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19 本当のこと
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結衣の家まで、電車で往復1時間ちょっと。自分たちの出番までは、1時間半くらいある。ギリギリ間に合うか、どうかってところだ。
電車に乗る前に、モモがはるかに確認した。
「本当にいいの? 間に合わなかったら、隼人先輩にダンス見せられなくなるよ」
はるかは、黙って電車に駆けこんだ。
ステージ衣装とメイクをしたままの二人を、他の乗客がジロジロ見る。この際、はずかしいなんて、言っていられない。
息を切らしながら、モモに向き合う。
「大丈夫。絶対間に合わせる。結衣も絶対に連れてくる」
そう言いながらも、はるかの心は不安に揺れていた。
「本当にアオ、元の姿に戻れなくなっちゃったのかな?」
はるかの問いに、
「わたしにも、わからないよ」
とモモが答える。
「モモと友だちでいる限り、これから何度だってステージで踊れる。でも、もし結衣がいなくなっちゃったら……」
はるかは、つり革につかまりながら、足元を見つめた。
「そうなる前に、最後の手段があるから大丈夫」
モモが、ささやくように言った。
「最後の手段?」
「あまり使いたくないんだけど」
と、モモは暗い顔をした。
ガタンゴトンと、電車が揺れる。
◇
チャイムを押しても誰も出てこない。
「鍵、開いてる」
はるかは、玄関を開けると、一気に2階にあがった。
「結衣!」
部屋のドアを開けると、結衣があわててベッドから立ち上がった。
「衣装、着ているね?」
モモが確認する。
「だれ?」
ゆっくり説明している時間はない。
はるかは、結衣の腕をつかむと、
「コンテスト会場、行くよ。説明は走りながら」
と、結衣を部屋から連れ出した。
だが、説明している余裕なんてなかった。
「モモとはるかだよ」
言えたのはそれだけ。
駅まで全力で走り、電車に飛び乗る。
乗った電車は満員。
ピンクのウィッグにねこ耳、ブルーの仮面。それだけでも目立つのに、クローンモンスターの話なんて、できるわけがない。
結衣は、わけもわからず連れてこられた人質みたいになっている。
会場のビルの入り口で、結衣が立ち止まった。
つないだはるかの手が、ぐっと後ろに引っ張られる。
「わたし、コンテスト会場に行くわけにはいかないよ」
結衣が、はるかの手をふりほどく。
「そんなこと言わないで。結衣、コンテストに出るの!」
はるかが、怒鳴るように言った。
会場入り口の方を見た結衣が、あっと声を上げ固まった。
振り返ると、結衣の姿をしたアオがいた。アオが走って近づいてくる。
「待ってたの」
アオは、息を切らしている。
はるかは、二人の結衣にはさまれるようにして立っていた。
「ごめん、はるか」
アオが、そう言った。
「なんでわたしに謝るの?」
アオが答えようとした時、鋭い声が聞こえた。
「アオ!」
モモが、いつの間にかピストルをかまえて立っている。
銃口は、アオに向けられている。
「ピ、ピストル!? 本物なの!?」
はるかの声が、裏返った。
「こんなことしたくなかったけど、アオが戻れないなら、わたしは撃つよ」
「ちょっと、待ってモモ!」
はるかは、わけもわからず、ただ叫んだ。
モモが、引き金に手をかける。
「やめて!」
パンという音と同時に倒れたのは、アオではなく、はるかが連れてきた結衣の方だった。
結衣が、とっさにアオをかばったのだ。
「結衣っ!」
はるかが叫んでかけよると、モモが言った。
「大丈夫。地球の人間に当たっても、ちょっとの間、気を失うだけだから」
「よかった……でも、結衣、コンテストに出られなくなっちゃうじゃない!」
はるかが責めるように言うと、モモが、すまなそうにうつむいた。
「クローンモンスターが撃たれると、どうなるの?」
アオが、震える声で聞いた。真っ青な顔をしている。
「アオ、知ってるでしょ?」
モモが、不思議そうな顔をした。
「クローンモンスターを元の姿に戻す道具で、危険な物じゃないよ。撃たれて数分後には瞬間移動モードに入って、強制的にキラキラ星に帰ることになる」
「……いなくなっちゃうなんて、いやだよ」
つぶやくとアオは、結衣の胸に顔をうずめた。
「いやだよ、いや。いやいやいや、アオー!」
アオが、そう叫んだ。
パチン!
