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1 未確認生命体!?
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「うわわわぁー! 遅刻しちゃうぅぅぅっ!」
ドレッサーの前で一人大騒ぎしているのは藤崎はるか、小学6年生。
はるかはツインテールにした髪の毛先から根元に向かって素早く、くしを動かした。こうすると逆毛が立って、ヘアスタイルにボリュームが出る。
仕上げにスプレーをふりまき、鏡に顔を近づけ色つきリップを唇にぬる。
「よしっ! かんぺきっ」
と、椅子から立ち上がろうとした瞬間。
――みゃーお!
可愛らしい声に呼ばれるように、はるかは振り返った。
「えっ!」
窓の外にいたのは、もふもふの毛玉のような桃色のこねこだった。
小さい。すごく小さい。はるかの手の平に、のってしまいそうな小ささだ。
はるかは、思わず前に向き直った。鏡の中のはるかは、まん丸の目になっている。
(ってか、桃色? それにここ、2階だし)
もう一度、ゆっくり後ろを振り返る。
窓の外には、何もいない。
10月の秋空が、すっきりと青く広がっているだけだ。
「気のせい、気のせい」
全身を鏡にうつして、最終チェック。オーバーサイズの黒のロゴTシャツに、派手なピンクのサルエルパンツ。
パンツの右足だけを、膝までまくりあげる。片足だけっていうのが、ダンサーファッションのお決まりだ。
「きゃぁ! もうこんな時間」
叫んだ瞬間、のどの奥がピリッと痛んだ。はるかはのどに手をあて、ンンッと咳払いした。
時計の針は、午後3時40分をさしていた。
4時から、駅前の『スタジオ・BEAT』で、ダンスレッスンが始まってしまう。
レッスンバッグをつかむと、一気に階段をかけおりた。
「お母さん、のど飴なーい?」
リビングのソファでくつろいでいたお母さんが、心配そうな顔をする。
「のど、痛いの? 痛いなら、一日くらいレッスン休んだら?」
「ダメダメ、絶対ダメ! 明日、選抜チームのメンバーを決めるオーディションなんだよ。今日の振り付けまで、しっかり覚えなくちゃだもん」
「選抜チームって、ダンスコンテストに出る?」
「そう。コンテストで優勝したら、CMに出られるんだよ。それよりのど飴、ないの? もう家出ないと、遅刻しちゃう」
あったかなー、と首をかしげながら、お母さんがキッチンに向かう。
「あーもう、いいや。時間ないから出かけるよ」
玄関を飛び出して、庭で自転車にまたがっていると、お母さんがあわてて追いかけてきた。
「車に気をつけるのよ」
「ハイハイ」
「のど飴じゃなくて、普通の飴しかなかったけど」
お母さんから差し出された包みを開けると、まん丸の青い飴玉が出てきた。
「ありがとう」
口に放りこむと、はるかはすぐに自転車をこぎ始めた。
シュワシュワのサイダーの味がする。
(うーん。のど痛いのにちょっと刺激的すぎるわ、お母さん)
駅前まで、全力でこげば10分ちょっとで着く。レッスンには間に合うはずだ。
駅からちょっと離れただけで、家の周辺は田んぼや畑ばかり。すごい田舎。車に気をつけようって言ったって、そもそも車なんて、ほとんど走っていない。
のどかな風景を真っ二つに切るように、はるかは両足でペダルをこぐ。
いつもより、体が重い気がする。
(やっぱ、風邪、ひいたかな?)
