40 / 50
舞台裏(リュシオル・ライトブリンガー6)
しおりを挟む
「妖精の隠した鳥の羽根をおまけにあげる。」
翌日、早速サフィールに昨日学習した内容を披露したが、
帰って来た反応は余り良い感触では無かった。
「……何処の遺跡の暗号だ?」
と言うか、不審そうな顔で返って来た言葉を聞く限り、全然ダメだ。
全くもって伝わってないし、何より、その言葉を口にしたリュシオル自身、
自分が何を伝えようとしているのか、さっぱり解ってない。
「女の子が喜ぶような言葉を言いたい。」
取り合えず、遺跡の暗号でも何かの呪文でもない事を伝えてみる。
「なるほど。模倣するにも、最低限の理解は必要だぞ?」
漸く意図を理解して、状況を察し、呆れかえった顔をするサフィールに
恥を忍んで教えを請う。
「教えるつもりはないが、勝手に見て覚える分は構わない。」
第一、情緒とか感性は本来、教えるものではない。
育つのを待つべきだろう。
「……だんだん家庭教師が手強くなる。」
絶妙なタイミングで、秘密通路から現れた王子は情けない声でぼやいた。
脱走に失敗して今日の学習分を済ませてきたらしい。
サフィールは、そんなアークの前髪をかき上げるように、さり気なく頭を撫でて、
横に座らせ、小さな菓子の包みを解いて、口元に持っていく。
アークはヒナ鳥の様にその菓子を口に含んで咀嚼する。
いいなあれ、婚約したらやってみたい。
それは良いとして、サフィールの反応は最悪だったが、
最後にもう一回だけ、挑戦してみようと思う。
「子猫ちゃん、羽根はどこに隠したんだい?」
これで駄目だったら、今度こそ、もうこの方針は捨てようと、真剣な気持ちでアークに言う。
ぶふぉっと、むせそうになり、何とかお菓子を吹き出さずに済んだアークは、
サフィールから紅茶を受取り、涙目でリュシオルをにらんだ。
苦しそうだ。
「初めから子猫に羽根はない。」
まだしゃべれないアークに変わって、サフィールが冷静に突っ込む。
あ、本当だ。
「何だ、リュシオルはどうしてしまったんだ?」
やっと落ち着き、喋る事が出来る様になったアークから、気遣うような言葉が聞こえ、
これは、やっぱり、相当に駄目っぽいなと、リュシオルは悟った。
遅すぎる悟りだった。
「本当にお前いつも以上におかしいぞ、悪いものでも拾って食べたのか?」
サフィールは、リュシオルの好奇心の強さを、嫌という程知っており、
道端にピンクのキノコが生えていたら食べるんじゃないかと真剣に疑っていた。
鑑定眼の過信とかではなく、純粋に生存本能が好奇心に負けるのだ。
サフィールは、この友人のそういう所を、人としてどうなのかといつも思う。
「違うよ。グレナディア・ボルケニィウス辺境伯令嬢とお見合いするの。」
好きになって貰わないといけないから大変なのだ。
リュシオルの返事にサフィールが珍しく、緑の目を見開いて、驚きで固まっていた。
続いて真剣な顔になる。
何かを考えているようだ。
「どうしたの?」
サフィールの様子が心配で声をかけると、
サフィールは、意を決したようにリュシオルに向き直った。
「押していけ。」
え?急にどうしたの?
「初めは、乗り気でないかもしれない。多分、嫌われている訳ではないから押していけ。
相性は悪くないはずだ。」
ああ、お見合いの事?