はるかの頭の中で、サイダーがはじけるみたいな音がした。
「ア……オ? 今、アオって言った?」
はるかは、はっとした。
さっきまで、倒れたのが結衣で、残っているのがアオだと思いこんでいた。
だが、本当は逆だった。
「結衣? こっちが結衣なの?」
はるかは、泣きじゃくる結衣を見つめた。
最初から結衣は、コンテスト会場にいたのだ。
泣き叫ぶ結衣の肩に、はるかは手を置いた。
「ごめんね、はるか。アオのふりして、はるかの気持ちを試したの。けど、すぐにわたしが結衣だって言うつもりだったんだよ。追いかけたけど、追いつかなくて。はるかはわたしのこと、大切な友だちだって言ってくれたのに。試す必要なんかなかったのに」
「もういいよ、結衣」
はるかは、結衣の肩を優しくなでた。
「アオ、アオ。ごめんね」
結衣の姿をしたアオは、だんだん縮んでいき、青いうさぎの姿に戻った。
結衣の手の平の中で、アオが、うっすらと目を開ける。
「……わたし、結衣ちゃんと、友だちになりたかったの」
「うん。友だちだよ。アオは、わたしの大切な友だち。わたし、アオのこと絶対忘れない。絶対に忘れないよ」
結衣が、ポロポロと涙をこぼす。
「ダンス、頑張ってね」
その言葉を最後に、アオは姿を消した。
◇
「結衣! 探したよ」
ロビーから、美加が走り出てきた。
結衣が、涙をふいて立ち上がる。
「ごめん、ごめん」
と、結衣が笑う。
「もうすぐ出番だよ。いこっ」
結衣が、美加と一緒にロビーに向かう。
二人の背中が、はるかから遠ざかっていく。
「このままで、いいの?」
モモが、はるかを見つめている。
はるかは、大きく息を吸った。
「美加! 結衣!」
はるかは、精一杯の大きな声で呼びかけた。
美加と結衣が、振り返る。
ビルにあたった太陽の光が、反射してまぶしい。
はるかは、二人の元に走りよった。モモも、一緒についてくる。
「その声は……はるかなの?」
美加が、目を丸くしている。
「へへ。このメイク、誰だかわからなかったでしょ?」
「うん。全然わからなかった。っていうか、はるか、コンテスト出るの?」
はるかは、うなずいた。
「黙ってて、ごめんね。モモと二人で、出ることにしたの」
美加が、じっとはるかを見つめる。
「怒ってる?」
恐る恐る聞くはるかに、美加は首を横に振って笑った。
「わたし、はるかの分まで頑張らなくてもいいってわけだ」
「わたしも、はるかの分まで頑張らない」
結衣も、腕組みしながら笑った。
「そうとなったら、真剣勝負だ!」
美加と結衣が、手の平を見せてきた。
はるかは、パチン、パチンと二人にハイタッチする。
「おまえら、何やってんだ!」
隼人が、怒鳴りながらやってきた。
「『PINK☆CATS』呼ばれたぞ。すぐに行かなきゃ失格だ!」
「うそ!」
「うそなわけないだろっ」
隼人が、はるかの左腕をつかみ、ひっぱるように走り始めた。
はるかは、右手をモモに差し出した。
モモが、キラキラした笑顔で手を伸ばしてくる。
モモと手をつなぎ、ステージを目指して走る。
「行け行け! ゴー! ゴー! やっちゃえ、やっちゃえ、はるかっ!」
背中を押すように、結衣の明るい声が聞こえてくる。
友だちになるのに、理由なんかいらない。
「モモ! モモ!」
走りながらはるかは、友だちの名前を呼んだ。
「行こう! モモ!」
わたしたちのステージへ。
電車に乗る前に、モモがはるかに確認した。
「本当にいいの? 間に合わなかったら、隼人先輩にダンス見せられなくなるよ」
はるかは、黙って電車に駆けこんだ。
ステージ衣装とメイクをしたままの二人を、他の乗客がジロジロ見る。この際、はずかしいなんて、言っていられない。
