ナナがリンネの背中をバシンと叩く。
「ねぇ、なにが入ってた? 早く開けて」
ナナがもどかしそうに、リンネのカプセルをのぞきこんでくる。
カプセルは意外と固くて、開けにくい。リンネは両手にぐっと力を込めた。
「やだぁ」
「変なの入ってた?」
ナナが顔を近づけてくる。
「そうじゃなくて、すごい、すごいよ! っていうか、なんか怖いんだけど!」
リンネはカプセルからジュエルを出して叫んだ。
リンネの手の平には、丸くて小さな透明の石が乗っていた。
「これ、ムーンストーンだって」
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