転生石好き令嬢の生存戦略

ぬるちぃるちる

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幕間(サフィール・ヴィントリアージュ3)

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炭素繊維強化プラスチックカーボンの板の様なものを持ったリュシオルが唐突に部屋に現れたのは、
彼が両親と共に王都を出て、5日経った日の夕方に差し掛かった時刻だった。

「寂しくなって会いに来たのか?」
 ゆったりとソファーにもたれ、この部屋の主よりくつろいだ様子で問いかける王子の得意げな顔に、
先刻まで、リュシオルはなぜ来ないとしおれていた可愛い姿は、二人だけの秘密にしておいてやる。

数日会わないだけで、寂しくなって王子に会いに来るリュシオル。
絶対に有り得ないとは言い切れないが、酷いジョークだ、有り得ない。

転移術を使えばすぐとはいえ、リュシオルが気の付く方ではない事を考えれば、今日ここに来た事の方が変なのだ。
何の用も無く来るはずはない。

「用件を聞こう。」
 王子のお茶を足してから向き直ると、歪んだ黒い板を渡された。
初めて見る素材だ。

「土産だ。ベルが倒した、フィエブオオムカデの殻だ。加工したら色々使えるらしい。」
 なるほど、ボルケニィウスのモンスターの落し物か。
後で、調べてみよう。

「で、本題は何だ?」
 これを渡すだけなら、次に王都に戻った時で充分だ。
リュシオルの性格からして、この後に何か頼みが有るに違いない。
王子が、この板に興味を示しているようだから、出来れば手短かに願いたい。

「この位の、ガラスのカップが、欲しい。」
 両手で30センチ位の大きさを示すリュシオルに、すぐに心当たりが付く。

「好きな物を持って行け。」
 大部分は片付けさせたが、まだ充分に選べるだけの物が、シェルフに並んでいた。

先日、王子の居ない時に、トロフィーや優勝カップを王子の目に付かない場所へ移したい話をした事があった。
その時の事を覚えていたのだろう。
しかし、理由もなく人のものを欲しがるリュシオルではない。

「何を入れるんだ?」
 実用性のあるデザインではないだろうに。

「大切な卵の中身。これが良い。」
 クリスタルガラスのカットの反射を満足げに眺めている。
この幼なじみは、相変わらず、何を言っているか解らない。

「じゃあ、娘が待ってるから、帰る。」
 そう言い残し、来た時同様、唐突に姿を消した。

「娘?」
 全くもって、訳が解らない。
考えても時間の無駄だと言う事は、解ったので、後で、ボルケニィウス辺境伯令嬢に手紙で詳細を確認しよう。

「ベル?娘?」
 リュシオルの人間関係に自分の把握出来て無い個が追加され不満顔の王子(友達少ない)を慰める。

「そのうち紹介されるだろう。」
 安全な相手ならばな。
手を伸ばして来た王子に黒い虫の殻を渡すと暫く弄っていた。

「そろそろ帰らないと王妃様が心配する。」
  何か作ったら一番に見せる事を約束して、最愛の王子をお守り役に託した。
これ以上遅い時間になると、帰したくなくなってしまうからな。
まだそれはまずい。

「ベル。ルベルツィオ・ボルケニィウスか。」
 ゲームの攻略キャラの一人。
リュシオルのシナリオの解放度が80パーセントを超えた時に選択可能になる追加キャラ。
属性は、暗殺者アサシン、泣きぼくろ、女装、ヤンデレ。
本編開始前に死亡する、双子の姉の復讐者リベンジャー

リュシオルの所為で姉が死んだと恨み、絶対に幸せにはしないと、リュシオルを徹底的に追い詰める。
空中を移動する事が可能で、姉の好んだリュシオルの色のドレスを着込み、ヒロインより麗しい姉の亡霊を演じたが、
スチルにも、立ち絵にもしっかりと刻まれた泣きぼくろの所為で、プレーヤー(ヒロイン)にはバレバレだった。
リュシオルのバッドエンドには、ルベルツィオが、無抵抗のリュシオルを刺殺して自害する、通称『無理心中エンド』もある。
シナリオ消化で、目を通したが、暗いオルガンっぽいBGMがトラウマになりそうな鬱シナリオだった。
ギャグ寄りのDDでは異色のシナリオと言えるだろう。

「愛称で呼び合う程、仲良くなったか。」
 良い事だ。
このまま入学式を無事に迎えられるよう、早速思い付いた、新たな装飾品ぼうぐを夕食までに形にする作業に取り掛かった。
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