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幕間(サフィール・ヴィントリアージュ2)
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リュシオルが王都からボルケニィウス辺境伯領へ旅立って二日。
単純に計算して、今日明日中には婚約者と初対面となるみこみだ。
いつも机を並べているリュシオルが王城を訪れない事が寂しいのか、毎日最愛の王子が遊びに来る。
今日も間違いなく来るだろう王子の為に、甘いお菓子を手配しておかなくては。
昼寝にも使う王子のお気に入りのソファーに、これもまた王子のお気に入りのクッションを適切な位置を確認しながら置きなおす。
そうして、毎朝、この部屋の主人たるサフィール自ら最愛の王子の過ごしやすい環境を整える。
「サフィ、来てやったぞ!」
そして予想通りにやって来る王子は、今日も護衛なし。
時間から、朝食を終えてすぐに飛び出して来たと見える。
サボった分の座学は、我が家で一緒に受けているから問題ない筈だけれど、
書き置きの一つも残してないに違いないのはちょっと頂けない。
「歓迎します。」
そう言いながら、空気中に指でいつもの文を書く。
内容は、要約すると、
『王子は今日も、当家で預かった、返してほしくば夕方までに迎えに来い。
さもなくば、夕方、王子の部屋まで、未婚の淑女たるサフィール自ら送り届けるだろう。』
と言ったところだ。
指先からグリーンの淡い燐光を放って書く文字は、端からくるくる巻き取られて
書き終わると同時に鳥の形状になって飛び立った。
まあ、そのうち王子のお守り係が寄越されるだろう。
サフィールの住まう、ヴィントリアージュ公爵邸と王城は直線距離にして最短で300メートル程。
更に、アークトゥルス王子の部屋からサフィールの部屋までの直線距離は、500メートル程度。
秘密の通路を使えば15分ほどで移動可能だ。
秘密の通路とは、王城から伸びている非常時の脱出用地下通路で、サフィールの部屋にも繋がっている。
訂正しよう。
二人の部屋を繋ぐ通路は、王子とサフィールの婚約後、サフィールが既存の地下通路を有効活用し自力で繋げた。
持ち出し禁止の王宮の隠し通路マップにも載って無い、本当の隠し通路だ。
そしてその通路は、王子かサフィールが一緒でないと入ることが出来ないと言う設定も難なく出来た。
元からサフィニアの潜在値が高いのか転生チートなのか解らないが、やりたい事はほぼ出来るので有難い。
寂しがりの王子は一人になると、狙い通りこの通路でサフィールの元にやってくる。
ゲーム、DDにおけるアークトゥルス王子のキャラポジは、コンプレックス全開、寂しんぼうツンデレ王子。
その攻略方法はと言うと、選択肢を間違えようがない、ひたすら持ち上げて構い倒すだけと言う簡単なものだった。
けれども、今生において最愛の王子に対し、私はヒロインでは無い。
誰よりも王子の近くに居ながら、進む道は険しく、少しでも油断をすれば王子を失ってしまうかもしれないそんな立場。
詮索されない程度に情報を集めた、ヒロインたるアストリウス伯爵家のディアミリアは、
悪い噂も良い噂も無い、大人しく優しく礼儀正しい、ごく普通の平凡な貴族の令嬢だと聞く。
このシナリオの意味に気付く様な転生者でなければいいと思う。
王子が婚約破棄と言うトリガーを引かなければ、私はこのまま王子妃になる。
さもなくば、私は与えられた役目を完遂し、王子を必ず手に入れる。
「なんだ、王妃教育の本、もう3冊目に進んでいるのか?」
王妃様の部屋に並んでいる本と同じタイトルの本が机に置いたままになっていた。
実のところ、この身体は物覚えがよく、王子が秘密の通路を抜ける15分の間に私は10ページ以上暗記することが可能だ。
そして机の上の3冊目の内容は数か月前に暗記済みだ。
ただ、別の本との兼ね合いで矛盾を感じたので、教育係に確認しようと思い出しておいたのだ。
「必要な学習です。私はどうなっても絶対にアークと結婚をするのですから。」
そう言うと、真っ赤になる王子が愛しい。
愛だとか、執着だとか、私の想いに人がなんと名前をつけようと、この想いは本物だ。
ボルケニィウス辺境伯家のグレナディアは転生者で間違いない。
リュシオルはもう一人の転生者と上手くいくだろうか?