息を切らしながら、モモに向き合う。
「大丈夫。絶対間に合わせる。結衣も絶対に連れてくる」
そう言いながらも、はるかの心は不安に揺れていた。
「本当にアオ、元の姿に戻れなくなっちゃったのかな?」
はるかの問いに、
「わたしにも、わからないよ」
とモモが答える。
「モモと友だちでいる限り、これから何度だってステージで踊れる。でも、もし結衣がいなくなっちゃったら……」
はるかは、つり革につかまりながら、足元を見つめた。
「そうなる前に、最後の手段があるから大丈夫」
モモが、ささやくように言った。
「最後の手段?」
「あまり使いたくないんだけど」
と、モモは暗い顔をした。
ガタンゴトンと、電車が揺れる。
◇
チャイムを押しても誰も出てこない。
「鍵、開いてる」
はるかは、玄関を開けると、一気に2階にあがった。
「結衣!」
部屋のドアを開けると、結衣があわててベッドから立ち上がった。
「衣装、着ているね?」
モモが確認する。
「だれ?」
ゆっくり説明している時間はない。
はるかは、結衣の腕をつかむと、
「コンテスト会場、行くよ。説明は走りながら」
と、結衣を部屋から連れ出した。
だが、説明している余裕なんてなかった。
「モモとはるかだよ」
言えたのはそれだけ。
駅まで全力で走り、電車に飛び乗る。
乗った電車は満員。
ピンクのウィッグにねこ耳、ブルーの仮面。それだけでも目立つのに、クローンモンスターの話なんて、できるわけがない。
結衣は、わけもわからず連れてこられた人質みたいになっている。
会場のビルの入り口で、結衣が立ち止まった。
つないだはるかの手が、ぐっと後ろに引っ張られる。
「わたし、コンテスト会場に行くわけにはいかないよ」
結衣が、はるかの手をふりほどく。
「そんなこと言わないで。結衣、コンテストに出るの!」
はるかが、怒鳴るように言った。
会場入り口の方を見た結衣が、あっと声を上げ固まった。
振り返ると、結衣の姿をしたアオがいた。アオが走って近づいてくる。
「待ってたの」
アオは、息を切らしている。
はるかは、二人の結衣にはさまれるようにして立っていた。
「ごめん、はるか」
アオが、そう言った。
「なんでわたしに謝るの?」
アオが答えようとした時、鋭い声が聞こえた。
「アオ!」
モモが、いつの間にかピストルをかまえて立っている。
銃口は、アオに向けられている。
「ピ、ピストル!? 本物なの!?」
はるかの声が、裏返った。
「こんなことしたくなかったけど、アオが戻れないなら、わたしは撃つよ」
「ちょっと、待ってモモ!」
はるかは、わけもわからず、ただ叫んだ。
モモが、引き金に手をかける。
「やめて!」
パンという音と同時に倒れたのは、アオではなく、はるかが連れてきた結衣の方だった。
結衣が、とっさにアオをかばったのだ。
「結衣っ!」
はるかが叫んでかけよると、モモが言った。
「大丈夫。地球の人間に当たっても、ちょっとの間、気を失うだけだから」
「よかった……でも、結衣、コンテストに出られなくなっちゃうじゃない!」
はるかが責めるように言うと、モモが、すまなそうにうつむいた。
「クローンモンスターが撃たれると、どうなるの?」
アオが、震える声で聞いた。真っ青な顔をしている。
「アオ、知ってるでしょ?」
モモが、不思議そうな顔をした。
「クローンモンスターを元の姿に戻す道具で、危険な物じゃないよ。撃たれて数分後には瞬間移動モードに入って、強制的にキラキラ星に帰ることになる」
「……いなくなっちゃうなんて、いやだよ」
つぶやくとアオは、結衣の胸に顔をうずめた。
「いやだよ、いや。いやいやいや、アオー!」
アオが、そう叫んだ。
パチン!