それでもかまわず、スピードを上げる。
息があがる。額があせばむ。
ちょっと、必死すぎる。全然、クールじゃない。なんだか、すごくかっこ悪い。
(こんな田舎じゃなくて。もっと広い世界で……)
もっとかっこよくて、もっと刺激的な人生を送りたい。
サイダーみたいに。
はるかは、すっかり小さくなった飴玉を、奥歯でくだいた。
「もぉ、こんなの本当のわたしじゃない!」
叫んだら、またのどが痛んだ。
(絶対にわたし、ダンサーになるんだ)
熱いかたまりが、お腹の底からぐっとこみあげてくる。
カラッカラに乾いた風を受けて、目に涙がにじむ。
ぼやけた茶色い風景の中に、違和感のある薄桃色が飛びこんで来た。
(うゎっ。やばいもの見つけちゃったよ)
止まっている暇はない。はるかはペダルをこぐ足に力をこめた。
「あー、やっぱり気になるぅー」
叫びながらはるかは、自転車に急ブレーキをかけた。
キキキーッと、タイヤがアスファルトをこする。
稲刈りの終わった、田んぼのあぜ道。
綿菓子みたいな、ふわふわの薄桃色のかたまり。
それはあぜ道の野いちごを、必死に食べている。
(新種のねこかな? それとも、未確認生命体ってやつ?)
こねこのそばにしゃがむと、甘酸っぱい匂いがした。
「おいで、おいで」
はるかが声をかけると、こねこは食べるのをやめて、こっちを向いた。
口の周りが、野いちごの汁でべっとりと赤い。
「本当の君は、どこにいるの?」
甲高い声がした。
「本当の……わたし?」
はるかは、キョロキョロと辺りを見回した。
誰も、いない。
「さっき、叫んでいたでしょ。こんなの、本当のわたしじゃないって」
「き、聞いてたのー?」
はるかは、顔がカーッと熱くなった。
(いや、問題はそこじゃなくて)
はるかは、桃色のこねこをじーっと見つめた。
間違いない。
「えっ、今、しゃべった? ねぇ、しゃべった? えぇぇぇぇーっ! やっぱり新種のねこ?」
「あー!」
と、こねこが、突然叫んだ。
「な、何なのよ、いきなり」
驚いたはるかは、しりもちをつきそうになった。ギリギリのところで、バランスをとる。
「このいちご、ぜーんぶわたしのだからね。取っちゃダメだよ。一つもあげないからね」
可愛らしい声は、やっぱり桃色のこねこの口から出ている。
「そんなの食べないよ。それ、食べられるいちごかどうか、わからないもん」
はるかが言うと、こねこは不安そうな顔をした。
「そっ、そうなの? わたし、病気になっちゃうの?」
「大丈夫だよ。別に、毒じゃないと思うよ」
「本当?」
「本当……かよくわからないけど、多分大丈夫」
「多分って、多分って……」
こねこは、目をうるませている。
(か、かわいすぎる!)
はるかは、こねこの仕草に胸がキュンキュンした。
「君、名前は何ていうの?」
「名前?」
「うん。わたしは、はるかって言うの。わたしのこと、はるかって呼んでいいよ」
こねこが、
「わたしは、モモ。クローンモンスターのモモだよ」
と、嬉しそうに言った。
「クローン、モンスター?」
モモが何か言いかけたが、はるかは、今は長話をしている場合でないのを思い出した。
「あっ、いけない。ごめん、モモ。わたし、もう行かなくちゃ」
「えっ、もう行っちゃうの?」
「そうだ」
はるかは、レッスンバッグを開けてがさごそと中をあさった。
「あったあった」
はるかは、細い銀の鎖に小さなチャームがついたブレスレットを取り出した。小さなモモには、首飾りにするのにぴったりだ。
「友だちになった印に、これ、あげる」
「何、これ?」
モモは、首にかけられたブレスレットのチャームを見た。
「四葉のクローバーだよ。四葉のクローバーを持っているとね、幸せになれるんだよ」
「幸せ?」
「うん。幸せってね、心の中が、すごくあったかくなる感じだよ。」
「ありがとう」
モモは、すごく嬉しそうだ。
(モモって、いったい何者なの?)
もっと色々聞きたかったけど、これ以上ここにいたら、レッスンに遅れてしまう。
はるかが立ち去ろうとした時、
「アオ?」
と、モモがつぶやいた。
モモが見ている方に目をやる。
青いゴミのようなものが、サーッと風に舞っていくのが見えただけだった。
「もしかして、アオも、来ているの?」
モモは、何かを探すように目をこらしている。
(アオって誰?)