願わくば二人が私の味方であります様に。
単純に計算して、今日明日中には婚約者と初対面となるみこみだ。
いつも机を並べているリュシオルが王城を訪れない事が寂しいのか、毎日最愛の王子が遊びに来る。
今日も間違いなく来るだろう王子の為に、甘いお菓子を手配しておかなくては。
昼寝にも使う王子のお気に入りのソファーに、これもまた王子のお気に入りのクッションを適切な位置を確認しながら置きなおす。
そうして、毎朝、この部屋の主人たるサフィール自ら最愛の王子の過ごしやすい環境を整える。
「サフィ、来てやったぞ!」
そして予想通りにやって来る王子は、今日も護衛なし。
時間から、朝食を終えてすぐに飛び出して来たと見える。
サボった分の座学は、我が家で一緒に受けているから問題ない筈だけれど、
書き置きの一つも残してないに違いないのはちょっと頂けない。
「歓迎します。」
そう言いながら、空気中に指でいつもの文を書く。
内容は、要約すると、
『王子は今日も、当家で預かった、返してほしくば夕方までに迎えに来い。
さもなくば、夕方、王子の部屋まで、未婚の淑女たるサフィール自ら送り届けるだろう。』
と言ったところだ。
指先からグリーンの淡い燐光を放って書く文字は、端からくるくる巻き取られて
書き終わると同時に鳥の形状になって飛び立った。
まあ、そのうち王子のお守り係が寄越されるだろう。
サフィールの住まう、ヴィントリアージュ公爵邸と王城は直線距離にして最短で300メートル程。
更に、アークトゥルス王子の部屋からサフィールの部屋までの直線距離は、500メートル程度。
秘密の通路を使えば15分ほどで移動可能だ。
秘密の通路とは、王城から伸びている非常時の脱出用地下通路で、サフィールの部屋にも繋がっている。
訂正しよう。
二人の部屋を繋ぐ通路は、王子とサフィールの婚約後、サフィールが既存の地下通路を有効活用し自力で繋げた。
持ち出し禁止の王宮の隠し通路マップにも載って無い、本当の隠し通路だ。
そしてその通路は、王子かサフィールが一緒でないと入ることが出来ないと言う設定も難なく出来た。
元からサフィニアの潜在値が高いのか転生チートなのか解らないが、やりたい事はほぼ出来るので有難い。
寂しがりの王子は一人になると、狙い通りこの通路でサフィールの元にやってくる。
ゲーム、DDにおけるアークトゥルス王子のキャラポジは、コンプレックス全開、寂しんぼうツンデレ王子。
その攻略方法はと言うと、選択肢を間違えようがない、ひたすら持ち上げて構い倒すだけと言う簡単なものだった。
けれども、今生において最愛の王子に対し、私はヒロインでは無い。
誰よりも王子の近くに居ながら、進む道は険しく、少しでも油断をすれば王子を失ってしまうかもしれないそんな立場。
詮索されない程度に情報を集めた、ヒロインたるアストリウス伯爵家のディアミリアは、
悪い噂も良い噂も無い、大人しく優しく礼儀正しい、ごく普通の平凡な貴族の令嬢だと聞く。
このシナリオの意味に気付く様な転生者でなければいいと思う。
王子が婚約破棄と言うトリガーを引かなければ、私はこのまま王子妃になる。
さもなくば、私は与えられた役目を完遂し、王子を必ず手に入れる。
「なんだ、王妃教育の本、もう3冊目に進んでいるのか?」
王妃様の部屋に並んでいる本と同じタイトルの本が机に置いたままになっていた。
実のところ、この身体は物覚えがよく、王子が秘密の通路を抜ける15分の間に私は10ページ以上暗記することが可能だ。
そして机の上の3冊目の内容は数か月前に暗記済みだ。
ただ、別の本との兼ね合いで矛盾を感じたので、教育係に確認しようと思い出しておいたのだ。
「必要な学習です。私はどうなっても絶対にアークと結婚をするのですから。」
そう言うと、真っ赤になる王子が愛しい。
愛だとか、執着だとか、私の想いに人がなんと名前をつけようと、この想いは本物だ。
ボルケニィウス辺境伯家のグレナディアは転生者で間違いない。
リュシオルはもう一人の転生者と上手くいくだろうか?
願わくば二人が私の味方であります様に。
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