はるかの頭の中で、サイダーがはじけるみたいな音がした。
「ア……オ? 今、アオって言った?」
はるかは、はっとした。
さっきまで、倒れたのが結衣で、残っているのがアオだと思いこんでいた。
だが、本当は逆だった。
「結衣? こっちが結衣なの?」
はるかは、泣きじゃくる結衣を見つめた。
最初から結衣は、コンテスト会場にいたのだ。
泣き叫ぶ結衣の肩に、はるかは手を置いた。
「ごめんね、はるか。アオのふりして、はるかの気持ちを試したの。けど、すぐにわたしが結衣だって言うつもりだったんだよ。追いかけたけど、追いつかなくて。はるかはわたしのこと、大切な友だちだって言ってくれたのに。試す必要なんかなかったのに」
「もういいよ、結衣」
はるかは、結衣の肩を優しくなでた。
「アオ、アオ。ごめんね」
結衣の姿をしたアオは、だんだん縮んでいき、青いうさぎの姿に戻った。
結衣の手の平の中で、アオが、うっすらと目を開ける。
「……わたし、結衣ちゃんと、友だちになりたかったの」
「うん。友だちだよ。アオは、わたしの大切な友だち。わたし、アオのこと絶対忘れない。絶対に忘れないよ」
結衣が、ポロポロと涙をこぼす。
「ダンス、頑張ってね」
その言葉を最後に、アオは姿を消した。
◇
「結衣! 探したよ」
ロビーから、美加が走り出てきた。
結衣が、涙をふいて立ち上がる。
「ごめん、ごめん」
と、結衣が笑う。
「もうすぐ出番だよ。いこっ」
結衣が、美加と一緒にロビーに向かう。
二人の背中が、はるかから遠ざかっていく。
「このままで、いいの?」
モモが、はるかを見つめている。
はるかは、大きく息を吸った。
「美加! 結衣!」
はるかは、精一杯の大きな声で呼びかけた。
美加と結衣が、振り返る。
ビルにあたった太陽の光が、反射してまぶしい。
はるかは、二人の元に走りよった。モモも、一緒についてくる。
「その声は……はるかなの?」
美加が、目を丸くしている。
「へへ。このメイク、誰だかわからなかったでしょ?」
「うん。全然わからなかった。っていうか、はるか、コンテスト出るの?」
はるかは、うなずいた。
「黙ってて、ごめんね。モモと二人で、出ることにしたの」
美加が、じっとはるかを見つめる。
「怒ってる?」
恐る恐る聞くはるかに、美加は首を横に振って笑った。
「わたし、はるかの分まで頑張らなくてもいいってわけだ」
「わたしも、はるかの分まで頑張らない」
結衣も、腕組みしながら笑った。
「そうとなったら、真剣勝負だ!」
美加と結衣が、手の平を見せてきた。
はるかは、パチン、パチンと二人にハイタッチする。
「おまえら、何やってんだ!」
隼人が、怒鳴りながらやってきた。
「『PINK☆CATS』呼ばれたぞ。すぐに行かなきゃ失格だ!」
「うそ!」
「うそなわけないだろっ」
隼人が、はるかの左腕をつかみ、ひっぱるように走り始めた。
はるかは、右手をモモに差し出した。
モモが、キラキラした笑顔で手を伸ばしてくる。
モモと手をつなぎ、ステージを目指して走る。
「行け行け! ゴー! ゴー! やっちゃえ、やっちゃえ、はるかっ!」
背中を押すように、結衣の明るい声が聞こえてくる。
友だちになるのに、理由なんかいらない。
「モモ! モモ!」
走りながらはるかは、友だちの名前を呼んだ。
「行こう! モモ!」
わたしたちのステージへ。
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