だが、モモにかまっている場合ではない。
はるかは、慌てて自転車にまたがった。
ドレッサーの前で一人大騒ぎしているのは藤崎はるか、小学6年生。
はるかはツインテールにした髪の毛先から根元に向かって素早く、くしを動かした。こうすると逆毛が立って、ヘアスタイルにボリュームが出る。
仕上げにスプレーをふりまき、鏡に顔を近づけ色つきリップを唇にぬる。
「よしっ! かんぺきっ」
と、椅子から立ち上がろうとした瞬間。
――みゃーお!
可愛らしい声に呼ばれるように、はるかは振り返った。
「えっ!」
窓の外にいたのは、もふもふの毛玉のような桃色のこねこだった。
小さい。すごく小さい。はるかの手の平に、のってしまいそうな小ささだ。
はるかは、思わず前に向き直った。鏡の中のはるかは、まん丸の目になっている。
(ってか、桃色? それにここ、2階だし)
もう一度、ゆっくり後ろを振り返る。
窓の外には、何もいない。
10月の秋空が、すっきりと青く広がっているだけだ。
「気のせい、気のせい」
全身を鏡にうつして、最終チェック。オーバーサイズの黒のロゴTシャツに、派手なピンクのサルエルパンツ。
パンツの右足だけを、膝までまくりあげる。片足だけっていうのが、ダンサーファッションのお決まりだ。
「きゃぁ! もうこんな時間」
叫んだ瞬間、のどの奥がピリッと痛んだ。はるかはのどに手をあて、ンンッと咳払いした。
時計の針は、午後3時40分をさしていた。
4時から、駅前の『スタジオ・BEAT』で、ダンスレッスンが始まってしまう。
レッスンバッグをつかむと、一気に階段をかけおりた。
「お母さん、のど飴なーい?」
リビングのソファでくつろいでいたお母さんが、心配そうな顔をする。
「のど、痛いの? 痛いなら、一日くらいレッスン休んだら?」
「ダメダメ、絶対ダメ! 明日、選抜チームのメンバーを決めるオーディションなんだよ。今日の振り付けまで、しっかり覚えなくちゃだもん」
「選抜チームって、ダンスコンテストに出る?」
「そう。コンテストで優勝したら、CMに出られるんだよ。それよりのど飴、ないの? もう家出ないと、遅刻しちゃう」
あったかなー、と首をかしげながら、お母さんがキッチンに向かう。
「あーもう、いいや。時間ないから出かけるよ」
玄関を飛び出して、庭で自転車にまたがっていると、お母さんがあわてて追いかけてきた。
「車に気をつけるのよ」
「ハイハイ」
「のど飴じゃなくて、普通の飴しかなかったけど」
お母さんから差し出された包みを開けると、まん丸の青い飴玉が出てきた。
「ありがとう」
口に放りこむと、はるかはすぐに自転車をこぎ始めた。
シュワシュワのサイダーの味がする。
(うーん。のど痛いのにちょっと刺激的すぎるわ、お母さん)
駅前まで、全力でこげば10分ちょっとで着く。レッスンには間に合うはずだ。
駅からちょっと離れただけで、家の周辺は田んぼや畑ばかり。すごい田舎。車に気をつけようって言ったって、そもそも車なんて、ほとんど走っていない。
のどかな風景を真っ二つに切るように、はるかは両足でペダルをこぐ。
いつもより、体が重い気がする。
(やっぱ、風邪、ひいたかな?)
それでもかまわず、スピードを上げる。
息があがる。額があせばむ。
ちょっと、必死すぎる。全然、クールじゃない。なんだか、すごくかっこ悪い。
(こんな田舎じゃなくて。もっと広い世界で……)
もっとかっこよくて、もっと刺激的な人生を送りたい。
サイダーみたいに。
はるかは、すっかり小さくなった飴玉を、奥歯でくだいた。
「もぉ、こんなの本当のわたしじゃない!」
叫んだら、またのどが痛んだ。
(絶対にわたし、ダンサーになるんだ)
熱いかたまりが、お腹の底からぐっとこみあげてくる。
カラッカラに乾いた風を受けて、目に涙がにじむ。
ぼやけた茶色い風景の中に、違和感のある薄桃色が飛びこんで来た。
(うゎっ。やばいもの見つけちゃったよ)
止まっている暇はない。はるかはペダルをこぐ足に力をこめた。
「あー、やっぱり気になるぅー」
叫びながらはるかは、自転車に急ブレーキをかけた。
キキキーッと、タイヤがアスファルトをこする。
稲刈りの終わった、田んぼのあぜ道。
綿菓子みたいな、ふわふわの薄桃色のかたまり。
それはあぜ道の野いちごを、必死に食べている。
(新種のねこかな? それとも、未確認生命体ってやつ?)
こねこのそばにしゃがむと、甘酸っぱい匂いがした。
「おいで、おいで」
はるかが声をかけると、こねこは食べるのをやめて、こっちを向いた。
口の周りが、野いちごの汁でべっとりと赤い。
「本当の君は、どこにいるの?」
甲高い声がした。
「本当の……わたし?」
はるかは、キョロキョロと辺りを見回した。
誰も、いない。
「さっき、叫んでいたでしょ。こんなの、本当のわたしじゃないって」
「き、聞いてたのー?」
はるかは、顔がカーッと熱くなった。
(いや、問題はそこじゃなくて)
はるかは、桃色のこねこをじーっと見つめた。
間違いない。
「えっ、今、しゃべった? ねぇ、しゃべった? えぇぇぇぇーっ! やっぱり新種のねこ?」
「あー!」
と、こねこが、突然叫んだ。
「な、何なのよ、いきなり」
驚いたはるかは、しりもちをつきそうになった。ギリギリのところで、バランスをとる。
「このいちご、ぜーんぶわたしのだからね。取っちゃダメだよ。一つもあげないからね」
可愛らしい声は、やっぱり桃色のこねこの口から出ている。
「そんなの食べないよ。それ、食べられるいちごかどうか、わからないもん」
はるかが言うと、こねこは不安そうな顔をした。
「そっ、そうなの? わたし、病気になっちゃうの?」
「大丈夫だよ。別に、毒じゃないと思うよ」
「本当?」
「本当……かよくわからないけど、多分大丈夫」
「多分って、多分って……」
こねこは、目をうるませている。
(か、かわいすぎる!)
はるかは、こねこの仕草に胸がキュンキュンした。
「君、名前は何ていうの?」
「名前?」
「うん。わたしは、はるかって言うの。わたしのこと、はるかって呼んでいいよ」
こねこが、
「わたしは、モモ。クローンモンスターのモモだよ」
と、嬉しそうに言った。
「クローン、モンスター?」
モモが何か言いかけたが、はるかは、今は長話をしている場合でないのを思い出した。
「あっ、いけない。ごめん、モモ。わたし、もう行かなくちゃ」
「えっ、もう行っちゃうの?」
「そうだ」
はるかは、レッスンバッグを開けてがさごそと中をあさった。
「あったあった」
はるかは、細い銀の鎖に小さなチャームがついたブレスレットを取り出した。小さなモモには、首飾りにするのにぴったりだ。
「友だちになった印に、これ、あげる」
「何、これ?」
モモは、首にかけられたブレスレットのチャームを見た。
「四葉のクローバーだよ。四葉のクローバーを持っているとね、幸せになれるんだよ」
「幸せ?」
「うん。幸せってね、心の中が、すごくあったかくなる感じだよ。」
「ありがとう」
モモは、すごく嬉しそうだ。
(モモって、いったい何者なの?)
もっと色々聞きたかったけど、これ以上ここにいたら、レッスンに遅れてしまう。
はるかが立ち去ろうとした時、
「アオ?」
と、モモがつぶやいた。
モモが見ている方に目をやる。
青いゴミのようなものが、サーッと風に舞っていくのが見えただけだった。
「もしかして、アオも、来ているの?」
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