「好意を前面に出していけ。絶対に疑われるな。彼女に何かあったら命はないと思え。」
なんだ、サフィールにとって、貴重な同性の友達が心配だったのか。
何かって何だろう?解んないけど、ちゃんと護るよ。
訓練も今まで以上に頑張るから、グレナディアを僕にください。
「後、失敗した伝言ゲームみたいな台詞はやめろ。諦めろ、絶対的にセンスがない。」
うーん、かっこいい台詞は無理か。
大人になったら、兄様みたいにプレゼント攻撃できるのになぁ。
「解った。」
取りあえず、サフィールのアドバイスを受け、決意を新たにした。
「お見合い?した事無いぞ。」
話が落ち着いた所で、アークが、わざとじゃないかと思う位ボケた事を言う。
アークは、サフィールと結婚するんだから、お見合いしなくていいよね。
「お見合いしたいのか?」
サフィールの、何かたくらんでます的な声に、今日はもう帰ろうと思った。
アーク……、また無事で会おう。
翌日、早速サフィールに昨日学習した内容を披露したが、
帰って来た反応は余り良い感触では無かった。
「……何処の遺跡の暗号だ?」
と言うか、不審そうな顔で返って来た言葉を聞く限り、全然ダメだ。
全くもって伝わってないし、何より、その言葉を口にしたリュシオル自身、
自分が何を伝えようとしているのか、さっぱり解ってない。
「女の子が喜ぶような言葉を言いたい。」
取り合えず、遺跡の暗号でも何かの呪文でもない事を伝えてみる。
「なるほど。模倣するにも、最低限の理解は必要だぞ?」
漸く意図を理解して、状況を察し、呆れかえった顔をするサフィールに
恥を忍んで教えを請う。
「教えるつもりはないが、勝手に見て覚える分は構わない。」
第一、情緒とか感性は本来、教えるものではない。
育つのを待つべきだろう。
「……だんだん家庭教師が手強くなる。」
絶妙なタイミングで、秘密通路から現れた王子は情けない声でぼやいた。
脱走に失敗して今日の学習分を済ませてきたらしい。
サフィールは、そんなアークの前髪をかき上げるように、さり気なく頭を撫でて、
横に座らせ、小さな菓子の包みを解いて、口元に持っていく。
アークはヒナ鳥の様にその菓子を口に含んで咀嚼する。
いいなあれ、婚約したらやってみたい。
それは良いとして、サフィールの反応は最悪だったが、
最後にもう一回だけ、挑戦してみようと思う。
「子猫ちゃん、羽根はどこに隠したんだい?」
これで駄目だったら、今度こそ、もうこの方針は捨てようと、真剣な気持ちでアークに言う。
ぶふぉっと、むせそうになり、何とかお菓子を吹き出さずに済んだアークは、
サフィールから紅茶を受取り、涙目でリュシオルをにらんだ。
苦しそうだ。
「初めから子猫に羽根はない。」
まだしゃべれないアークに変わって、サフィールが冷静に突っ込む。
あ、本当だ。
「何だ、リュシオルはどうしてしまったんだ?」
やっと落ち着き、喋る事が出来る様になったアークから、気遣うような言葉が聞こえ、
これは、やっぱり、相当に駄目っぽいなと、リュシオルは悟った。
遅すぎる悟りだった。
「本当にお前いつも以上におかしいぞ、悪いものでも拾って食べたのか?」
サフィールは、リュシオルの好奇心の強さを、嫌という程知っており、
道端にピンクのキノコが生えていたら食べるんじゃないかと真剣に疑っていた。
鑑定眼の過信とかではなく、純粋に生存本能が好奇心に負けるのだ。
サフィールは、この友人のそういう所を、人としてどうなのかといつも思う。
「違うよ。グレナディア・ボルケニィウス辺境伯令嬢とお見合いするの。」
好きになって貰わないといけないから大変なのだ。
リュシオルの返事にサフィールが珍しく、緑の目を見開いて、驚きで固まっていた。
続いて真剣な顔になる。
何かを考えているようだ。
「どうしたの?」
サフィールの様子が心配で声をかけると、
サフィールは、意を決したようにリュシオルに向き直った。
「押していけ。」
え?急にどうしたの?
「初めは、乗り気でないかもしれない。多分、嫌われている訳ではないから押していけ。
相性は悪くないはずだ。」
ああ、お見合いの事?
「好意を前面に出していけ。絶対に疑われるな。彼女に何かあったら命はないと思え。」
なんだ、サフィールにとって、貴重な同性の友達が心配だったのか。
何かって何だろう?解んないけど、ちゃんと護るよ。
訓練も今まで以上に頑張るから、グレナディアを僕にください。
「後、失敗した伝言ゲームみたいな台詞はやめろ。諦めろ、絶対的にセンスがない。」
うーん、かっこいい台詞は無理か。
大人になったら、兄様みたいにプレゼント攻撃できるのになぁ。
「解った。」
取りあえず、サフィールのアドバイスを受け、決意を新たにした。
「お見合い?した事無いぞ。」
話が落ち着いた所で、アークが、わざとじゃないかと思う位ボケた事を言う。
アークは、サフィールと結婚するんだから、お見合いしなくていいよね。
「お見合いしたいのか?」
サフィールの、何かたくらんでます的な声に、今日はもう帰ろうと思った。
アーク……、また無事で会おう。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが
水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。
王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。
数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。
記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。
リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが……
◆表紙はGirly Drop様からお借りしました
◇小説家になろうにも掲載しています
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
攻略対象の王子様は放置されました
蛇娥リコ
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。
断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました
ララ
恋愛
3話完結です。
大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。
それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。
そこで見たのはまさにゲームの世界。
主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。
そしてゲームは終盤へ。
最後のイベントといえば断罪。
悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。
でもおかしいじゃない?
このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。
ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。
納得いかない。
それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる